シンガポールのユニコーン企業。その特徴は?

ベンチャ―投資の活況により、近年世界中でユニコーン企業が誕生しています。

ユニコーン企業とは未上場ではあるものの、企業価値が10億米ドルを超える企業。上場後は莫大な時価総額がつくことが期待されます。

シンガポールでは、2021年8月現在、8社のユニコーン企業が存在します。

Forbesの記事によると2021年東南アジアには14社ですので、そのうちの半数がシンガポールを本社としていることになります。

当記事では、2021年7月時点におけるシンガポールのユニコーン企業を紹介し、その特徴について考察したいと思います。

シンガポール、アジア新興国におけるスタートアップ投資に関する調査報告書。

シンガポールのユニコーン企業

Grab

企業価値評価額:143億米ドル 
設立年:2012年
ユニコーンとなった年:2014年

Grabは言わずとしれた、東南アジアのスーパ―アプリです。

カーシェアリングのプラットフォームから始まり、東南アジアから米国の雄Uber(ウーバー)を撤退させることに成功しました。今ではデジタル決済やフードデリバリーなど、サービス領域をどんどん広げています。

もともとはマレーシア発のサービスですが、2014年に本拠地をシンガポールに移転しています。

シンガポールで暮らすには使わない日はないといえるくらい、生活インフラとして定着しています。

100年企業戦略オンライン

世界中で存在感を高めるアプリを利用した配車サービス。日本では自家用車を利用した配車サービスは解禁されていませんが、米国の…

 

HyalRoute

企業価値評価額:35億米ドル 
設立年:2012年
ユニコーンとなった年:2020年

HyalRoute(ハイアルルート)は、アセアン地域にシェアード通信ネットワークを提供する企業で、ファイバー網の販売及びリースを主な事業としています。

フィリピンやミャンマー、カンボジアといった、通信インフラが整っていないアセアン各国にファイバー通信インフラを提供し、低コストで高速なインターネットの普及を後押ししています。

INQUIRER.net

Singapore-based fiber infrastructure company HyalRoute Group…

 

Trax

企業価値評価額:13億米ドル 
設立年:2010年
ユニコーンとなった年:2019年

Trax(トラックス)は、小売業向けのDXサービスを提供する企業です。例えば、店舗の商品棚を撮影した写真で在庫の状況を確認したりすることができます。

普及すれば企業の在庫管理業務や監査のあり方に大きな変革がもたらされることは間違いないのではないでしょう。商品在庫を持つあらゆる会社に需要があり、潜在的なマーケットが大きいのでさらなる飛躍が期待できそうです。

ITmedia マーケティング

店舗の商品棚の前で撮影した写真を機械学習で画像認識し、在庫状況や商品棚上のシェア、 品切れ情報などが簡単に確認できるよう…

 

PatSnap

企業価値評価額:10億米ドル 
設立年:2007年
ユニコーンとなった年:2021年

PatSnap(パットスナップ)は、特許分析を手掛けるテック企業です。世界各国の特許データを収集しAIで解析、イノベーションに関する知見を発明家や研究者に提供します。

Bloomberg.com

特許分析を手掛けるシンガポールの新興ソフトウエア企業パットスナップは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2などが参加した最…

 

CARRO

企業価値評価額:10億米ドル 
設立年:2015年
ユニコーンとなった年:2021年

CARRO(カーロ)は、東南アジア最大の中古車オンライン取引プラットフォーム。

自動車の台数制限が厳しく、また高税率のかかるシンガポールにおいて確固たるポジションを確立した後、今では自動車需要の大きいインドネシア、タイ、マレーシア等に進出しています。

品質や価格感の比較が難しい中古車市場に透明性をもたらしたことが成功の秘訣ではないでしょうか。自動車マーケットのある国ではどこでも展開可能なビジネスモデルのため、さらなる拡大が期待されそうです。

 

Moglix

企業価値評価額:10億米ドル 
設立年:2015年
ユニコーンとなった年:2021年

Moglix(モグリックス)は、企業向けのB2Bプラットフォーム。アジアでオフィス製品や工業機器のマーケットプレイスを展開しています。

現在本社をシンガポールに置いているようです。インド人によるインド発のプラットフォームです。

mint

With the current equity infusion, the total funds raised til…

 

NIUM

企業価値評価額:10億米ドル 
設立年:2014年
ユニコーンとなった年:2021年

NIUM(ニアム)は、国際間の電子決済システムを提供するフィンテック企業。インターネット決済用のバーチャルクレジットカードや越境送金サービスを手掛けます。

今後は調達した資金を利用して米国や中南米に事業を拡大し、米国での上場を目指すとしています。

東南アジアでは決済関連のフィンテックビジネスが盛り上がりを見せますが、いち早くユニコーンの仲間入りを果たしました。

The Straits Times

Nium plans to use the funds to expand in the US and Latin Am…

 

MATRIXPORT

企業価値評価額:10億米ドル 
設立年:2019年
ユニコーンとなった年:2021年

MATRIXPORT(マトリックスポート)は、暗号資産(仮想通貨)に関するフィンテック企業。

仮想通貨マイニングの世界大手Bitmain Technologies Ltd.から、ビリオネア創業者がスピンアウトさせて設立した企業であり、創業2年でユニコーン企業入りを果たしています。

暗号資産取引、管理、保全等のサービスを提供しており、21年3月時点で運用資産総額は100億米ドル、月間取引高は50億米ドルと報じられています。

Fortune

Matrixport is part of a set of startups trying to bring fami…

シンガポールのユニコーン企業の特徴

以上のシンガポール・ユニコーン企業には、以下のような特徴があります。

1.イシューをテクノロジーで解決する企業

これはシンガポールに限りませんが、近年ユニコーンとなる企業は、「従来から存在する課題を、最先端のテクノロジーで解決する」系のサービスを提供しています。

東南アジア(のなかの特に途上国)では、まだまだ先進国に比べて課題が山積みであり、だからこそテクノロジ―の力でカイケツする余地が大きいといえます。

ユニコーンになるような企業は、この課題をうまく捉え、適切なテクノロジーを当てはめて解決しているため評価が高いといえそうです。

2.シンガポールに拠点を置き、アセアンで事業展開をする

シンガポールのユニコーン企業は、シンガポールに拠点を置き、アセアンでビジネス行っています。

法律や金融、通信インフラが整っており、税制も透明・低負担で、かつ高度人材も豊富なシンガポールで本社を置くことが、アセアンでビジネスを行うには有利となります。

一方、シンガポールだけをマーケットとするには、500万人程度の小国ではスケールしないため、はじめからアセアン全域をターゲットとする企業が多いのではないでしょうか。

3.ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資する

上記のシンガポール・ユニコーン企業のうち、Grab、Carro、TRAX、Patsnap、Moglixはソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資を受けています。

普通のベンチャーキャピタルは、設立からあまり年数の経っていないアーリーステージの企業は海のものとも山のものともわからないため、巨額の出資ができないものですが、ビジョンファンドは数百億円規模の出資を行っています。

このことがアセアンで新生ユニコーンが多く誕生する一つの要因になってそうです。

ビジョンファンドの目利き力と資金力、世界を変えていく力は強烈です。

さいごに

2030年に向けて、ますますテクノロジ―進化が加速し、多くの新興企業が誕生することが予想されます。

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このような状況の中、アセアン市場を狙うには、やはりシンガポールに拠点を置くことが有利となりそうです。

引き続きシンガポールのスタートアップ界隈は目が離せません。

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