地域統括会社を設置するに当たり、
が、論点となります。今回は、地域統括会社が海外子会社の株式を保有すべきか検討してみたいと思います。
統括会社が統括対象の海外子会社へ出資するメリット
地域統括会社が統括会社の海外子会社へ出資するメリットとして、「配当」及び「統括の実効性」が考えられます。
1.資金還流方法として「配当」を得ることができる
地域統括会社をキャピタルゲイン非課税の国、たとえばシンガポールやマレーシアに置けば、各海外子会社からの配当に課税されず、統括地域における再投資に資金を最大限に利用することができます。
こちらの記事で、「海外子会社からの資金還流方法」についてまとめています。
2.統括の実効性を確保することができる
出資により、株主として会社の基本的意思決定に参加することができますが、この株主権の裏付けにより統括機能の実効性を高めることができます。
統括会社を設置した場合、戦略の策定・実行が主な役割のひとつとなります。ところが、この戦略の実行において株主権による裏付けがないと、被統括の海外子会社を適切にモチベートし、業績評価を含めたモニタリングを行うのは難しくなるかもしれません。
各海外子会社の責任者は、各会社のトップとしてのプライドや責任感があるため、統括会社の指示することだからといって完全に従うとは限らないからです。
出資元が日本本社のままであると、各海外子会社は統括会社ではなく、親会社の方を見ながら業務することになり、指揮命令系統が2重となるおそれもあります。
そのため、統括会社が、株主としての役員任命権や基本的意思決定権を保有することが統括機能の実効性を高めることになります。
統括会社が統括対象の海外子会社へ出資するデメリット
一方で、統括会社が統括対象の海外子会社へ出資するデメリットとして、「出資移転コストと時間」、「合弁企業との交渉」が考えられます。
1.出資の移転にコストと時間がかかる
日本の親会社から地位統括会社へ海外子会社の株式を移転する際には、譲渡国である日本及び譲受国の双方で税務上の取扱を検討する必要があります。
たとえば、譲渡される海外子会社の国によっては、たとえば利用可能な繰越欠損金が、譲渡による株主変更の結果利用不可能となるケースもあります。
譲渡にあたっては、国ごとに税務専門家を利用して税務的な影響を調査するべきであり、時間及び専門家へ支払うコンサルティングフィー、課税額などコストがかかります。
こちらの記事で、「地域統括会社設立時の税務上の留意点」についてまとめています。
【シンガポール・地域統括会社】地域統括会社の設立方法と税務上の留意点。
2.現地合弁会社からの了解に手間がかかる
国や業種によっては、外資100%では会社を設立することができません。この場合は、現地企業との合弁会社という形態になりますが、主要株主の変更ということになると、当該現地合弁先との交渉に時間がかかるることも有りえます。
シンガポールに統括会社を設置する場合は出資が有利か
シンガポールでは、キャピタルゲイン課税がないため、日本本社からの出資移転時の課税関係や被統括会社からの配当課税は非課税となります。
また、一般的な事業会社であればシンガポールは通常独資100%による会社設立が認められ、合弁会社との交渉は不要です。
そのため、出資の形態をとることで、シンガポールに統括会社を設置するメリットを最大限享受できるといえます。
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