シンガポールのメガバンクの一角、DBS銀行が会計監査に必要な残高確認をデジタル化することを発表しました。
監査の残高確認手続
残高確認は、監査の最も重要な手続きの一つで、銀行の有する企業の財務情報について、会計監査人が問い合わせ、その情報をもって財務諸表の適切性を確認する手続きです。確認作業は、企業の不正行為を検出する強力なツールですので、会計監査にあたり最低限実施すべき手続です。
残高確認は、銀行の有する企業情報を問い合わせるという単純な作業の割には煩雑な手続きが必要でした。
たとえば、クライアントの情報を、第三者である監査人が銀行に問い合わせる行為であり機密情報の開示が必要であることから、クライアントからの承諾書を入手する必要があります。
また、不正を防止するため監査人が直接発送、直接回収することが求められます。
そのため、従来残高確認にはある程度の時間がかかってしまい、監査をすすめるにあたり確認状の回収がボトルネックになることもしばしばでした。
DBS銀行のデジタル化では、従来は依頼から作業完了まで7日以上かかっていた作業を、24時間以内での発行が可能になります。
また、顧客は、必要がある場合に従来は電話で進捗状況を問い合わせていましたが、作業状況をいつでもオンラインで確認できるようになります。
これにより、監査のスムーズな進行と、決算作業の迅速化に貢献することになると考えられます。
会計監査とは シンガポールで事業を行う場合、現地の会計監査人の選任の要否について検討する必要があります。 ここで会計監査とは、企業が作成する財務諸表の適切性について、会社や利害関係者から独立した第三者が確認する業務をいいます。 会計監査の[…]
日本での状況は
日本で過去に会計監査業務に従事していた経験からすると、監査人の側でも、決算監査の繁忙期には膨大な数の紙の残高確認書から情報を確認していました。
デジタル化が進んだ時代においても紙でのやり取りが必要ということで、監査業界における旧弊を象徴する手続きです。
日本でも、大手会計事務所4社、いわゆるビック4の出資により2019年に「会計監査確認センター合同会社」が設立され、監査における残高確認を一元的にデジタル化するプラットフォームの導入が進んでいます。
ただし、このシステムではあくまで企業間における債権債務の確認がメインで、銀行や証券会社への確認は対象外となっており、こちらは各金融機関の対応をまたなければならないようです。
残高確認手続をはじめとする単純作業はますますデジタル化されていくことでしょうから、会計監査人は、より付加価値の高い専門業務に取り組んでいく必要があると思います。
DBS announced that it will be rolling out its digital audit …