大手コンサルティング会社のDeloitteが、アジアパシフィック(APAC)地域におけるデジタル取引とテクノロジーに関するレポートを公表しています。
当記事において、本レポートの概要について紹介したいと思います。
シンガポールのメガバンクUOB銀行、コンサルティング会社のPwC及びシンガポール・フィンテック協会が2021年度のASEANにおけるフィンテックの状況に関する調査レポート「FinTech in ASEAN 2021」を発表しました。 […]
1.デジタル取引の黄金期
APAC地域において、次の3年間も引き続きデジタル取引(Digital Trade)の黄金期である。
パンデミックは、グローバルレベルでデジタル化を加速させており、いったん慣れ親しんだオンライン消費の習慣を戻すことは困難である。
この間、ASEANにとって中国が最大の貿易相手となり、ラザダ(LAZADA)のようなクロスボーダーのeコマースプラットフォームが成長した。取引量の大きい中国ビジネスの取り込みに熱心となり、また中国製品を地元顧客へ輸入することを望んでいる。
デジタル技術は、世界中の販売業者にグローバル市場への参加を可能とした。デジタル・インフラの絶え間ない改善は、クロスボーダー取引における2つの主要な障壁である「ロジスティックス」及び「決済」の問題を取り除いた。更にブロックチェーン技術がデジタル取引の新しい領域を創造している。
域内包括的経済協定(Regional Comprehensive Economic Partnership」RCEP)が、地域内の協力を促進しており、5つの点においてデジタル取引を円滑にしている。関税障壁の排除、柔軟な規制、eコマースの促進、取引円滑化、中小・技術企業へのフォーカスである。
2.eコマースとデジタル化の2軸で分類
APAC地域におけるデジタル取引は、「国境を越えたe-コマース」及び「デジタライゼーション」の2軸で相関関係を見出すことができる。
アジア市場は3つのカテゴリーに分類することができる。
新興国市場:タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピン
アーリーステージ市場:ミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイ
3.APAC市場における各国の状況
主なAPAC各国の状況は次のとおりである。
シンガポール
高度に国際化されたファイナンス及び海運センターであり、アジア、ひいては世界において重要な市場である。シンガポール政府は積極的にグローバルデジタル取引を促進しており、東南アジアのeコマースプラットフォームの統括拠点として中心的なハブとなっている。
中国
デジタル化の発達は、中国におけるeコマース取引の強固な土台となっており、巨大な発展機会の成熟段階に入っている。
日本
強力なロジスティック技術がクロスボーダー取引を下支え、デジタル経済は完成されている。ただし、クロスボーダーeコマースは、高齢化社会に起因するデジタル決済の遅れにより、十分に開かれていない。
マレーシア
Eコマース市場の成長率は、RCEP国の中でトップである。ただし、ロジスティック・インフラの制限により、クロスボーダーのeコマースは十分に発展していない。
インドネシア
人口動態、インターネット浸透率や顧客の慣習から、eコマースの進展に大きな潜在性がある。
フィリピン
フィリピンのEコマースには大きな潜在性があるものの、インターネット浸透率やデジタル決済の未発達から制約がある。
4.マイクロ多国籍企業の急増
デジタルプラットフォームの恩恵で、APAC地域の起業家や零細企業でも、「マイクロ多国籍企業(micro-multinational enterprises)」となることができ、様々な国においてクロスボーダーeコマースに従事している。世界の購買者に対して、多様化された「ローカル製品」や手軽なカスタマイゼーションのサービスを提供している。
APACでのビジネスは、デジタル決済やクロスボーダーeコマースのつながりにより高い満足を得ている。販売者は、プラットフォームやツールを利用することができる。決済に関しては、運転資金管理や一括購入、発注、支払、回収において信頼できるプラットフォームを選ぶ。
RCEPがクロスボーダーeコマースのオペレーションをサポートしているは明白である。たとえば、「自社のウェブサイト構築」はRCEPで保証されており、これはeコマースにウェブサイトが新規市場へ拡大する重要なチャネルとして有利であり、70%の企業がアンケートで自社のウェブサイト構築を計画していると回答している。
5.国外倉庫の需要
クロスボーダー取引のローカル化、海外顧客の購買体験の改善、競争優位の点から「国外倉庫(overseas warehouses)」は重要である。国外倉庫は、大量に商品を輸送し、需要に即座に対応し、適時にパッキング、配送を行う倉庫である。ロジスティックコストの低減、配送期間の効率化、製品認知の上昇、購買体験の向上が重要な競争優位となる。
6.デジタル決済サービスの競争が追い風
クロスボーダーeコマースの急速な発展は、「デジタル決済サービス」の競争とともに進んでいる。クロスボーダー決済プラットフォームはコストを低減し、ユーザーの利用頻度を高める。スピード、便利さ及び高度なセキュリティの観点から、決済チャネルは必要不可欠となっている。
原文はこちら