【シンガポール・フィンテック】アセアンの国境を超えたリアル決済事情。

最近発表された報告書「Envisioning a pan-regional real-time payment ecosystem in South Asia」によると、近年ASEANは、

国境を超えたリアルタイム決済のシステム

が、発達してきています。国家が擬似的に統合しているEUも同様の流れにあり、ASEANはEUに次いで域内での統合が進んでいるケースとなっています。

東南アジアにおけるリアルタイム決済の状況

過去10年において、東南アジアにおける決済システムは、伝統的なインフラから最先端のシステムへと急速に移行しており、これにより支払いはより安く、速く、そして効率的になってきています。

東南アジアにおけるリアルタイム決済のイノベーションは、規制当局によるインスタント・ペイメント(*1)QRコードダイレクト・デビット(*2)などの最先端フィンテック技術の導入により可能となっています。

(*1)インスタント・ペイメント:

リアルタイムの少額支払いのこと。以下の特徴を有する。

・365日24時間支払いを行うことができる

・リアルタイムで資金決済ができる

・支払側、受取側の双方が、リアルタイムで支払状況を確認できる。

(*2)ダイレクト・デビット:

自己の預金で支払うデビットカードのうち、即時に自己の預金口座から決済されるタイプのもの。(クレジットカードは、クレジット会社がいったん立替て支払う。)

 

シンガポールにおいては、2014年よりリアルタイム・電子決済システムである「FAST:Fast And Secure Transfers」を開始、このシステムにより個人及び法人は、リアルタイムで資金を移動することが可能となりました。FASTはシンガポールの主要銀行である、DBS、OCBC及びUOB銀行の運営する「NETS(the Network for Electronic Transfers)」により提供されています。

ASEANにおけるシンガポールに次ぐ経済先進国であるマレーシアでは、「RPP(Real-time Retail Payment Platform)」が2019年より開始。

 

多国間におけるリアルタイム決済

上記のようなリアル決済プロジェクトは、通常、各国のマーケット向けに開発されています。ところがASEAN各国は、リアルタイム決済を国境を超えて、ASEAN全域で利用できるように開発や契約関係の整備を進めています。

例えば、リアル決済オペレーターであるシンガポールのNETS、マレーシアのPayNetに加え、タイのITMAXインドネシアのNAPASなどが各国の決済インフラ接続に関する合意書(MOU)を取り交わしています。

別の例を挙げると、2017年にサービス開始したシンガポールの銀行間P2P資金決済サービスであるPayNowは、同様のタイのサービスPromptPayと連携しており、マレーシアのDuitNowにも拡張されることがアナウンスされています。

マレーシアびシンガポールにおいては、前述のPayNet及びNETSが両国でデビットカード支払いを可能とすることを発表しています。

タイ、カンボジア間ではQRコードによる相互支払認証が進んでいます。このシステムにっより、例えば両国への旅行者は、同一のスマホアプリで支払いができるようになります。

さいごに

フィンテック分野において、ASEANの統合が進んでいます。よりフィンテックの特徴として、ユーザーの数が多くなれば多くなるほど、そのシステムは便利になるというネットワーク効果があります。資金決済はビジネスの土台であり、ここの効率化が進めば、ASEANにおけるビジネス環境はますます発展していくことが期待できそうです。

デジタル分野のみならず、フィジカルの分野でもASEAN内は国境がなくなり、EUのように自由に国間を移動できるようになれば非常に便利になりますね。

Southeast Asia Becomes Centre for Instant Cross-Border Payments Growth

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