シンガポールで注目のスタートアップ企業を紹介する企画です。
今回は、企業の資本政策を管理するプラットフォーム「Qapita」。
主にスタートアップ企業向けのソフトウェアで、
・企業の資本政策管理
・従業員持株会(ESOP)管理
・デジタルESOPの発行
などを行うことができます。
2021年10月に、East Ventures及びVulcan Capitalより15百万米ドルを資金調達しています。
Qapitaの企業概要、ビジネスモデル、成長ポイントについて見ていきたいと思います。
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Qapitaとは?
Qapitaは、2019年に、インド人であるRavi Ravulaparthiに設立された、スタートアップ向けの資本政策管理プラットフォームを提供する企業です。
Qapitaは、スタートアップ企業にとって複雑になりがちな、資本政策やストックオプション、従業員持株会を管理するソフトウェア製品を提供します。
Qapita創業の目標として創業者のRavi氏は、
「スタートアップによる株式の発行をよりシンプルにすることで、インド・東南アジアのスタートアップ・エコシステムに流動性と投資をもたらすこと」
としています。
執筆時現在、インドネシア、シンガポール、インドのスタートアップを主なターゲットとして事業展開しています。
Qapitaのビジネスモデル
Qapitaでは、次のような機能を使うことができます。
① 資本政策表(キャップテーブル)をデジタル管理
資本政策表(キャップテーブル)をプラットフォーム上で管理することができます。経営陣の承認機能や、変更履歴機能、また必要に応じて専門家への問い合わせも行う事もできます。
② 従業員への株式発行と取引管理
従業員持ち株会(ESOP)のプランニングを設定し、実際に株式の付与、必要書類の生成を行うことができます。
③ シナリオ管理
資本に関わる財務モデリングや、権利希薄化の計算、タームシートの比較など、資本政策の複数シナリオを検証することができます。
この他にも、法務デューディリジェンスへの対応やデジタル株券の発行、利害関係者とのリレーション機能など、追加の機能が開発されています。
Qapitaの価格モデル
価格モデルはサブスクリプションです。
具体的には、資本政策に関わる人(Stakeholders)の数により、1ヶ月59ドル(100人まで)、または150ドル(200人まで)となっています。
200人を超える場合は、クライアント毎に個別の月額価格を設定することになります。
Qapitaの成長ポイント
Qapitaが急成長している理由は、次の3つが考えられるのではないかと思います。
1.資本政策はますます重要になる
世界中で優秀な従業員の獲得競争が激化しており、ストック・オプションや従業員持株会は、従業員を引きつける魅力的なツールになっています。
効果的な資本政策の立案、管理を簡単に行うことができるQapitaのようなプラットフォームは、今後スタートアップにとってなくてはならないサービスになるかもしれません。
2.資本政策は複雑
資本政策は各国の法律、税制に従って設計する必要があります。
この規制は日々変化するものであり、企業が個別に管理するには、法律専門家やコンサルタントを使う必要がありますが、これには高いコストがかかります。
Qapitaのように、国ごとにクラウド化することで最新の規制にアップデートすることができれば、ユーザー企業にとってリーズナブルな金額で資本政策を実施することができそうです。
3.アジアでの競合
資本政策管理プラットフォームとしては、すでに米国サンフランシスコ発のCartaや、Pulleyなどがありますが、アジアでは強力な競合企業はいません。
米国ですでに同種の成長企業があり、資本政策管理プラットフォームへの需要は確認できていますので、アジアでシェアを取ることができれば大きな成長が期待できそうです。
Qapitaに関する主なニュース
2021年4月:MassMutual Ventures等より500万米ドルの資金調達
2021年10月:East Ventures等により1500万米ドルの資金調達
2021年12月:シティバンクとパートナーシップを締結