【シンガポール・リート銘柄】Keppel Pacific Oak REITについて考察。

シンガポールREIT(不動産投資信託)は、高い配当利回り比較的堅調な値動きが特徴でおすすめです。

特にシンガポール在住者は、売却益や配当金が非課税のため、高い投資リターンを期待でき、投資を検討する方も多いのではないでしょうか。

当記事では、米国のオフィス施設に特化したリートのひとつ Keppel Pacific Oak REIT(SGX:CMOU)について紹介したいと思います。

Keppel Pacific Oak Reit (SGX:CMOU)は、2017年にシンガポール証券取引所に上場した、米国内に14のオフィス施設を保有するオフィスリートです。特に成長著しいテクノロジー、広告、メディア、情報産業が集まり人口流入が加速している米国都市にフォーカスしています。

Keppel Pacific Oak Reitの株価推移は以下のとおりとなります。

(Source: Yahoo finance)

それでは、以前の記事で紹介した「シンガポール・リートを選ぶ際のポイント」8項目に沿ってそれぞれ分析していきたいと思います。

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最新の決算報告は以下の記事をご参照ください。

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1. 物件のポートフォリオ

リートがどのような不動産を保有するか、Keppel Pacific Oak Reitの物件ポートフォリオについて確認してみましょう。

Keppel Pacific Oak Reitは、2022年3Q時点で米国内に、計14物件を保有します。

(Source: 2022 3Q Key business and operational updates)

その内訳は、西海岸のシアトルに3物件、カリフォルニアに1物件、その他は南部に7物件、内陸のコロラドに1物件となります。

(Source: 2022 3Q Key business and operational updates)

各米国州の収入割合に見ると、シアトルが最大で42.2%、デンバーが15%、ヒューストン10%、ダラスが8.9%と続きます。

業種別では、TAMI(技術,広告,メディア,情報)の39.7%を筆頭に、プロフェッショナルサービス21.8%と続きます。

2. スポンサー

スポンサーとは、リートの資産を運用する会社(資産運用会社)の大株主です。

Keppel Pacific Oak REITのスポンサーは、シンガポールを代表する投資コングロマリットであるKeppel Group傘下の資産運用会社であるKeppel Capitalです。

資本力の豊かなスポンサーに運用された不動産リートであり、信頼性は高いと言えそうです。

3.  一口当たり分配金(DPU)と配当利回り

執筆時現在のKeppel Pacific Oak Reitの年間一口あたり分配金(DPU)は0.0772ドル、株価は0.54ドルとなっていますので、直近の年間配当利回りは10.39%程度となっています。

最近1年の推移では7.85% 〜8.68%程度となっており、かなり割安な配当利回りではないでしょうか。

(Source: Investing.com)

コロナによるリモートワークの普及で、オフィスの需要が不透明となっていることで、株価が割安のまま様子見され、配当利回りが高まっていると考えられます。

4. テナントの状況

Keppel Pacific Oak Reitの直近のテナント状況は以下のとおりです。

(Source: 2022 3Q Key business and operational updates)

Comdata IncがCRI(キャッシュ賃貸収入)の最も大きなクライアントで3.5%と、クライアントベースは多様化されており顧客リスクは分散されているといえます。

入居率 (Occupancy rate)

上記の物件ポートフォリオで掲載した図に記載がありますが、物件の入居率は概ね90%以上、ただし14物件中5物件が90%を下回り、うちアトランタの物件は68.6%と低い入居率となっています。

2023年の米国景気後退が囁かれる中、入居率の低い物件について、新しいテナントを入れることができるかがポイントとなりそうです。

加重平均リース満了期間 (Weighted Average Lease Expiry)

Keppel Pacific Oak REIT の2022年度3Qにおける加重平均リース満了期間は4.5年です。通常、事業の賃貸契約は3年〜で、3年を下回ると現状のテナント契約を更新できていないと考えられ、リートの将来の収益性の低下につながります。

加重平均リース期間は5年超が望ましいですが、4.5年は及第点といえそうです。

また、全物件の加重平均リース残存期間は4.5年と、まだしばらく収入は安定しそうですが、リース満了後に契約を更新できるかがポイントとなりそうです。

5. ギアリング比率

リートのギアリング比率とは、「リートの負債/ リート資産」の比率であり、リート資産の取得に対する外部負債の割合を表すものです。Average leverage (平均レバレッジ)とも呼ばれます。

2022年1Q におけるKeppel Pacific Oak Reitのギアリング比率は37.5%です。シンガポール金融庁(MAS)によるギアリグ比率規制の50%を大きく下回り、健全な水準と言えます。

また、Keppel Pacific Oak Reitは、負債総額に対する固定金利負債の割合を76.8 %と報告しており、利上げに対して一定のリスクヘッジをしています。

(Source: 2022 3Q Key business and operational updates)

開示資料では変動金利の50bp (0.5%)の上昇で年間の一株あたり分配金(DPU)が0.067セント減少すると記載されており、1%程度の影響です。

金利上昇の影響を受けにくい、安定した財務状況といえます。

6. 財務コスト

リートの財務コストは主に物件取得の借入金に対する支払利息です。財務コストについてはインテレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)で確認することができます。ICRとは、「収益/支払利息」で算定することができ、数値が高いほど財務コストが低く安全性が高いことを示します。

Keppel Pacific Oak REIT の2022年度1QにおけるICRは4.4倍です。

シンガポールのメガバンクDBS銀行の2022年3月の記事によると、シンガポール・リートの平均ICRは4.9倍程度報告されており、平均より健全な財務コスト水準といえます。

7. 株価純資産倍率 (PBR)

株価純資産倍率(Price Book-value Ratio: PBR)は、REIT株価(一口当たり投資額)を一口当たりの純資産価値(Net Asset Value: NAV)で割った値です。

PBRが1より大きい場合は、REITが純資産額に比べて大きく評価されている一方、1を下回る場合は評価が低いことを示します。

執筆時現在のKeppel Pacific Oak REITのPBRは0.64で、Industry平均0.87より低い数値で、割安水準です。

Keppel Pacific Oak REITは米国のオフィス需要の不透明さを反映してか、保有する物件資産の価値に比較して割安の株価で評価されているといえそうです。

8.成長戦略

最後に、Keppel Pacific Oak REITのDPUが今後も増加していく可能性があるか、Keppel Pacific Oak REITの成長戦略について確認したいと思います。

開示資料には、米国の中でも急成長している都市に引き続き注視することが記載されています。特に、TAMI産業、メディカル、ヘルスケアセクターに言及しています。

(Source: 2022 3Q Key business and operational updates)

Keppel Pacific Oak REITの投資する米州の向後1年間の賃貸市場成長率は2.3%と見積もっており、米国平均の0.4%を上回っています。特に米国の主要地域であるニューヨーク、サンフランシスコ、ボストン、シカゴ、LAの平均は0.2%とされており、「次に発展する可能性の高い都市」にフォーカスしています。

さいごに

Keppel Pacific Oak REITは、米国の成長が期待できる都市に不動産を投資するリートで、足元の配当利回りは10%を超えており魅力的に見えます。

ただし、今後の米国経済オフィス需要の回復金利の水準に注意が必要です。このどれかがネガティブな方向に進んだ場合は、配当金が減少して配当利回りが低下するリスクを含んでいます。

今後の米国リート市場について引き続き注目していきたいと思います。


 なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、何卒よろしくお願い致します。

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