シンガポールで注目のスタートアップ企業を紹介する企画です。
今回は小売・零細企業向けPOSシステムを提供する「Qashier」。
2021年12月には、ベンチャーキャピタルのExorSeedsより470百万米ドルの出資を受け、資金調達額は5.6百万米ドルに達しています。
Qashierの企業概要、ビジネスモデル、成長ポイントについて見ていきたいと思います。
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Qashierとは?
Qashierは、2019年2月に、Christopher Chooによりシンガポールで設立された、レストランや美容院、スパなどの零細小売企業向けにPOSシステム及びソリューションを提供するスターアップ企業です。
Qashierの提供するPOSシステムは、キャッシャー・レジとしての機能に加えて、テーブル管理の合理化や簡潔な支払方法、注文管理や在庫管理を行うことができます。
サービスローンチ以降、QashierのPOSサービスを利用するユーザーは急速に増加しており、会社設立後1年で加盟店は1,000店を超え、1億ドル以上のトランザクションを処理しているとのことです。(執筆時現在)
Qashierのビジネスモデル
Qashierのビジネスモデルは、POSデバイス及びデータベースのサブスクリプションモデルです。
従来の「レジ」的なPOSよりもスマートで使いやすく、導入コストもありません。利用方法も簡単で、導入後10分程度で従業員は利用できるとされています。
Qashierの価格モデルは、月額低額払いのサブスクモデルです。月28Sドルから利用できるので、小売業者には使い勝手が良さそうです。
Qashierの成長ポイント
Qashierが急成長している理由は、次の3つが考えられるのではないかと思います。
1.東南アジアのPOSソリューションに対する需要が急増
東南アジアの小売売上高が2021年に9,700億ドルを超える見込みであると報じられており、小売経済圏が拡大しています。
ところが、その一方で小売店舗のPOSシステムは古いままとなっており、Qashierは、東南アジアの小売業者に対して最新のPOSソリューションを提供することで、東南アジア経済の拡大の波に乗ることができます。
2.クラウドベースのサブスクリプションモデル
従来、POSシステムの導入には、高額の初期費用や運用コストがかかっていました。これは、機器やシステムの購入が必要である場合が多かったからです。
さらには、システムアップデートやメンテナンスの際にも保守費用がかかってしまい、売上の大きくない小売業者にとってPOSの導入は過剰な設備投資で割高となってしまいました。
一方、Qashierはクラウドベースとすることで、保守やアップデートをサーバー側で一括に行うことでユーザーの負担を最小限に抑えることができます。実際、ユーザーは1日1ドルからPOS端末を保有することができます。
3.QashierEatsでフードプラットフォームを狙う
Qashierは、2021年5月にQashierEatsを立ち上げました。
QashierEatsは、食品販売業者がほんの数分でオンラインストアを開設することができ、手数料無しで集配の注文を受け付けることができるサービス。
コロナで行動制限がある中で、飲食業界が収益を向上させるのに貢献しています。
フードデリバリーアプリは、シンガポールでもGrabFoodを筆頭に、FoodPandaやDeliverooなど競争が激しいものの、マーケットは大きくニーズも高いため、QashierEatsがフードプラットフォームの一翼を担うことができれば企業規模の拡大に大きく貢献することになりそうです。
さいごに
先進国では無人店舗の導入が進んでいますが、店舗管理をする人を削減するためには、POSなど業務をサポートするデバイスの性能向上が不可欠です。
米国発のSquareなど、次世代POSサービスにはすでに先行事例がありますが、東南アジアにローカル化することができればQashierが大きくシェアを取る可能性があるのではないでしょうか。