シンガポールに上場している不動産投資信託(REIT)である PRIM US REIT(SGX:PRIE)が、2022年度の決算(1月〜12月の12ヶ月)を公表しました。
PRIM US REITは、米国クラスAのオフィス施設に特化したリートで2019年にシンガポール証券取引所に上場した比較的新しいリートです。
2022年第4四半期は比較的厳しい決算内容であり、2023年2月8日の決算発表後、PRIM US REITの株価は下落に転じています。
PRIM US REITの概要については、以前記事で紹介しているので、今回は業績のアップデートを中心に見ていきたいと思います。
シンガポールREIT(不動産投資信託)は、高い配当利回りや比較的堅調な値動きが特徴でおすすめです。 特にシンガポール在住者は、売却益や配当金が非課税のため、高い投資リターンを期待でき、投資を検討する方も多いのではないでしょうか。 […]
一口あたり分配金(DPU)の状況
株価及び配当金というかたちで投資のパフォーマンスに重要な影響を与える一口当たり分配金(DPU: Distribution per unit)は、2022年下期において同期比で3.45セントから3.03セントへ12.2%減少という結果でした。
この減少の主な理由として、トップ10に入るテナントの退去、利上げによる財務コストの21.8%の上昇などを挙げています。
投資資産の状況
2022年度末における物件占有率は89.1%で概ね安定しています。
95%以上の物件が半数を占める一方、ワシントンDCの物件が46.1%と足を引っ張っています。サンフランシスコも76.1%と比較的低くなっています。
更新物件の賃料も6.3%増と好調、加重平均リース期間は4.1年であり当面賃貸の状況に大きな問題はなさそうです。
ポートフォリオは米国内各地に分散されており、最大の物件売上高は全体の12%にすぎず、また業種も多様化されており特定の物件に依存しない投資状況となっています。
財務の状況
米国は歴史的な金利上昇局面であり、負債の利息負担の影響が気になるところです。
負債の総額については、前期末(2021年12月31日)から150百万シンガポールドル程度増加し、「リートの負債÷リート資産」の比率で表すギアリング比率は42.1%と、第3四半期の38%から上昇していますが、シンガポールが定めるギアリング比率50%を下回っています。
金利は3.4%となっていますが、82%の負債が2024年まで、65%の負債が2026年までヘッジされており、金利の影響を限定しています。
さいごに
一株あたり配当(DPU)が減少し、株価も厳しい状況となっているPrime US REITですが、今回の決算発表を受けてアナリストは以下のようなコメントを出しています。
・マイナス要因はほぼ織り込まれている
・ギアリングは依然として規制の範囲内
・債務は比較的十分にヘッジされ、利上げの影響を限定
・労働者がオフィスに回帰し、物件占有率が上昇傾向
Prime US REIT is still providing a “lucrative” yield of 12.5…
投資利回りは依然12.5%と高どまりしており、魅力的なS-REITには変わりありません。
ただし、米国のさらなる利上げ、また物件占有率の低迷からくる投資物件の評価減により、ギアリング比率が上昇、追加資金調達が困難になることや物件売却を迫られるリスクも残ります。
引き続き米国の利上げの状況をにらみながら慎重に投資することが求められそうです。
なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、よろしくお願い致します。