シンガポールでは、就活生にとってどのような企業が人気なのでしょうか。
世界大手の教育系メディア企業GTIのシンガポール法人であるGTI Singaporeは、毎年シンガポール版「就職したい会社ランキング」を発表しています。
このランキングは、シンガポールの大学を卒業した学生及び新入社員に対して実施され、2020年度は13,900人を対象に2020年6月〜2021年2月の間で調査を実施しています。
シンガポールではどのような企業が人気なのか、見ていきたいと思います。
2021年度シンガポールの就職したい企業ランキング
2021年度はトップ100が公表されていますが、上位20社は以下のとおりとなっています。
海外の駐在員は、現地スタッフに比べて高収入、高待遇で赴任してきます。 多くの日本企業は、これを当然の前提としていますが、海外現地法人のローカルスタッフは、日本人駐在員についてどのように評価しているのでしょうか? この興味深い質[…]
シンガポールの就職したい企業ランキングの特徴
私見とはなりますが、シンガポール版「就職したい会社ランキング2021」の傾向について考察したいと思います。
1.政府系組織が上位にランキング
2位にランクインした教育省(Ministry of Education)、4位の保健省(Ministry of Health)をはじめ、政府省庁が上位にランクインしています。
日本でも公務員は人気の就職先ですが、それは「安定している」という保守的な理由が大半だと思います。
一方のシンガポールの場合は、安定しているということもありますが、それ以上に官僚としての仕事のやりがいや、優秀な上司・同僚と働ける職場環境などが人気の秘訣ではないでしょうか。
官僚の給与も民間企業をベンチマークに決定されており、優秀な人材は、その能力に見合った高給を得ることができることも人気の理由です。
2.Eコマースの会社が急上昇
6位にShopee、7位にAmazonなどEコマース会社が急上昇。Shopeeは東南アジアのAmazonとも言える存在ですが、昨年度の40位から急上昇しています。
このランキングは、Eコマースが身近に利用されるようになったこと、さらにはコロナ下のような緊急事態においても順調に業績を伸ばすことができることが評価の理由でしょう。
ちなみに調査を実施したGTI Media Singaporeのマネージング・ディレクターであるIsaac Heeは、以下のようにコメントしています。
「シンガポールにおけるテック企業の社員は、外国人が多くなっている一方、シンガポール政府はローカル社員の採用を推奨していることから、テック業界で働きたいシンガポール人にとっては良いタイミングである」
今後ますます多くの若いシンガポール人がテック企業を目指すのではないでしょうか。
3. 日本企業は100位圏外
残念ながらトップ100には一社も日本の企業は入りませんでした。
親日国のシンガポールでは、まだまだ日本の製品や文化は人気なのですが、働くとなると別のようです。
シンガポール人の友人曰く、以下の理由により日系企業は避けられがちと聞いたことがあります。
②英語が流暢ではない(日本人同士は日本語で話す)
③欧米系外資に比べて給与が低い
④飲み会など日本的労働文化を押し付けられる
⑤上司となる駐在員がコロコロ変わる
シンガポールでの事業を拡大するためには、優秀な人材の採用が欠かせません。
上述のIsaac Hee氏は、シンガポール学生が職場を選ぶ基準として次の5つがあると述べています。
2.優秀な上司の下で働けること
3.公平な機会
4.個人的な成長
5.ワーク・ライフバランス
日本の会社も社内文化や人事制度の改革、学生への積極的なアピールを通じて「就職したい会社ランキング2021」に登場できるくらいイメージを向上に取り組む必要があるのではないでしょうか。
2022年度のシンガポール企業ランキング
2022年度のシンガポール就職したい企業ランキングは、A☓STARが1位となりました。
A☓STARは「Agency for Science, Technology and Research」略で科学・技術・研究に関する政府系機関です。
バイオやゲノム、再生技術やAI、IoTなど時代の最先端かつシンガポール政府が最も重視する領域をカバーすることが1位となった要因ではないでしょうか。
その他、前年1位でテック業界の巨人であるMicrosoftが2位、シンガポール発EコマースのShopeeが3位、アマゾン(9位)、TikTok(11位)など、テック企業が人気です。
さらにシンガポールの特徴である、政府組織人気は相変わらずで、6位に教育省、8位に厚生省がランクイン。
もちろん、アジア国際金融都市の面目躍如、地元メガバンクのDBS(4位)、投資銀行の雄J.P.Morgan(10位)が続きます。
なお、残念ながら2022年度もトップ100に日系企業はランクインしませんでした。