【シンガポール・地域統括会社】地域統括会社の必要性、設立方法と税務その他留意点について解説。【完全版】

地域統括会社とは、次の会社のことです。

複数の国に子会社を有する企業が、類似性のあるエリア単位で戦略の立案・事業の遂行を行うために設置する対象エリア統括の拠点

海外複数国で事業を行っている会社は、地域統括会社の設立を検討することがあるかと思います。

今回は、地域統括会社の必要性、設立方法と税務及びその他の留意点について解説します。

地域統括会社の機能

まずは、地域統括会社とはどのような機能を有するのか、そもそも設立する必要があるのか考えてみたいと思います。

一般的に、地域統括会社の機能は、次の3点と考えられます。

・域内の経営戦略・経営支援

・ファイナンス機能

・経営の効率化・コスト削減

これらの機能は日本本社からも提供することができます。

そのため、地域統括会社の設立にあたっては、日本からではなく、あえてより統括対象エリアに近い地域統括会社から業務提供するメリットがあるのか否かを考えることになります。

例えば、東南アジアにおける統括業務を日本本社ではなくシンガポールから行う場合などです。

地域統括会社の機能詳細は、リンクの記事をご参照下さい。

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海外進出の方法

地域統括会社を検討する前に、海外進出の方法をまとめておきましょう。

日本企業が海外進出を行う場合、その取引規模の度合いに応じて以下の段階を経ることになります。

1. 日本本社と直接取引

2. 海外代理店を通して販売

3. 合弁会社の設立

4. 海外子会社の設立

5. 地域統括会社の設立

地域統括会社の設立は、海外進出の最終形態であり、海外事業を行う企業が目指すところでもあります。

さて、地域統括会社とひとくちに言っても、その法的形態や統括方法はいくつか考えられます。

具体的には、以下の方法のいずれかを取ることになります。

1.日本本社による管理

2.既存の子会社に統括機能を付与

3・既存の子会社に出資を移動

4・地域統括会社を新設

1→4に進むにつれて、コストと手間がかかる可能性が高くなります。

どの方法を取るかは、そのコストに見合うメリットがあるかを見極めなければなりません。

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特に、上記の「3.既存の子会社に出資を移動」からは、 統括対象の海外子会社への出資を地域統括会社へ移動することになります。

こちらは税務上留意する点など多いため、慎重に検討する必要があります。

地域統括会社へ被統括会社の出資を移動する主なメリットとデメリットは以下のようなものがあります。

メリット デメリット

資金還流方法として「配当」を得ることができる

出資の移転にコストと時間がかかる

統括の実効性を確保することができる

現地合弁会社からの了解に手間がかかる

 具体的な内容は、以下の記事にて解説しています。

 

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また、地域統括会社は会社規模が大きくなりますので、各国積極的に誘致しています。具体的には、地域統括会社に税務上のメリットを付与したり、様々なインセンティブ制度を提供しています。

東南アジア地域ですと、統括会社というとシンガポールのイメージがまだまだ強いですが、近年ではマレーシアやタイも魅力的な優遇税制やインセンティブ制度を導入し、統括会社を設立する企業が増えてきています。

シンガポールの地域統括会社設立に対する優遇税制、インセンティブ制度は以下の記事にまとめています。

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地域統括会社の設立方法

さて、上記を検討して実際に地域統括会社を設立すると決めた場合、次は地域統括会社の設立方法について検討することになります。

一般的に、地域統括会社の設立方法には次の2パターンがあります。

・地域統括会社を新規に設立する

・既存の会社に海外子会社株式を譲渡して地域統括会社とする

2つ目の「既存の会社に海外子会社株式を譲渡して地域統括会社とする」方法では、資産を譲渡することになるので税務上留意が必要です。

資産を譲渡する場合、取得時の簿価と売却価額の差が損益として出るので、その金額が課税対象となるかという論点が生じるためです。

ちなみに、地域統括会社へ子会社株式を移転する方法は、「譲渡対価が何か?」という点から以下の2パターンが考えられます。

・金銭による出資

・現物出資

両者の税務上の留意点については、以下の記事をご参照下さい。

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さいごに

地域統括会社は、税務メリットを得ることや現地の経営情報を迅速に収集することができるなど、グループ会社管理の実効性を高めることができます。

ただし、地域統括会社の運営にあたっては、コストに対してベネフィットがあるのか人財など必要なリソースはあてがうことができるかなど検討が必要です。

税制や人事など現地特有の論点が多いですので、地域統括の設立にあたっては現地の専門家に相談することをおすすめします。



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