シンガポールで注目のスタートアップ企業を紹介する企画です。
今回は、モバイルウォレットを提供する「YouTrip」。
YouTripのサービスでは、多国籍通貨の取引を低コストで決済することを可能にするオンライン・バンクです。
執筆時現在、すでに世界で150万ダウンロードを記録し、8億ドルを超える支出を処理しているとのことです。
2021年11月には、シリーズAラウンドで30百万米ドル(約34億円)を資金調達しています。
YouTripの企業概要、ビジネスモデル、成長ポイントについて見ていきたいと思います。
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YouTripとは?
YouTripは、2016年10月に、シンガポール人であるCaecilia Chuに設立された、多国籍通貨の決済フィンテック企業です。
大手クレジットカードのMastercard(マスターカード)、Visaとパートナーシップを締結し、Mastercard、Visa加盟店での国境を超えた外貨取引について、手数料ゼロで取引することを目指します。
現在150以上の通貨に対応し、24時間対応、為替手数料ゼロで支払いを行うことができます。
YouTripのビジネスモデル
メインとなるYouTripアプリの利用方法は簡単で、以下の3ステップで簡単に利用することができます。
②必要な通貨へ為替両替
③YouTripカード(店舗での支払)または、アプリ(オンライン支払)で支払い
YouTripはアプリダウンロードの他、Mastercardとタイアップしたクレジットカードを発行することができ、海外で必要な場合はATMからキャッシュを引き出すことができます。
YouTripの価格モデル
YouTripの価格モデルは、無料モデルです。
ユーザーはYouTripの利用に関して、為替手数料はもちろん、年間費や手数料は一切かかりません。
(ただしVisaのクレジットカード利用は年1.5%。MastercardやVisaのデビットカードは無料。)
ユーザーへの手数料を無料とするため、YouTripは販売店側に対して少額の手数料をチャージします。
YouTripの成長ポイント
YouTripが急成長している理由は、次の3つが考えられるのではないかと思います。
1.コロナの逆境を活かす
もともと、YouTripのメインターゲットは海外旅行者でしたが、コロナの流行で創業当初の目論見が外れてしまいます。
ところが、YouTripはこの逆境を生かして、旅行客以外の潜在需要を掘り起こします。
たとえば、オンラインショッピングにおいてキャッシュバック等のリワードを受けることができる「YouTrip Perks」などの新機能を導入。これで旅行以外のオンラインショッピング決済でもプレゼンスを発揮することに成功しています。
2022年あたりからは、アフターコロナでの旅行需要が回復、むしろコロナ禍の2年間で蓄積された潜在的な旅行需要は急拡大することも想定されます。
メインターゲットである個人旅行客の利用が戻れば、YouTripは大きく成長することが期待できます。
2.B to Bに拡大
海外旅行者に頼らないもう一つの施策として、2022年より法人カードビジネスである「YouBiz」を導入する予定です。
これは、従業員1,000人以下の小中規模の企業向けサービスで、中小企業の外貨取引に係る費用を削減することができます。
また、出張が再開された際に需要が期待できる経費管理ツールの導入も予定されています。
3.高いブランド認知
オンラインショッピング決済に参入したことが奏して、YouBizの対象となるような中小企業オーナーの間で、すでにYouTripの認知がある程度広まっているとのこと。
今後、ビジネスを拡大していく上で、高いブランド認知は武器になります。
YouTripに関する主なニュース
2021年11月:シリーズAラウンドで30百万米ドルを資金調達