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【海外進出戦略】基本戦略はこの3つだけ。それでは企業はいかなる戦略をとるべきか。

企業が海外進出する際に、どのような方針に従って実行すべきか悩ましいところではないでしょうか。

最近では中小企業の海外進出も増えていますが、基本方針など持たずに、とにかく海外に子会社を設立していくケースも多いと思います。

グローバル戦略については、ハーバードビジネススクールのパンガジュ・ゲマワット教授が有名ですが、パンカジュ教授が2007年に発表したトリプルA戦略は、10年以上たった今でも、海外進出の基本戦略として機能しています。

今回は、パンカジュ教授のトリプルA戦略について紹介したいと思います。

トリプルA戦略とは?

パンカジュ教授は、海外進出にあたり考慮しなければならない課題は「2国間の差異の取り扱い」であると分析します。

差異には「文化の差異」「政治の差異」「地理の差異」「経済の差異」の4種類があり、それぞれの差異に対処することが海外進出戦略となります。

海外進出における差異については、パンカジュ教授によりCAGEフレームワークとして体系化されています。

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そして、グローバル戦略というと「ローカル化」または「標準化」という2項対立で検討されることが一般的ですが、パンカジュ教授に言わせれば、どちらの手法も2国間の「差異」に対する対応の種類であり、グローバル進出において、ローカル化、標準化と並び有効な戦略となるのが「差異を利用する」戦略といいます。

パンカジュ教授はこの3つの戦略を下の言葉で整理し、英語の頭文字をとって「トリプルA戦略」と名付けました。

・適応(Adaption)

・集約(Aggregation)

・アービトラージ(Arbitrage)

適応(Adaption)とは

適応(Adaption)戦略は、ローカル化をすすめる戦略で、各国ローカル市場に合わせてコミットすることで、売上シェアの拡大をめざします。

具体的には、各国に現地法人を設置し、ローカルのカルチャーに合わせて製品開発、組織運営を行います。そのため、組織構造は「国」単位となります。

会計上は、ローカル市場への対応のため、広告宣伝費が多く使われるため、グループの対売上高広告費比率が高くなる傾向にあります。

比較的小規模な海外進出企業で採用されやすい戦略ではないでしょうか。

集約(Aggregation)とは

集約(Aggregation)戦略は、複数の国を一つの市場単位とまとめることでグローバル規模のオペレーションが可能となり、規模の経済を享受する戦略です。

製品やサービスを標準化したり、開発・生産プロセスを統合することでコスト削減・効率化を達成でき競争優位の源泉となります。国を超えたサプライチェーン、プロセスの統合が必要となるので、組織構造は地域統括会社、生産統括会社を中心とする国を超えた事業グループの設置となります。

会計上は、標準品の開発が必要ですので、対売上高研究開発費(R&D)率が高くなる傾向にあります。

こちらは、大規模なグローバル企業が採用されやすい戦略ではないでしょうか。

アービトラージ(Arbitrage)とは

アービトラージは差異を利用して利益を得るという意味がありますが、アービトラージ(Arbitrage)戦略は、サプライチェーンを構成する各要素を違う国に置くことによって、国・地域における市場間の差異を活用する戦略です。

人件費の安いインドにコールセンターを置いたり、発展途上国に生産拠点を置く戦略がアービトラージとなります。

地域差を利用するためには、各オペレーション要素ごとに最適な地域に設置することが必要となるため、組織の構造は、機能・職能別組織、または組織外部も含めた垂直統合の組織となります。つまり、管理業務はインドに、生産業務は中国に、といった具合です。

会計上は、人件費や固定費が高い企業はアービトラージが最も効果を発揮します。対売上高人件費率が高い企業は検討すると良いかもしれません。

トリプルA戦略の適用方法は?

トリプルA戦略の特徴はおおよそ以下のようにまとめられます。

  適応戦略 集約戦略 アービトラージ戦略
概要 国別に対応 グローバルな標準化 国ごとに専門化
メリット ローカル市場の優位性、フィット 規模の経済、範囲の経済 差異の利用可能
デメリット 過剰な多様性、複雑性 過剰標準化、ローカル市場へのミスマッチ 差異の減少(による競争優位の消滅)
会計的特徴 宣伝広告費 研究開発費 人件費

海外進出を検討する企業は少なくとも1つの基本戦略を選ぶ必要があります。

パンカジュ教授は、トリプルA戦略には互いに対立する要素があるため、3つを同時に進めることは難しいといいます。

たしかに、戦略に従って組織構造がある程度決まってくるため、複数の戦略を同時に採用すると組織構造がうまくまとまりません。

一方で、グローバル先進企業の中には、対立する要素をうまくコントロールすることで2つの戦略を利用している企業もあるとのことです。

たとえば、オペレーション機能を最適国に配置するアービトラージをとりつつ、標準化によって規模の経済を追求する集約戦略をとることで2つの戦略を採用することができます。

ただしこれには、組織内部に十分なリソースがあることや、イノベーティブで柔軟な組織風土であるなど、求められるハードルが高いといえます。

さいごに

海外進出をする際には、ただやみくもに進出国に子会社を設置するのではなく、合理的な進出の戦略を立案し、実行していくことが必要です。

パンカジュ教授のトリプルAの戦略はその基本方針を与えてくれるのではないでしょうか。

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