シンガポールの会計・財務アドバイザリー

【シンガポールvs香港】アジアのライバル都市の税率比較。

シンガポールと香港は、アジアの金融ハブでビジネスの先進都市。さらに富裕層の資産が集積するウェルスハブでもあります。

金融やウェルスの中心となっている理由の一つがその税制と税率。以下の表のとおり、キャピタルゲイン課税、贈与・相続税が非課税であるのが特徴です。

当記事では、ライバル都市のシンガポールと香港の税率について比較してみたいと思います。

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シンガポール vs 香港 :会社法人税

シンガポールの法人税率は17%で、企業の規模に関わらず一定です。ただし、所得の最初SGD10,000の75%、次のSGD190,000の50%が部分免税となり、最大SGD 102,500の所得控除が適用されます。

その結果、課税所得額SGD200,000(23百万円)の税率はおおよそ8.3%となります。

一方、香港の法人税率は企業の規模によって異なります。年間所得がHKD2,000,000以下の中小企業は8.25%の低税率が適用され、それを超える企業は16.5%の税率が適用されます。

例えば、上記のシンガポールの例に合わせて23百万円の課税所得を考えると、相当するHKD1,1500,000の税率は8.25%となります。

以上、中小企業でも大企業でも、シンガポール及び香港の法人税率は大きく変わらないと言えそうです。

ちなみに日本では、法人税率は23.2%ですが、それ以外に地方法人税、法人住民税、事業税、特別法人事業税なども課税されることから、資本金1億円超の大企業の場合、実効税率は30.6%にのぼります。

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シンガポール vs 香港 :個人所得税

個人所得税の最高税率はシンガポール24%、香港17%となっています。日本の45%と比べるとかなり低い税率であり、最高税率が適用されるような高所得者にとって、シンガポールや香港は魅力的な国であるといえそうです。

ちなみに独身者の1000万円の課税所得を比べると、シンガポールは4.7%、香港は13.4%となりました。

両国とも、日本と同様に所得が上昇するにつれて税率が大きくなる累進課税制度を採用しています。

日本円の換算レートをSGD115/円、HKD20/円とすると、シンガポールの年収10百万円はSGD8,7000、香港の年収10百万円は、HKD500,000となります。

シンガポール個人所得税では、SGD87,000に該当する税率区分は2%〜11.5%であるのに対して、香港個人所得税では、HKD200,000ですでに最高税率17%に到達しており、このために香港の個人所得税率が高くなっています。

(FY2024 シンガポールの個人所得税率)
(YA2024 香港の個人所得税率)

ただし、ここでは独身者のケースを例にとっていますが、香港では扶養控除が大きいなど個別ケースで結果が変わる点は留意が必要です。

どちらにしろ、日本の18.3%と比較すると有利な結果となっています。

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シンガポール vs 香港 :キャピタルゲイン課税

株式や不動産の売却益に該当するキャピタルゲインについて、シンガポール、香港どちらとも原則非課税となっています。

日本では原則20.315%が課税されてしまうため、これを理由に海外移住を決断する方も少なくないかもしれません。

なお、シンガポールでもトレーディング目的から生じるキャピタルゲインについては課税対象となる可能性があるため留意が必要です。

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シンガポール vs 香港 :贈与税・相続税

日本では最大55%課税される贈与税・相続税についても、シンガポール・香港ともに存在しません。

富裕層を誘致する都市国家として、贈与税、相続税を課税しないことは国家戦略として当然のことと思います。

シンガポール vs 香港 :消費税

シンガポールでは9%の消費税(GST)が課税されますが、香港では消費税はありません。税制比較をした場合、ここは大きな違いですね。

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さいごに

アジアのライバル都市のシンガポールと香港の主な税率について概観しました。現状では大きな相違はなく、やはりアジアのハブとして企業やウェルスを誘致するために税率もコンペティティブに維持しているのではないでしょうか。

それにしても、やはり日本との税率の差は大きいと言えそうですね。

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