シンガポールに上場している不動産投資信託(REIT)である Keppel Pacific Oak REIT(SGX:CMOU)が、2022年度の決算(1月〜12月の12ヶ月)を公表しました。
Keppel Pacific Oak REITは、米国に14のオフィスを保有するオフィスリートで、特に成長著しいテクノロジー、メディアや情報産業が集積し、人口流入が加速している米国都市にフォーカスします。
2022年度は前年比で若干の増収減益という内容で、厳しい利上げ局面においてはまずまずの決算内容だったと思います。2023年2月8日の決算発表後、Keppel Pacific Oak REITの株価は下落後、多少持ち直している感じです。
Keppel Pacific Oak REITの概要については、以前記事で紹介しているので、今回は業績のアップデートを中心に見ていきたいと思います。
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一口あたり分配金(DPU)の状況
株価及び配当金というかたちで投資のパフォーマンスに重要な影響を与える一口当たり分配金(DPU: Distribution per unit)は、2022年下期において同期比で3.18セントから2.78セントへ12.6%減少という結果でした。
この減少の主な理由として、REITマネージャーが、2022年第2四半期以降マネジメント費用の100%を現金で受け取ることを選択したためとしています。
2022年下期の売上高は、前年同期比で1.4%の増収となっており、コロナから回復基調であることが見てとれます。
投資資産の状況
2022年度末における物件占有率は92.6%で好調です。
Keppel Pacific Oak REITが特徴とするテックやメディカルなどの成長産業地域に特化するという方針がうまくいっているのかもしれません。
テナントも広く分散されており、加重平均リース期間も4.7年と、しばらく安定しそうです。
また、2022年度に8.1%の更新があり、更新賃料は3.8%増と報告されています。
財務の状況
米国は歴史的な金利上昇局面であり、負債の利息負担の影響が気になるところです。
この点、負債利息は3.2%で、利息面における安全性指標のインタレスト・カバレッジ・レシオは4倍と、利益が利息の4倍をカバーできている結果となっています。
「リートの負債÷リート資産」の比率で表すギアリング比率は38.2%と、シンガポールが定めるギアリング比率50%を下回っており安全圏です。
負債の77%がヘッジされており、2024年第4四半期まで負債の借り換えはないため、健全なバランスシートと言えそうです。
投資資産の評価額についても、適切な設備投資の成果もあり金利上昇による評価額下落を吸収して是期末比2.2%の上昇となっています。
さいごに
一株あたり配当(DPU)が減少し、株価も厳しい状況となっているKeppel Pacific Oak REITですが、今回の決算発表を受けてアナリストは以下のようなコメントを出しています。
・困難なオフィス市場下、運用資産は引き続き堅調
・ギアリング比率は40%未満で「快適水準」
・小規模リース需要は堅調、高い占有率維持できる
“Operational numbers remained strong despite very challengin…
利回りは依然10%程度と高どまり、純資産倍率(株価/純資産)も0.7と1を割っており魅力的なS-REITには変わりはありません。
ただし、米国のさらなる利上げ、また物件占有率の低迷からくる投資物件の評価減により、ギアリング比率が上昇、追加資金調達が困難になることや物件売却を迫られるリスクも残ります。
引き続き米国の利上げの状況をにらみながら慎重に投資することが求められそうです。
なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、よろしくお願い致します。