シンガポールの消費税・GSTの制度概要。

日本において、消費税率の引き上げは何かと話題になりますが、シンガポールにおいても同様の税制があります。その名もGST(Goods and Service Tax)です。

日本の消費税と同様、シンガポールのGSTも、物品・サービスの付加価値に課税される付加価値税ですが、その実務において異なるところも多いです。今回はシンガポールのGST制度を解説していきたいと思います。

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GSTの仕組み

GSTは、物品の流通、サービスの提供時の付加価値に課税される税金であり、物品やサービスを提供する課税事業者が消費者から徴収し、納付します。中間業者は、仕入時に仕入税額を支払い(input-tax)、売上時に顧客から売上税額を受け取ります(output-tax)。最終的には、最後の消費者が全額負担する仕組みとなります。

以下の一般的な製造業を例にとって見てみましょう。

 

製造業者は100で卸売業者に販売します。ここで課税対象製品の場合7%を上乗せして107で販売します。この例では製造業者に仕入がありませんので、7をIRASに申告納付することになります。

次に、卸売業は街の小売業者へと製品を販売します。この際、卸売業者は自社の取り分をのせて200で販売しますが、この取引にも7%のGSTが課税されますので、14(200*7%)を上乗せします。卸売業者は、小売業者から受け取った14から製造業者へ支払った7を控除した金額の7を申告納税します。

最後に小売業者は最終顧客へ販売します。この際、小売業者も自社の取り分をのせて300で販売しますが、この取引にも7%のGSTが課税されますので、21(300*7%)を上乗せします。卸売業者は、小売業者から受け取った21から卸売業者へ支払った14を控除した金額の7を申告納税します。

最終的に消費者は消費税21を負担して、300の製品を購入することになります。

日本の消費税やシンガポールのGSTが「付加価値税」といわれる所以は、上記のように、取引の流れの中にいる業者が仕入から付加価値をつけた金額(例えば、小売業者であれば、販売した金額300から仕入れた金額200を控除した100が小売業者の付加価値と言えます。

 

GST課税事業者の登録基準

GSTを徴収し、当局(IRAS)へ納付することが求められる課税業者は、以下の基準に該当するものとなります。


・年間の課税売上高が1,000,000シンガポールドルを超える(見込みである)

・以後12ヶ月の課税売上高が1,000,000シンガポールドルを超える(見込みである)


*課税売上高とは、国内売上高及び輸出売上高(GST自体は含まない)

ただし、この基準に達していない場合でも、課税事業者として任意に登録することが可能です。

わざわざ申告納税義務が生じる課税事業者の登録をする必要があるのか疑問に思う方もいるかもしれません。

これは例えば、会社設立後、まだ売上が上がっていない状態で設備投資の支出が多い会社は、GST課税事業者として登録することで、設備仕入時に支払ったGSTの還付請求をするなどの場合(仕入税額控除)が該当します。

税金申告納税義務が発生する課税事業者に登録する会社一旦課税事業者となった場合は、最低2年間は継続しなければなりません。

GST税率

シンガポールのGST税率は、2007年7月1日以降 7% となっています。2018年税制改正において、2021年以降に9%へと引き上げられることが公表されています。

GST課税対象取引の区分

GSTの観点から、取引には以下の通りに区分されます。

 

GSTは大きく分けて、①課税対象取引(taxable supplies)と②非課税取引(Non taxable Supplies)に区分されます。①課税対象取引(taxable supplies)はさらに「標準税率取引(standard-rated supplies)」と「ゼロ料率取引(zero-rated supplies)」に、②非課税取引(Non taxable Supplies)は、「免税取引(Exempted supplies)」及び「対象外取引(out-of scope supplies)」に区分されます。各取引の具体例をまとめると、以下のとおりとなります。

大区分 課税取引
Taxable supplies
非課税取引
Non-taxable supplies
小区分 標準税率取引
standard-rated supplies
ゼロ料率取引
zero-rated supplies
ゼロ料率取引
zero-rated supplies
対象外取引
out-of scope supplies
料率 7% 0% GST対象外 GST対象外
物品

・課税事業者がシンガポール国内において行う資産の販売、貸付、役務提供

・国外からシンガポールへの財貨輸入、サービスの輸入

シンガポール国内から国外への財貨の輸出


・(家具備え付けではない)居住用不動産の売買及び貸付

・投資用貴金属の輸入

・財貨の供給がシンガポールでなされず国外間で取引がなされる三国間取引(third country sales)

・自由貿易地域(FTZ)やゼロGST倉庫(Zero GST Warehouse)内での取引・通常の事業行為ではなく、対価の支払いが伴わないなどの私的な取引

サービス

・課税事業者がシンガポール国内において行う役務提供

・国外からシンガポールへのサービスの輸入

サービスの輸出(インターナショナルサービス)
・ 支払利息、生命保険料、有価証券の発行・譲渡等、金融サービスに関連する取引
・デジタルトークン(暗号通貨等)による支払
・  給与や賞与等従業員が雇用者に対して提供した役務(給与や賞与等)

各々で税額計算上の取り扱いが異なりますので、いずれの取引に該当するか留意が必要です。

なお、輸入サービスに係るGSTについては特別な取扱いがなされます。以下の記事をご参照ください。

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ゼロ料率取引(zero rated supplies)と免税取引(Exempted supplies)の違い

どちらもGSTを顧客から徴収しない取引ですが、免税取引の場合はzero-ratedという名称が示すように、ゼロ料率で課税されていると考えますので、通常通り、対応する取引の仕入税額(input-tax)を控除できるというメリットがあります。他に取引がなければ、納税額はマイナスとなりますので、当局から還付を受けることができます。

一方の免税取引では、対応する仕入税額(input-tax)を控除することはできません。仕入時にサプライヤーに支払って終わりになります。

インボイス方式

シンガポールのGSTは日本の消費税とは異なり、インボイス方式を採用しています。インボイス方式とは、消費税の申告の際に必ずGSTの記載されたインボイス(Tax Invoice)に基づかなければならないとする方式で、インボイスは取引の際に課税事業者が発行します。納付消費税額はインボイスに記載された税額に基づいて算出します。

日本では従来は「帳簿保存方式」を採用しており、課税事業者が発行した請求書等の客観的証拠に基づいて、課税期間中の課税仕入高と課税売上高から

消費税額を算出します。日本でも2023年10月1日からインボイス方式への移行が予定されています。

各方式のイメージを図示すると以下のとおりとなります。

インボイス方式は各インボイスを集めて集計する必要があり、事務処理が煩雑になるというデメリットがある一方で、商品ごとに異なる税率を適用でき、厳密な消費税徴収を行うことができます。

  帳簿保存方式 インボイス方式
メリット 申告手続が簡便 複数税率の取引把握が可能
デメリット 複数税率による取引把握が困難 事務処理が煩雑

 

申告及び納付手続

GST申告は3ヶ月ごとに行います。申告期限は決算期の各四半期末の翌月末となります。

例えば、3月決算の会社では以下のようなスケジュールになります。

  課税計算期間 申告納付期限
1回目 4月〜6月 7月末
2回目 7月〜9月 10月末
3回目 10月〜12月 1月末
4回目 1月〜3月 4月末

 

支払にGIRO(銀行口座引き落とし)を採用した場合は、納税金額の引き落としが申告納付期限の翌月15日となります。例えば、上記の申告納付期限7月末の場合は、引き落とし日は8月15日です。

締日から期限1ヶ月とタイトであるため、インボイスの集計を適時に行えるような経理体制が必要です。

GSTの支払方法

納税方法は、①銀行口座自動引き落とし(GIRO)、②電子決済、③電信送金が認められていますが、シンガポール税務当局(IRAS)は、銀行口座引き落とし(GIRO)の利用を推奨しており、大多数の納税者はこの方法を利用しています。主な特徴は以下の通りです。

納税方法 主な概要
銀行口座自動引き落とし GIRO ・支払人の銀行口座に自動引き落としを設定する方法。
・一度設定すれば毎年自動で支払われるため、便利納税者の大多数が利用する。
・無利息の12か月分割を利用できる。
・申告システム(myTax Portal)、インターネットバンキング、ATMから設定可能。
電子決済 Electric Payment Modes ・インターネットバンキング、ATM、AXS,、SAM等から支払い可能。
・AXS、SAMはシンガポール街頭にある専用端末で24H利用可能。
・取引手数料がかかる。
電信送金 Telegraphic Transfer ・海外在住者からの支払い、および上記のいずれでも支払いが不可能な場合のみに認められる。

 

予定納税及び予定申告

納税額をあらかじめ推定し事前に支払うような予定納税、予定申告制度はありません。

税務調査

法人税や個人所得税などと同様、GSTも正しく申告、納税されているか確認するため、税務調査が実施されます。

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IRAS GST

当該情報は執筆時点に公表されている法令・ガイドライン等を参照しています。本記事に記載された制度は、弊法人作成後、法令・条例・通達・税制の変更・改正等により、改廃が行われている可能性があります。従いまして、特定の目的利用及び専門的な判断にあたっては、会計・監査・法務・税務・労務等の専門家にご相談頂くようお願いいたします。本資料に基づいた行為(不行為)につき、一切の責任を負いません。

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