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【ASEAN経済レポート】「冬の時代」におけるASEAN地域のスタートアップ(日本総研)。

ASEANのスタートアップに関する最新レポート(日本総研、24年9月)です。

10年代から盛り上がってきたASEAN地域でのスタートアップ投資も、22年以降「冬の時代」と称されるような厳しい状況になっていることが報告されています。

ASEANのスタートアップの廃業事例やその分析、近年のスタートアップ投資についてかなり詳細なレポートとなっておりASEANでスタートアップ投資を検討している企業に有益なレポートとなっています。

日本総研

日本総合研究所は、システムインテグレーション・コンサルティング・シンクタンクの3つの機能を有する総合情報サービス企業です…

ピックアップ

世界およびASEAN地域のスタートアップ投資の現状

・世界のスタートアップ投資は、特に2022年以降、金融引き締めの影響を受けて急激に減少した。この急激な減少は、主に世界的な金融引き締めが原因とされている。

・ASEAN地域も同様の影響を受け、スタートアップ投資が調整期に入る。2010年代初頭にはほぼゼロの状態から急激にスタートアップの立ち上げが活発も、2022年以降の調整期により大幅に抑えられ、多くの企業が廃業に追い込まれる結果となっている。

スタートアップ廃業の要因

・ASEAN地域におけるスタートアップ廃業の主要な要因は、「現金が枯渇/資金調達に失敗」「市場ニーズなし」「競争に敗北」などが挙げられる。

・また、「市場ニーズなし」や「ビジネスモデルに不備」といった要因も、廃業の重要な原因となっている。多くの企業は、革新的なサービスやプロダクトを提供しようとするが、市場の需要と一致しないことが多く、結果として事業の存続が難しくなっている。

社会課題解決型スタートアップの廃業

社会課題解決型のスタートアップも、一般のスタートアップと同様に廃業が相次いでいる。

・ASEAN地域は金融包摂や都市と地方間の格差といった社会課題を解決しようとするスタートアップも多く輩出。しかしビジネスモデルの不備や価格設定、顧客ニーズの不一致などにより、多くの企業が廃業に追い込まれている。

(具体的な事例)

農家向けのP2Pレンディングを提供するTaniFund

零細店舗向けにB2Bマーケットプレイスを提供するUla

成長が期待されるスタートアップ

・一方で、調整期にもかかわらず引き続き投資家から高く評価されているスタートアップには、依然として投資資金が流入している。

これらの企業は、調整期を経て筋肉質な経営体質を築き上げ、「攻めの経営」に転じることが期待、特に人口増加とそれに伴う経済成長が今後も続くと予想されるASEAN地域では、成長の余地が大きいと見られる。

(具体的な事例)

クリーンテック分野

日本企業の役割

日本企業は、ASEAN地域の成長を取り込むために、スタートアップとの業務提携や投資を進めている。

・中国や韓国など、他国からも同様の動きが見られ、優れたスタートアップを巡る競争が激化。

・日本企業がこの競争に勝つためには、スタートアップが魅力を感じるような支援や提案を行うことが重要。

今後の展望

・ASEAN地域のスタートアップ市場は、現在調整期にあるが、将来的には再び成長基調に戻ると期待。

・特に、クリーンテック分野や環境関連のスタートアップが今後の成長エンジンとなる可能性が高い。

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