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【書評・レビュー】シンガポールは「砂上の国家」。砂の全てがわかる新書「砂戦争」。

シンガポール湾岸地域の埋め立てで、インドネシアの島ひとつが消滅した。

これは、シンガポールに住んでいると必ず1度は聞く都市伝説 ? ではないでしょうか。

実際のところどうなのか、この疑問に応えてくれるのが、角川新書「砂戦争」。

著書は、朝日新聞記者から国連組織、東大などの教授歴任、ザンビア特命全権大使などを努めた石弘之氏。

本書によると、砂は主にコンクリートの原料になり、砂の市場規模は世界で約700億ドル、産業ロボットの市場と同規模。世界中において巨大ビルの建設ラッシュとなっており、砂の需要が増え続けているとのことです。

実際、現在採掘されている地下資源料の85%が「砂」といわれるそうです。砂は知らないところで僕らの生活を力強く支えています。

こんな大事な砂ですが、20世紀の人口爆発による都市の膨張により、砂資源は逼迫しているということ。

著者は本書において、世界の各国における「砂」にまつわる歴史を詳述し、現在の人類が置かれている「砂」資源への危機に警鐘を鳴らします。

普段あまり意識することのない「砂」について、特に本記事ではシンガポールに関する情報について紹介したいと思います。

25%拡大したシンガポールの国土

本書によると、シンガポールは2018年度において砂輸入額で世界1位とのこと。

国際貿易センター(ITC)によると、2018年の砂輸入額のトップ5は、①シンガポール②カナダ③オランダ④ベルギー⑤UAEと紹介されています。

要はシンガポールは砂をかき集めて国土を拡大させてきた「砂上の国家」。

1965年の独立以来、埋め立てによって国土面積は従来の4分の1も拡大しています。

かの有名な「ラッフルズホテル」は、ビーチロード沿いにあり、植民地時代の1887年開業当時には宿泊客は目の前の砂浜で水泳を楽しむことができたそうです。

たしかに、シンガポールにやってきて、「ビーチロード」なのに全くビーチ感がないことに疑問を抱く方は多いのではないでしょうか。

現代ではビーチロードから数キロにおいて埋め立てられ、その埋立地はマリーナベイサンズなどシンガポールを代表する中心地となっています。

また、2018年現在でシンガポール全国民の8割が公共住宅に入居しているとのことですが、それでも新たな住宅建設の土地が足りず、現在でもシンガポールは経済的発展を維持するために国土の拡大は不可欠だと述べています。

実際、マリーナ・ベイや西方のジュロンなど、現在でも埋め立て計画は着実に進められていますね。

(SO: MOTHERSHIP)

シンガポール国家戦略としての「砂」

この国の発展には砂と労働力を近隣国から集めるのが必須の条件だ。

かつて、建国の父リー・クアンユーはこのように演説したようです。

その方針に従いたしかにシンガポールは砂と労働力を集め、未曾有の発展を遂げました。

世界最高の空港と名高いチャンギ空港や、世界トップ3の石油取引・精製ハブのジュロン島など、砂による埋め立てで完成しています。

このチャンギ空港が完成した1980年代初期には国内産の砂をほぼ使い果たして、大規模な砂の輸入に転じ、ここから世界最大の砂輸入国家となっています。

シンガポールと砂を巡る軋轢

シンガポール発展の生命線であった「砂」ですが、やはり大量の砂輸入により、近隣国の強い反発を招くことになったようです。

インドネシア、マレーシア、ベトナムなど砂を輸出してきた国が、輸出を制限または禁止し、最大の砂輸入先であったインドネシアの規制はシンガポールに衝撃を与えたとのこと。

「シンガポールのため、インドネシアの島1つが消滅した」というのもあながち都市伝説ではなかったようです。

実際、Wedge Onlineの記事によると、シンガポールの砂輸入でインドネシアの24の島が消失したとあります。

この禁輸を教訓として、その後シンガポールは砂の国家備蓄を進め、砂を石油なみの戦略的資源と考えているとのことです。

さいごに

著者は、砂を大量に消費する現代の人類に対して警鐘を鳴らします。

私たちは木材、水、水産物などすべての天然資源を使いすぎており、砂もそのリストのひとつに過ぎない。これからこの惑星に住む人達が生きていくためにも資源が必要だ。〜地球が再生できるよりも多くの資源を、人間が消費していることは確かだ。私達が消費生活を享受した分、そのツケは未来の子か孫が背負わなければない。

シンガポールに関していうと、確かに砂を輸入することで国土が拡大し、キラキラしたマリーナ・ベイ・サンズのようなものが出来ることは、観光客を呼びこんで経済を発展させていくことは重要です。

その一方で、自然のままの砂がある、インドネシアの原生諸島を残していくことも人類にとって非常に意味がある。

現代の僕らは、ここらへんの兼ね合いを問われているのかもしれません。そんな事を考えさせられる良書でした。

(砂にかわる代替素材を開発したら売れそうですね。。)

砂戦争」目次

第1章 砂のコモンズの悲劇

第2章 資源略奪の現場から

第3章 砂はどこから来たのか

第4章 砂マフィアの暗躍

第5章 白砂青松はどうしてできたのか

第6章 今後の砂問題

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