シンガポール、デジタル化国家に関するランキングで1位を獲得。

ドイツの戦略コンサルティング会社であるローランド・ベルガーが報告書「Improving digital inclusion in Southeast」を公表しました。

東南アジアにおけるデジタル・インクルージョンの状況に関する内容となります。

このデジタル・インクルージョン・ランクにおいてシンガポールは世界1位となっており、世界最高のデジタル国家であることが報告されました。

今回はデジタル・インクルージョン・ランクについて紹介したいと思います。

デジタル・インクルージョンランキングとは

デジタル・インクルーションは次のように定義づけられています。

デジタル・インクルージョン

個人及び社会が、 ICT技術を効果的に利用できることで、デジタル化経済・社会に貢献し、また恩恵を受けること。

つまり、多くのひとがデジタルを利用できることで恩恵を受けたり、社会に役に立つことができるようになること。

ローランド・ベルガーにより開発されたデジタルインクルージョン指数(digital inclusion index)は、デジタル・インクルージョンの状況を可視化し、問題を解決するための指標となります。

指標は、デジタル・インクルージョンの状況を、以下の4つの観点から分析し、ランク付けしたもの。

1.アクセス可能性

2.価格の入手しやすさ

3.(デジタル利用の)能力

4.(デジタル化への)姿勢

報告書によれば、東南アジアでは、いまだに1億5千万人の成人がデジタル化から取り残されており、総人口の31%にあたります。

デジタル・インクルーションが進むことで、毎年150億米ドル(約1兆5700億円)程度の経済規模が見込めるとのこと。

デジタル・インクルーションの成否が各国の経済的な成長を後押しすることでしょう。

シンガポールのデジタル・インクルージョン・ランクは世界1位

(Source: Bridging the digital divide, Roland Berger)

デジタル・インクルージョン・ランクにおいて、シンガポールが世界1位となったのは、ITの普及と公的なサポートが主な勝因といえそうです。

シンガポールは、かなりの場所でフリーwifiにつながることから、「アクセス可能性」が高く、また所得水準も高いため「価格の入手しやすさ」も問題がありません。

さらに、デジタルスキル習得への公的サポートも充実しており、国としてデジタル化を効率的に推進していることが、世界ランキング1位となる理由でしょう。

政府のリーダーシップが非常に優れており、「デジタル化」がグローバルレベルでの競争力を高めることを理解しており、それを政策に落とし込むだけの実行力もあります。

報告書では、デジタル化におけるシンガポールの懸念事項は、インターネット不正個人情報の問題を挙げています。これは、デジタル化が浸透したことによりますますリスクは高まっていく問題でしょう。

また、デジタル化が進んでいる一方で、「(デジタル化への)姿勢」は他国に比べて保守的であることを指摘しています。

東南アジア全体のデジタル・インクルージョン・ランクは?

(Source: Bridging the digital divide, Roland Berger)

地域ごとの比較によると、東南アジアは7地域中5位という結果に。

東南アジアより下位の地域はラテンアメリカアフリカです。

この原因は特に「価格の入手しやすさ」「(デジタル利用の)能力」が足を引っ張っているため。

まだまだ発展途上国が多い東南アジアでは、スマホなどのICT機器、インターネット接続のデータ料などは、低い賃金に比較して高額となっています。

また、教育も先進国のように十分に行う余裕はないため、デジタル・リテラシーも世界平均からみて低くなっています。

一方、「アクセス可能性」及び「(デジタル化への)姿勢」が平均か、それ以上になっており、デジタル化が急速に進む下地を備えているように思えます。

さいごに

ビジネスでも業務のデジタル化であるDX(デジタル・エクスチェンジ)が話題となっているように、2020年代は、国、企業、個人を問わずデジタル化への対応の成否が競争力を左右すると思われます。

日本は当ランキングで13位に位置しており、わるくない状況ですが、「アクセス可能性」と「(デジタル化への)姿勢」が低くなっています。

日本の将来のために、フリーwifiなどの整備を進めて誰でも手軽にインターネットにアクセスできるようにすることや、デジタル化教育を通じて、国としてデジタル化を推し進めて行くことが急務ではないでしょうか。

「はんこ」や「FAX」の利用でモメている場合ではありません。

ちなみに、ローランド・ベルガーの報告書では、デジタル・インクルージョンのさらなる推進のために以下の7つ項目を列挙しています。

1.アクセス可能なテクノロジー、メディア及び通信インフラの整備

2.デジタル・コンテンツの創造

3.規制改革と価格競争の推進

4.切迫した家計を手助けするための公共のネットアクセス

5.デジタルリテラシー、スキル往生のための学習機会

6.デジタルへの興味を醸成するための気づきの提供

7.安全なデジタル環境

世界的なデジタル化競争から脱落しないように、国、企業、個人の各レベルでデジタル・インクルージョンを推し進めることが求められます。

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