2021年11月に開催されたシンガポールのフィンテック・フェスティバル(Singapore Fintech Festival)において、シンガポール金融庁(MAS)のマネージング・ディレクターであるラヴィ氏が「The Future of Money, Finance and the Internet」と題して、シンガポールの通貨、フィンテックの未来について講演しました。
シンガポール政府のデジタル通貨やフィンテックに対する姿勢を知ることができますので、当記事において重要な内容を要約しておきたいと思います。
詳細や正確な内容については、原文を参照してください。
暗号通貨はお金か?
交換の媒体、価値の保存、計量の単位として不十分であり、「お金(Money)ではない」という立場をとっている。
シンガポール金融庁では、暗号通貨は暗号トークンと呼称している。とくに支払いの目的で利用されるトークンは「デジタル決済トークン(Digital payment tokens)」と定義している。
マネーロンダリング防止及びテロ資金管理のため、デジタル決済トークンはシンガポール金融庁のライセンスが必要であり、監督下に置かれる。
暗号通貨に対する見解
暗号通貨の価格は、経済的ファンダメンタルズに裏付けされていないため、投機的な変動があり、トークンへの投資家は重大な損失を被るリスクがある。
ただしその一方で、潜在的な多くの利点もある。
所有権と価値移転の履歴を知ることができる点、中央機関の管理コストがかからない点であり、有望な使用例として、海外決済や貿易金融の促進がある。
この暗号通貨のリスクを担保しつつ、メリットを享受するトークンおいて、ステーブルコイン(Stablecoins) が出現している。
ステーブルコインへの見解
ステーブルコインは、法定通貨の信頼性とブロックチェーンの利点を組み合わせたもので、普及しているコインは米ドルに固定されており、準備金の裏付けがあるとされている。
ステーブルコインは潜在的に金融の安定に対するリスクをもたらす可能性がある。たとえば、ステーブルコイン発行者の準備金が急激に清算された場合に、金融市場にリスクが伝染する可能性がある。
シンガポール金融庁では、当該分野での実験を奨励しつつ、監督下に置くことで問題が生じた際にはすぐに引き締めることができるようにしている。
中央銀行によるデジタル通貨
信頼性という観点から、中央銀行により発行される暗号通貨への関心が高まっている。シンガポール金融庁では、中央銀行発行の暗号通貨をWholesale CBDC(業者間の中央銀行デジタル通貨)とRetail CBDC(民間取引の中央銀行デジタル通貨)の2種類に分類している。
業者間の(Wholesale) CBDCは大きな可能性を秘めているが、民間が決済手段として利用することを想定していないため、ここでは民間(Retail) CBDCに焦点を当てる。
シンガポール金融庁がデジタル通貨を発行する理由は以下の3つになるであろう。
2.効率的、包括的な決済のエコシステムを促進する
3.シンガポールの決済環境において、私的なステーブルコイン、外国CBDCに侵害されることを軽減する
グローバルなデジタル通貨が普及すると、国内の小売取引でシンガポールにとって代わる可能性がある。
一方で、民間CBDCは現在の金融安定性に重大なリスクをもたらす可能性もある。
シンガポールの中央銀行デジタル通貨は、以下の理由から喫緊のニーズではないだろう。
・シンガポールではすでに大部分が銀行口座を持っており、電子決済が普及している
・外国のデジタル通貨普及については、現状リスクが小さい
シンガポール金融庁としては、将来必要性が高まった場合に向けプロジェクト・オーキッドを開始しており、必要なインフラと技術を構築している。
DeFi (Decentralized Finance)について
DeFi(Decentralized Finance)とは、分散型ファイナンスのことであり、金融仲介業者を必要とせず、スマートコントラクトを使用して相互に直接金融取引を実行することである。
DeFiは大きな経済絵t期、社会的利益をもたらす可能性がある。中央の管理者、仲介業者を必要としないオープンネットワークは、資金調達コストを削減することができる。
一方で、DeFiには、リスクと脆弱性がある。ガバナンス、セキュリティ、復元力である。すでに市場の価格操作が行われたり、アカウントが流出するなどの問題がある。
DeFiが実現した場合には、既存の規制枠組みを適応させる必要がある。シンガポール金融庁では、リスクを管理しながらメリットを活用することを試みる。金融業界、広範なエコシステムと協力し、適切なバランスを見出す。
規制サンドボックスを利用して、ブロックチェーンとDeFiの実験を進めていく。
*規制サンドボックス:新しいビジネスモデルが、現行規制との関係で実施困難な場合に、社会実装に向け、規制当局の認定の下、地域限定、期間限定で現行法の規制を一時的に停止する制度。
さいごに
アジアの金融ハブとして、最先端の金融技術求められるシンガポールでは、デジタル・トークンやDeFiなどの最先端テクノロジーは、うまく取り入れて行くことが求められます。
そのため、今回の講演から、MAS監督下で、実験環境を整えながら慎重に社会実装していこうとする姿勢が読み取れます。
引き続き、シンガポールはフィンテック企業にとって魅力的な国ではないでしょうか。
Source: 「The Future of Money, Finance and the Internet」
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