【海外子会社管理】マネーロンダリングを構成する3つのプロセスについて。

世界中で、マネーロンダリングに対する規制が厳しくなっています。

シンガポールでもマネーロンダリングへの対応のため、会社設立や銀行口座の開設に時間が係るなど、少なからず影響が出てきています。

それでは、そもそもマネーロンダリングとはどのようなものか?本記事ではマネーロンダリングを構成する3つのプロセスについて紹介したいと思います。

マネーロンダリングとは

マネーロンダリングは、次のように説明されます。

マネーロンダリング

脱税や粉飾決算、違法取引により得られた資金について出処を不明瞭なものにして、合法な手段で稼得した資金に見せかける行為

マネーロンダリングの語源は、1920年代アメリカ禁酒法時代の有名なギャング、アル・カポネが違法に稼いだカネを、

コインランドリービジネス

の中に紛れ込ませて資金洗浄したことから名付けられたといわれています。

このマネーロンダリングは、アル・カポネと同時代の米国マフィア、ラッキー・ルチアーノの財政顧問であったマイヤー・ランスキー(1902年〜1983年)により理論化されました。

ランスキーはルチアーノの違法資金を洗浄するため、マネーロンダリング技術を高度化させていった結果、「3つのプロセス」に体系化されます。これは、マネーロンダリングの原理として、現代でも通用する基礎的概念となります。

マネーロンダリングの「3つのプロセス」

以下の③プロセスを経ることでマネーロンダリングは成立します。

① プレイスメント

② レイヤ―リング

③ インテグレーション
 

1.プレイスメント(Placement)

プレイスメント(Placement)は、違法資金を正当な金融資金に入れ込むプロセスをいいます。

たとえば、違法資金を少額ずつ銀行口座に振り込んだり、貴金属を購入するなどが該当します。

マネーロンダリングなど関係ない人でも、「空港で出会った知らない人の荷物を外国までもっていってあげた」とか、「他人の取引のため銀行口座を貸してあげた」などしてしまうと、知らないうちにマネーロンダリングに加担してしまうことがあるのでくれぐれも注意が必要です。

2.レイヤリング(Layering)

2番目のプロセスであるレイヤリング(Layering)は、違法資金を資金源から分離させる行為です。

複雑な金融取引や国外のオフショア取引を行うことで、資金の流れが追跡できないところまで、お金の流れを曖昧にします。

たとえば、過去に日本でも事件となった、無記名の割引債を使ったマネロン・スキームでは、購入者の個人情報を提出する必要のなかった割引債証券を、海外の金融機関に預け入れて換金するなど手法がありました。

また古典的な手法では、カジノで違法資金をチップに換金して、正当資金からのチップと混ぜてゲームをする方法などがあります。チップに換金する行為がレイヤリングになります。

3.インテグレーション(Integration)

最後に、レイヤリングによって洗浄された資金を、合法資金と混ぜて合法事業へ投資するインテグレーション(Integration)のプロセスとなります。

すでに資金の出どころが追跡できないところまで曖昧になった違法資金を、正当資金と「統合」して、正当な事業投資に利用することでマネーロンダリングは完了します。

さいごに

海外で事業を行う際には、知らないうちにマネーロンダリングに加担していないか、事業内容や取引先に注意することが重要です。

また、当局や銀行から情報を求められる場合は必要な資料をすぐに提出できるよう取引記録を保管・準備しておく必要があります。

海外でコンプライアンスを遵守して事業を行うためには、各規制当局から求められる対応を適切に行うことが重要です。

なお、シンガポールでは主にマネーロンダリング対策の一貫として、2021年6月末までに企業登記局(ACRA)に対して、「究極の企業所有者(Registrable Controller)」を登録する必要がある点留意してください。

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