デジタル銀行始動、暗合資産規制強化など。2022年度ASEANのフィンテックの状況は?

ASEANのフィンテックの状況について、毎年調査、分析してくれるレポート「FinTech in ASEAN 2022」が今年も公表されました。

コロナが落ち着き、経済が平常運転に戻っていく一方で、インフレや通貨高、中国の景気後退リスクなどで不況のリスクも高まりつつある2022年ですが、ASEANにおけるフィンテック業界にはどんな変化がやってきたのでしょうか。

FinTech in ASEAN 2022」から、主要なトピックについて紹介したいと思います。

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2022年度ASEANのフィンテックの状況

ASEANのフィンテックは着実に成長

フィンテックに関する世界の資金調達額のうち、ASEANが占める割合は7%(43億米ドル)であり、2018年の2%が大きく上昇している。

シンガポールとインドネシアが引き続き牽引

2021年に引き続き、シンガポール及びインドネシアフィンテック関連の資金調達を牽引しており、その割合はASEAN全体の76%に上る。

特に2022年1月〜9月の資金調達の55%が、シンガポールのフィンテック会社によって行われた。

資金調達は曇り空

2022年1月〜9月の資金調達額43億米ドルは、前年同期の調達額の45億米ドルに若干到達しないものの、これは2018年〜2020年の資金調達額総額より高い水準である。

ただし、2022年第3四半期(7-9月)は過去2年で最も低い水準に落ち込んでおり、曇り空模様となっている。

投資家は選考的になっており、シリーズC投資のような規模の大きく、利益見通しの明瞭なフィンテックにフォーカスしている。

暗合資産・ブロックチェーンに資金が集まる

最も資金を集めた業界は暗合資産関連で、ディールの3分の一を占める。暗合資産に次いで、決済、オルタナティブ・レンディング企業が続く。

組込型金融(embedded finance)の定着

組込型金融(embedded finance)とは、非金融事業者が自らのサービスに金融サービスを埋め込んで提供すること。例えば配車アプリにより、そのプラットフォーム上で自動車保険を付与したり、Eコマースサイトが、BNPL(後払い)オプションを提供したりすることなど。

今回調査の70%の回答者が、ASEANで組込型金融のアプリを利用していると答えており、特にタイとベトナムが83%と高い割合となっている。回答者のうち、4分の3の人は、週に少なくとも1回利用すると答えている。

シンガポールのフィンテック・トピック

レポートでは、ASEAN各国ごとにトピックが紹介されていますが、そのうちシンガポールの記載は以下のようなものになっています。

規制関係の整備が進んでいることが見てとれます。

デジタル銀行のローンチ

シンガポールで最初のデジタル商業銀行であるGreen Link Digital Bankが2022年6月 に、翌週にはANEXT Bankがローンチ。

主に中小企業向けにイノベーティブな金融サービスを提供。

2022年9月には、Trust BankおよびGXS Bankも参入し、デジタル銀行の競争がはじまっている。

ESG及びクロスボーダー決済が重点分野

シンガポールは、ASEANのグリーン・ファイナンスのハブを目指しており、政府手動のGreen Finance Action Plan、ESG Impact Hubを通じ促進している。

これらの政策により、ESGフィンテックのスタートアップ、金融機関など利害関係者のコラボレーションを促している。

クロスボーダー決済に関しては、シンガポールのDBS銀行が提供するPayNowとタイのPromptPayの連携が完了、さらにはインドのUnified Payment Interface及びマレーシアのDuitNowとの連携を予定している。

暗合資産に関する規制強化

 2022年財務サービス及び市場に関する法令(The Financial Services and Markets Bill 2022)は、シンガポール国内で事業を展開し、国外でデジタルトークンを提供する企業について、規制を強化

2022年1月17日に公表されたガイドラインでは、公共の場において、暗合資産関連の広告を打つことを「リスクが高い」として禁止した。

また、現金と暗合資産の交換端末を違法化することで、暗合資産ATMのオペレーターは強制的に事業停止をよぎなくされた。

2022年10月26日に公表されたコンサルテーションペーパーは、暗合資産取引の顧客リスクを低減する方策を提示し、ステーブルコインに関連した取引の基準を強化した。

さいごに

シンガポールでは規制の整備が進むことで、暗合資産事業などを安心して展開する土壌が出来ているように思います。今後、アジアのフィンテックハブとしての地位はますます向上していくのではないでしょうか。

また2022年のレポートでは、組込型金融(Embedded Finance)の記載に力が入っているようでした。来年は、アプリから気軽に金融サービスを受けることがより一般的になるかもしれません。

引き続き、ASEANのフィンテックの進化から目を離せません。

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