シンガポールで注目のスタートアップ企業を紹介・分析する企画です。
今回はオンライン中国語クラスを提供するプロバイダー「LingoAce：リンゴエース」。
2021年にはシリーズCラウンドで1億6,000万USDを調達しており、急成長中の中国語学習アプリとなっています。
LingoAceの企業概要、ビジネスモデル、成長ポイントについて見ていきたいと思います。
シンガポールはスタートアップのパラダイス シンガポールはスタートアップ企業のパラダイスです。 数々のビジネス系世界ランキングにおいてトップ圏内にランクインしているとおり、シンガポールは世界でも有数のビジネスのしやすい国となって[…]
LingoAceとは？
LingoAceは、2017年、Hugh Yaoによりシンガポールで設立されました。
オンラインで4,000人以上の教師をかかえ、100以上の地域の生徒にオンライン中国語サービスを提供しています。（執筆時現在）
創業者のHugh Yaoは、従来型の語学学習（暗記をメインとして、対話型ではない勉強方法）が非効率である点に目をつけて、最新のテクノロジー、少人数、クリエイティブで高品質なコンテンツ、ゲーミフィケーション、双方向性、ネイティブスピーカーの教師などを活用することで、効果的効率的に中国語を身につけるサービスを開発しています。
2020年以降、同じASEAN内のインドネシア、タイのほか、中国、さらには米国ロサンゼルスやシリコンバレーに事務所を開設し、会社は急成長しています。
LingoAceのビジネスモデル
LingoAceのビジネスモデルは伝統的なもので、会員登録をし、自分の語学レベルに合ったコンテンツを消費するというもの。利用料は受講1回あたりの単価払いとなっています。
個人レッスンでは1時間あたり42シンガポールドル（2,500円程度）と、語学学校に比べても格安です。
LingoAceの成長ポイント
LingoAceが急成長している理由は次の3つが考えられるのではないかと思います。
１．華人の中国語学習需要
東南アジアには多くの華人（華僑）がいます。これら華僑は各国の母国語を第一言語として学び、利用しています。たとえばシンガポール人であれば英語、インドネシア人であればインドネシア語、タイ人であればタイ語などです。
一方、多くの華僑はふだん家庭や親族とは中国語で会話をするため、中国語の習得が必須となっています。東南アジアでは、複数の言語を操るバイリンガル、トリリンガルは当たり前です。
そのため、このような文化的背景を考えると、第２言語となる中国語をできるだけ効率的に学習したいという需要はおおきくあると想定され、LingoAceはこの需要をうまく取り込んでいると考えられます。
２．テクノロジーを利用した語学学習の革新
こちらはいうまでもありませんが、インターネット技術の発達により勉強の方法に革新が起きています。英語に関してはオンライン学習は当たり前となっていますが、中国語でも同じトレンドとなるのは当然です。
2020年以降はコロナパンデミックの影響もあって、ますますオンラインで学習する子供は増えており、コロナ後ではオンラインで学習することがスタンダードになると予想されます。
３．ゲーミフィケーション
LingoAceが大きく評価され、多額の資金調達を受けることができている大きなポイントとしてゲーミフィケーションを取り入れていることが考えられます。
ゲーミフィケーションとは、ゲームを目的としない活動に、ゲーム的な要素を取り入れることで、ユーザーのモチベーション向上やサービスへの熱中を高めることをいいます。
語学学習は、顧客ターゲットが6歳〜15歳で、メインが10歳以下の子供であることを踏まえると、ストーリー性あるゲーム感覚で学習を進められるインターフェースは非常に強力です。
ゲーミフィケーションを取り入れることで、「サービスへのロイヤルティ向上→学習成果の向上→さらなるロイヤルティ向上」という好循環が生まれているのではないでしょうか。
さいごに
アジアの経済成長を背景に、日本人の中でも中国語を学習する人が増えています。
留学には多額のお金がかかるし、コロナで気軽に行けないしという状況の中、このようなオンライン中国語学習サービスを日本人が使ってみるのも良いのではないでしょうか。（英語→中国語の教材のため、英語の学習にもなりますし。）
AI技術の発達により翻訳サービスの性能が急激に発達しているものの、人の口から発せられる「生の声」が大事であることは今後も変わらないと思います。感動を与える歌声や演説、優しさ、怒り、、、「生の声」でなければ人の心は動かないと考えます。
中国語学習サイトのLingoAceは今後も注目していきたいと思います。