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【書評・レビュー】ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか。(Excelデータ分析の可能性を再発見。)

今回は、ベストセラーになっているビジネス書「ワークマンは商品を買えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか」について紹介したいと思います。

すでに大手メーカーがマーケットを占有し、市場規模も縮小しているアパレル業界において、売上を大きく伸ばしているワークマンの秘訣を知ることができます。

特にAIやデジタル・トランスフォーメーション(DX)の導入が盛り上がっている昨今において、Excelを利用したデータ分析の重要性を説いている点に感動しました。

 

著者:酒井大輔 出版社:日系BP

 

「ワークマンは商品を買えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか」の概要

 

本書は、今飛ぶ鳥を落とす勢いアパレルブランド「ワークマン」の経営戦略を分析するもの。

経営戦略本というと、無味乾燥で難しい話が延々続く場合があります。

しかし、本書は単なる経営戦略書ではなく、三井物産退職後に招聘された土屋哲雄氏(ワークマン専務取締役)の入社後、様々な改革を行っていく様子をドラマ仕立てで記述しており、ストーリー小説のように読み進めるようになっています。

 

ワークマン

群馬県伊勢崎市に本社を置く東証JASDAQ上場のアパレル企業。現場作業員や工員向けの作業服及び関連用品の専門店として日本最大手。単独売上高は684億円(2020年3月期)。

なぜワークマンは売り方を変えただけで2倍売れたのか?

結論から言うと、ワークマンが成功した秘訣は、ここ数年で実施した様々な戦略が功を奏したことによるのかと思います。紹介されている戦略は以下です。

 

・善意型のサプライチェーン

・データ経営

・インスタグラマー等を利用した最先端の広報戦略

・独特なフランチャイズ戦略

・高機能で低コストな製品開発

 

これらの戦略は一つ一つとっても素晴らしく、十分売上の拡大に貢献すると思われますが、ワークマンが短期間で急激に成長したのは、全ての戦略が有機的に連動して、「1+1=2」以上の成果を上げたからでしょう。

当記事では、公認会計士という「金額データの分析」を生業としている筆者にとって特に興味深かった「データ経営」について深堀りしたいと思います。

ワークマンのデータ経営はExcelベース

本書の第二章「大躍進の裏にデータ経営あり」に、ワークマンによるExcel活用のデータ経営が解説されています。

データ分析というと、AIやデジタル・トランスフォーメーション(DX)など最先端の分析ツールを使っていると思いがちですが、ワークマン躍進に貢献したデジタルツールは、伝統的な表計算ソフト「Excel」でした。

ある程度の企業ならどこでもやっているような、小売向けのPOSデータ分析システムからExcel形式でデータをダウンロードし、エクセルの関数を使ってデータを加工の上、需要の変動を読み解いたり、適正在庫を推測したりする。このことでワークマンは売上を飛躍的に伸ばしています。

本書において、土屋氏は以下のようにコメントしています。

 

日々の販売データを見て異常値を発見したり、次にどんな手を打てばいいのか考えたりする力が身につけばいい。だから、うちには、突出したデータサイエンティストは必要ない

 

ワークマンでは、全社員に対するExcelデータ分析の講習を徹底し、昇進の基準もデータ分析力が重要な指標になっているようです。

その結果、社員の大多数が数字でものを考えることができるようになり、社員が自主的に経営分析ツールを開発するまでにもなっているとのこと。

話題のAIについては当面は導入しない考えのようです。猫も杓子もAI経営に邁進している昨今の状況から考えると、大胆な決断ともいえますが、それは深い意図に基づいています。

その理由は、AIは簡単に結果を出すものの、プロセスがブラックスボックスになっており、データ相互間の因果関係について教えてくれない、このせいで社員が考えなくなってしまう、ことを危惧しているからです。この例として、おむつとビールの話が述べられています。

 

スーパーでも、おむつとビールが売れていたからと言って、ビール売り場の横に、おむつなんか置かれちゃ困る。どうやったら売上につながるのかは、実験するしかない。相関関係があると言われたって、なんのビジネスにもならない

 

たしかに、AIがはじき出した結果だけを元に経営戦略を立てていたら、全く説明のつかないものになりそう。

将来的にはAIも進化して結果を導出したロジックを簡単に説明できるようなものも出てくるのでしょうが、それまではExcelなど原始的なツールを利用して自らアルゴリズムを組んだほうが色々と検証や実験をしやすいのでしょう。

さらに、ワークマンの昇進事情について土屋氏の発言を引用します。

 

社内の価値感が変わったので、分析できる人がかなりいいポジションにいくようになった。今まではコミュニケーションが得意な人が部長になっていた。店長に顔が広いとか融通が利くとか。今は違う。最適在庫をどう実現するかなど、データ分析できる人が部長になる

 

今後この流れはますます加速するのではないでしょうか。データやデジタルに強い若手社員が、成長しない、勉強しない古い社員に取って代わっていく。これができない企業は、衰退し退場せざるを得ないと思います。

さいごに

この記事では、データ分析の一部のみ紹介しましたが、本書では様々な興味深い戦略が紹介されています。そして全ての戦略に通じることは、

「常識を疑い、逆転の発想で本当に効果的な行動をとること」

ではないでしょうか。

なんでもかんでも世の中で話題になっているような先端のテクノロジーを導入するのではなく、本当に必要なもの・有効なものを取り入れていく。こういう姿勢が大事だと思いました。

本書で紹介されている全ての戦略は、非常に興味深いものとなっています。アパレル業界のみならず全ての業界で働く人にとって、売上拡大の参考になると思いますので、是非一読をおすすめします。

 

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