【海外進出戦略】海外進出先を決める際にはこのポイントに注目すべき。

海外市場で成功するためには、どの国に進出すべきか?

この問いは、海外進出を目指すいかなる企業、個人にとって重要なものです。

数多ある国の中で成功できそうな国はどこかは非常に難しいですが、今回はこの難題を考えるにあたり、2015年にハーバード・ビジネス・レビューにて公開された論文「グローバル化の秘訣はイスラエル企業に学べ」を紹介したいと思います。

本論文では、イスラエル企業が海外市場での進出で目覚ましい成果を上げていることを多くの実例により紹介し、その中から海外進出で成功するための一般原則を導き出しています。

イスラエル企業といっても日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、BtoBビジネス(企業間同士の事業)において多くの企業がグローバル市場で活躍しています。

具体的な例に興味がある方は上記の論文をご参照ください。

では、イスラエル企業はどのようにグローバル市場で成功しているのでしょうか。

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海外進出成功のためには「中間領域」を狙う

結論から言うと、海外進出成功の鍵は「中間領域」にあります。

中間領域とは、進出国の「地元企業」と「多国籍企業」の隙間です。

海外進出国において、地元企業は地の利をいかして消費者のニーズや自国の法律、規制制度に精通しており、サプライヤーや顧客と関係を築く点でも有利です。

一方、多国籍企業は膨大な経営資源と強固なブランドを有しており、いち企業が立向うには大きい存在となります。規模の経済を利用して価格競争に持ち込まれたらひとたまりもありません。

そこで、「地元企業」も「多国籍企業」とも競争しない空白地帯である「中間領域」に目を向けるべきである、論文ではそう指摘します。

「中間領域」とは、具体的には地元企業が対応できない、でも多国籍企業には魅力的ではない国、地域ということになります。

 

「中間領域」の見分け方

「中間領域」になりそうな国や地域は複数見つかるかもしれません。

しかし、その中で本当に進出すべき国は、「多国籍企業にとって当面は魅力的でなく、自社が安定的地位を築く時間がある」国、地域です。

具体的には、次のような状況が考えられます。

多国籍企業に対しては、
・潜在的な市場規模が(多国籍企業にとって)小さい

・地元ニーズを満たす製品
・サービスのローカライズに多国籍企業にはコストがかかりすぎる
・グローバルなブランド・イメージにそぐわない

地元企業に対しては、
・地元企業は自分たちより古いテクノロジー使っている
・地元企業の業務ノウハウや慣行が劣っている
・地元企業に反撃するための財力が限られている
・地元当局は地元企業を特別扱いしない

なお、当論文の主張は以下の図でまとめられそうです。(論文の趣旨を元に筆者作成)

市場規模が小さいマーケットは、そもそも海外の市場が苦労して参入するメリットはあまりありません。ここは地元企業に任せれば良いところです。

一方、最も利益が稼げる「市場規模が大きい and 標準化可能」の領域は多国籍企業が得意とするところです。

それをふまえると、狙うべき「中間領域」は「市場規模が(比較的)見込める and 高技術なカスタマイズが必要」というセグメントになります。

中間領域を特定した後に取るべき戦略

それでは次に、中間領域を特定した後に取るべき戦略はどのようなものでしょうか。

本論文では、「市場に参入し、支配権を決定的に握ること」が重要であると説きます。

特に3つの戦略が有効です。

1.大企業を避ける

自社が支配権を握る前に大企業に参入されたら勝ち目はありません。そのため、なんとか大企業を避け、彼らを目覚めさせないようにしなければなりません。

大企業にとってはニッチすぎるため、会社の価値観や方針とずれていることから参入が合理的ではない市場において、ゆっくりと浸透していく必要があります。

2.地元企業を装う

一方の地元企業への対策は、自社もなるべくローカライズして、市場ニーズを理解し、進出国に合わせてカスタマイズしたプロダクトを提供することが有効です。

3.弱点にフォーカスする

多くのイシューがある分野で、特定の問題に対して大企業や地元企業よりも優れた対応をすることが必要です。

大企業は幅広い分野のサービスを提供している中で、ある特定のイシューについて圧倒的にすぐれた対応をすること。

つまり、大企業の弱点にフォーカスして、大企業やよりも優れた対応をすることが求められます。

本論文の言葉を借りると、「大企業が包括的ソリューションを提供している顧客に対して、大企業や地元よりも深く知ること、そのニーズを満たす上で技術的優越性を築くことに集中する」こととなります。

これは、近代的な競争における普遍的な戦略である「ランチェスター戦略」に通じます。

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ランチェスター戦略はもともと戦争戦略論であり、局地戦及び広域戦に対応して2つの原則から成り立ちます。

第一原則(局地戦)
戦力 = 武器の性能 × 兵力数
第2原則 (広域戦)
戦力 = 武器の性能 × 兵力数2乗

この原則を簡単に解釈すると、広域戦においては、兵力数(つまりリソース)が多いほうが勝利する(なぜなら兵力数の2乗が戦力となるため、比例等級的に差が開いてしまう)ので、兵力の少ない場合は、局地戦にもちこんで武器の性能を磨いて勝負する、というところです。

ビジネスでいえば、複数の事業や国、製品群を扱える大企業は広域戦に持ち込んでリソースの差で勝負すべきである一方、兵力の少ない場合は局地戦にもちこんで武器の性能を磨いて勝負する、ということになります。

今回の「中間領域」における戦略「弱点にフォーカスする」も、いわばランチェスター戦略第一原則と同様の趣旨と言えます。

さいごに

海外進出先を決定する際には、市場規模だけではなく既存事業との関係、サプライチェーンや地域のカルチャー、マーケティング効果など、検討すべきことは無数にあります。

今回の「中間領域に注目する」というアイデアも、一つの着眼点になるのではないでしょうか。

詳細について興味ある方は、論文をご参照ください。

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