【シンガポール・リート銘柄】PRIME US REITについて考察。

シンガポールREIT(不動産投資信託)は、高い配当利回り比較的堅調な値動きが特徴でおすすめです。

特にシンガポール在住者は、売却益や配当金が非課税のため、高い投資リターンを期待でき、投資を検討する方も多いのではないでしょうか。

当記事では、米国のオフィス施設に特化したリートのひとつPrime US REIT (SGX:PRIE)について紹介したいと思います。

Prime US Reit (SGX:PRIE)は2019年にシンガポール証券取引所に上場した比較的新しいリートで、米国のクラスAオフィス施設を保有する不動産投資信託です。

Prime US Reitの株価推移は以下のとおりとなります。

それでは、以前の記事で紹介した「シンガポール・リートを選ぶ際のポイント」8項目に沿ってそれぞれ分析していきたいと思います。

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最新の決算については、以下の記事をご参照ください。

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1. 物件のポートフォリオ

リートがどのような不動産を保有するか、Prime US Reitの物件ポートフォリオについて確認してみましょう。

Prime US Reitは、2022年3Q時点で米国10州に14のオフィス物件を保有します。

その内訳は、西海岸のカリフォルニアや東海岸諸州に偏らず、内陸州も含めて投資しています。一つの州からの収入は最大で11.8%と報告されており、分散された安定感が強みのようです。

2. スポンサー

スポンサーとは、リートの資産を運用する会社(資産運用会社)の大株主です。

Prime US REITのスポンサーは、KBS ASIA Partnersであり、KBSは創業以来の取引高が429億米ドルをほこる米国最大級の商業用不動産管理会社の一つです。

実績のあるスポンサーがついていることで、ある程度堅実な不動産投資を行っていると見れるのではないでしょうか。

3.  一口当たり分配金(DPU)と配当利回り

執筆時現在のPrime US Reitの年間一口あたり分配金(DPU)は0.095、株価は0.51となっていますので、直近の年間配当利回りは13.4%程度となっています。

最近1年の推移では7.3% 〜10.8%程度となっており、魅力的な配当利回りではないでしょうか。

(Source: Investing.com)

ただし、5%程度で高利回りと言われるリートの中でも13 %というのは、かなり高い利回りとなっており、コロナ後のオフィス需要や、2023年以降の米国リセッション入りの可能性、借入金利の上昇による収益低下の可能性を慎重に検討する必要がありそうです。

なお、2022年3Qまでの9ヶ月決算では、前年同期比で分配可能利益は9.2%成長しており、こちらはポジティブな兆候です。

4. テナントの状況

Prime US Reitの直近のテナント状況は以下のとおりです。

賃貸収入について、トップテナントであるCharter Communicationsでも8.4%と、少数のテナントに依存しておらず分散化されていることが見て取れます。

セクターも幅広く分散化されており、上位からファイナンスの19%、ITの14%、メディカル・バイオの12%と続きます。

入居率 (Occupancy rate)

Prime US REITの2022年3Qにおける入居率は89.6%であり、業界平均の82.9%と比べて良好です。

Whitley Bradley & BrownやWeWorkなどのテナントがぬけた結果、デンバー州やワシントンDCなどで70%を下回る物件がある一方、入居率90%を超える優良物件も多い印象です。

加重平均リース満了期間 (Weighted Average Lease Expiry)

REIT の2022年度3Qにおける加重平均リース満了期間は4.1年です。通常、事業の賃貸契約は3年〜で、3年を下回ると現状のテナント契約を更新できていないと考えられ、リートの将来の収益性の低下につながります。

2027年以降満了の契約が42%あります。コロナ禍のなか直近10四半期の契約更新は10%のポジティブな更新と報告されており、大きな問題はなさそうです。

5. ギアリング比率

リートのギアリング比率とは、「リートの負債/ リート資産」の比率であり、リート資産の取得に対する外部負債の割合を表すものです。Average leverage (平均レバレッジ)とも呼ばれます。

2022年3Q におけるPrime US Reitのギアリング比率は38.7%です。シンガポール金融庁(MAS)によるギアリグ比率規制の50%を大きく下回り、健全な水準と言えます。

また、Prime US Reitは、負債総額に対する固定金利負債の割合を83%と報告しており、利上げの影響は大きく受けない底堅い財務体質を有しているといえそうです。

6. 財務コスト

リートの財務コストは主に物件取得の借入金に対する支払利息です。財務コストについてはインテレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)で確認することができます。ICRとは、「収益/支払利息」で算定することができ、数値が高いほど財務コストが低く安全性が高いことを示します。

Prime US REIT の2022年度1QにおけるICRは4.5倍です。

前述のとおり、83%の負債が固定またはヘッジされており、うち、50%は2026年までヘッジ、16%は2029年までの固定金利契約となっています。

しばらくの間、支払利息がリートの分配可能利益に大きく影響することはなさそうです。

7. 株価純資産倍率 (PBR)

株価純資産倍率(Price Book-value Ratio: PBR)は、REIT株価(一口当たり投資額)を一口当たりの純資産価値(Net Asset Value: NAV)で割った値です。

PBRが1より大きい場合は、REITが純資産額に比べて大きく評価されている一方、1を下回る場合は評価が低いことを示します。

(Source: Investing.com)

執筆時現在のPrime US REITのPBRは0.55で、Industry平均0.87より低い数値となっています。

最近のコロナや金利上昇、不動産市場への不安から株式時価総額が低くなっていると考えられます。

8.成長戦略

最後に、Prime US REITのDPUが今後も増加していく可能性があるか、Prime US REITの成長戦略について確認したいと思います。

2022年3Qの資料では、具体的なの成長戦略は報告されておらず、「リース活動」「積極的な資産マネジメント」「ESGコミットメント」「取得」という通常リートの報告書に記載される一般的な記載にとどまりました。

さいごに

Prime US REITは、他の記事で考察したManulife US REITと同様、コロナ以降の急速な株価下落で、執筆時現在13.4%という高利回りになっているリートです。

投資家の過剰に保守的な投資姿勢のため株価が下落して利回りが高くなっているのか、それとも将来の収益性低下を織り込んだ株価となっているのかを見極める必要があります。

同資料には、オフィス回帰を望む割合がマネージャレベルで78%と前年度から伸びてきており、また従業員レベルでも、最低週3−4日はオフィス勤務を望む割合が61%となっています(完全オフィス勤務は24%)。

ここらへんのデータから見ると、オフィス施設需要はある程度回復するかもしれません。

なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、何卒よろしくお願い致します。

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