世界デジタル競争力ランキング(IMD World Digital Competitiveness Ranking)の2020年度版において、シンガポールが世界2位にランクインしました。3年連続での世界2位という快挙となっています。
なお、世界1位は米国です。2017年まではシンガポールが世界1位となっていましたが、2018年より米国が3連覇しています。GAFAを筆頭にIT企業といえばメイド・イン・アメリカという状況になっていますから、予想に難しくないのではないでしょうか。
一方で、日本は前年の23位からランクを落として27位という結果。アジアの韓国や台湾などが8位、11位と躍進する中、デジタル領域に関してはもはや先進国といえないポジションとなっています。
デジタル競争力ランキングとは
「デジタル競争力ランキング」は、スイスの名門ビジネススクールIMDが毎年公表する調査報告書で、今年は世界63カ国を対象に実施。デジタル分野における
「技術(Technology)」
「未来への対応(Future Readiness)」
の3区分について評価され、以下のような項目から構成されます。
知識(Knowledge)-探求、理解し新しい技術を構築するためのノウハウ
・タレント(Talent)
・トレーニング、教育(Training and Education)
・科学的知見の集積(Scientific Concentration)
技術(Technology)- デジタル技術開発のための環境
・規制(Regulatory Framework)
・資本(Capital)
・技術的な体制(Technological Framework)
未来への対応(Future Readiness)-デジタル革命に向けた国家レベルでの対応
・受け入れる姿勢(Adaptive Attitudes)
・ビジネス上の機動性(Business Agility)
・ITへの適応(IT Integration)
デジタル競争力ランキング−評価の方法
統計データなど、一般に公表されているデータから32の基準、さらには専門家による調査による20の基準から算出されます。
デジタル競争力ランキング−シンガポール
評価区分ごとのランキングは以下のとおりです。
「技術(Technology)」が世界1位と評価されており、デジタル分野での環境が世界で最も整っていると評価されています。また、「知識(Knowledge)」の区分における小項目「タレント(Talent)」も1位となっており、世界から優秀な人財をあつめるという国家戦略が功を奏しているのでしょうか。
また、「技術(Technology)」の評価項目である「規制(Regulatory Framework)」及び「技術的な体制(Technological Framework)」は世界1位となっており、シンガポールが国家としてデジタル革命を推し進める環境を整備していることが見て取れます。
一方で、「未来への対応(Future Readiness)」が12位と比較的低いランク。詳細に見てみると、「オンラインショッピング(Internet retailing)」、「タブレット保有率」、「スマートフォン保有率」、「企業の機動性」が足を引っ張っているようです。
シンガポールは国としてぐいぐいデジタル革命を進めているものの、高齢化も進んでいることもあり、シンガポール国民全体及び企業のほうがそこについて行けていないのかもしれません。
デジタル競争力ランキング−日本
日本はどうでしょうか。項目ごとのランクは以下のとおりです。
全体は27位と低評価ですが、項目によっては、世界1位となっているものもあります。たとえば「生徒に対する教師の比率」「モバイル契約率」が1位、「ワイヤレス・ブロードバンド」、「ロボット輸出」「ソフトウェア著作権違反」などが世界2位となっています。
ところが、世界最低評価の項目も。
「国際経験(International experience)」、「企業の機動性(Agility of companies)」、「ビッグデータ利用と分析(Use of big date and analytics)」、「機会と脅威(Opportunities and threats)」は調査対象の世界63カ国中、63位と最低評価されています。
さいごに
シンガポールに住んでいると、国が率先してデジタルを活用しようとしていることに気づきます。
コロナ対策におけるデジタル追跡管理や、一般的な公共サービスの提供、税務申告システムなど、デジタル技術を最大限利用して効率化するという国家の姿勢が明確です。
このような姿勢が国全体としてのデジタル化を推し進め、国家競争力を高めるのでしょう。
デジタルの領域は益々拡大しており、ハードよりもデジタルの付加価値が高まっていく流れはしばらく変わらないのは間違いないと思われます。
日本も「FAX」やら「ハンコ」やらで喧々諤々やってる場合では有りません。デジタル革命への対応を間違えると、日本は今後先進国から転落するおそれもあるのではないでしょうか。
こちらも参照
<シンガポールの驚異的発展>競争力ランク世界一位の秘訣について考察