シンガポールの会計・財務アドバイザリー

『リアルが価値をもつ』近い将来における生存戦略。

バーチャル化が進む近未来で起きること

2020年より順次導入されている5Gの普及により、ますますサイバー空間のクオリティや効率性は上がると言われています。
5Gの特徴は、
「大容量」「低遅延」「多接続」
であり、例えば通信速度は現在の技術LTEの100倍、遅延は10分の1になると言われています。(5Gになると何がどう変わるのか?-Lifehacker
データダウンロード時間など圧倒的に早くなるでしょうし、(映画1本数秒でダウンロードデキるというレベル感)、また、無数のデバイスやモノにネットワーク機能が付与されることが予想されています。
現代でも既にバーチャルの世界をメインに生活している人は存在します。
任天堂の人気ゲームソフトの「集まれどうぶつの森」や、バーチャル世界で自由に動ける「マインクラフト」などが最近の流行りでしょうか。
オンラインゲームに生活の大半の時間を費やしている人は少なくないですね。
ゲームではなくても、ツイッター(Twitter)やインスタ(Instagram)が生活の中心的な活動となっている人も、若い世代を中心に増えてきています。
このような、バーチャル住人は、身体的にはリアルの世界に存在するものの、その精神は既にバーチャルの世界にいると言っていいかもしれません。
今後、5Gの普及でデータ速度も速くなり、ネットワーク化が進んでいくに連れ、サイバー空間のクオリティ、スケール、深度が向上、サイバー空間とリアル空間の垣根はますます曖昧となることが考えられます。
そして、効率的、安全、安易な空間であれば自然とそこに流されていくという人間の性質から、快適に広がったサイバー空間が生活の主たる場になることは十分考えられます。
たとえば、VRセットを頭にはめて「出社」し、サイバー上で同僚とミーティング、チャネルを切り替えるとクライアントのオフィスに入っていけて、そこで打ち合わせし、エクセルを開いて仕事をする、などなど。
既にオンライン上で多くのことが可能となっている以上、十分想像できるし、それが一般的になるまでは時間の問題です。
新型コロナウィルスの影響でテレワークが普及し、この流れが加速しています。
ZOOMEのグループチャットで会議をし、クラウド上で資料をチームメンバー全員で共有する、なんて当たり前の光景ですね。
今後、さらに進化してツールの精度が増し、より便利で快適にビジネスライフに溶け込んでいくことでしょう。
このような進化により、わざわざ満員電車にのって移動し、無駄な会議に体を運び、眠気をこらえてつまらない話を聞く、、みたいな非効率な仕事はなくなるはずです。
一方で、このような「バーチャルがメインとなった日常」においては、逆説的に「リアルが価値を持つ」という世の中がやってくるかもしれません。

リアルの価値 – 1. 言語

言語のバーチャル」というと、自動翻訳機が考えられます。自分で外国語を話さなくても、機械が変わりに話してくれる、という意味でのバーチャルです。
現在、AI技術を利用した自動翻訳機が数多くリリースされています。たとえば128カ国74言語に対応しているPocktalkなど有名です。
一昔前であれば、外国語をマスターした人材はかなり貴重な資源でしたが、今や外国語を知らなくても、誰でも外国人とコミュニケーションが取れてしまう時代
自動翻訳機を始めとするバーチャル言語装置は、5Gの導入でますます高性能になることは間違いないし、最終的には、このような自動翻訳機もスマホに取り込まれて誰でも利用できるようになるのではないでしょうか。
既にだれもが無料で利用できるGoogle翻訳のレベルも、2018年に機械学習のアルゴリズムを導入してから加速度的に成長しています。読み書きの次元では、ほぼ英語の障壁は無くなったと考えてもいいのではないでしょうか。日々大量の文字データがGoogleに入力されています。英語以外の言語については、いまのところまだ高い品質は達成できていませんが、データが蓄積されることで精度は上がっていくため、時間の問題でしょう。
それでは、外国語の習得は意味がなくなったと言えるのでしょうか。
私はそうは思いません。人と人が本当に理解するためには、リアルなコミュニケーションで、生身の触れ合いが欠かせないからです。
自動翻訳機から発せられる機械的な声」と、「感情のこもったナマの身体から発せられる声」では、相手に与える印象は全く異なるでしょうし、大事な場面になればなるほど、「感情を伝えること」が重要です。
バーチャルの技術が発達することにより、逆に「リアル」の希少価値はますます上がるという少しアンビバレントな状況が起こると思います。
言語という観点からは、今後は外国語を駆使して誰とでも意思疎通ができる「コミュニケーション・マスタ―」になる道と、他の分野に精通するため、外国語の習得は捨て、翻訳機に頼る道の2極化が進むのではないでしょうか。
外国語の習得には時間と労力がかかるため、習得をしないという選択肢も十分ありでしょう。

リアルの価値ー2.職場環境

前述した通り、5G時代において基本的に仕事はバーチャルで完結するはずです。そのため、「リアルで交流」することはレアな体験となるのではないでしょうか。
わざわざ電車に乗って会いに来てくれる。
近いところで相手の匂い、雰囲気、表情を感じながら会話をする。
より、親近感が湧くことは間違いないです。機会が減る分、一回一回のリアルな出会いを大切にするという意識が生まれてくるかもしれません。

リアルの価値ー3.ショッピング

ショッピングにおいても、Amazonを始めとするECサイトによる購買が当たり前となっており、バーチャルの浸透は進んでいます。
ところが、ショッピングにおいてもリアルの価値は高まります。
基本的に人間というものは、どこかに出かけるのが好きですし、AI化が進むことで、他の作業を効率化でき、ますます時間に余裕が出ることも考えられます。
そうなると、オンラインでは味わえないような密度の濃い体験ができるショッピングの価値は高まりそう。
イメージとしては、百貨店の雄、新宿伊勢丹などでしょうか。
幾たびに何か新しい発見がないかワクワクしますし、美しいものに囲まれているとストレス発散にもなります。
どちらかというと、モノを購入できる美術館といった趣きです。
リアルな店舗でお金を落としてもらえるような仕組みをいかに作るかが大事でしょう。

リアルの価値 – 4.音楽

すでに音楽販売は握手券を売るために配布する「オマケ」みたいになって久しいですが、ここでもリアルの重要性は増しています。
例えばライブ。
アメリカの上場企業にLive Nationというイベントプロモート企業がありますが、すでに兆を超す売り上げとなっています。
この会社のPLを分析すると興味深いのですが、Operating Income (営業利益)のうち、コンサート事業は赤字となっている一方、スポンサーシップ・広告事業で利益を稼いでる点です。下記は2019年度ですが、過去数年同じトレンドとなっています。
コンサートで人を集め、ファンを作る。人が集まれば、広告やスポンサー料が見込める。
音楽が定額で配信されてしまう時代のビジネスモデルです。
「人が集まるプラットフォーム=お金になる」という図式ですね。
音楽ビジネスについても、無限にコピー可能な音楽の価値は限りなくゼロに近づく一方で、世界に一人しかいないパフォーマー個人と触れ合うことのできるリアルの価値は上がっていくものと思われます。

会計経理人財の生存キャリア戦略

このように『リアルが価値を持つ』時代に会計経理職の人財が生き残るために必要な戦略は、「アナログ戦略」でしょう。
で紹介したような能力を磨くことが大事です。
・コミュニケション能力・共感力

・IT人材の活用能力

・ネットワーク構築力

・専門的基礎能力
リアルが価値を持つ世の中というのは、デジタル化できていない人がむしろ活躍できるということ。
得意な分野のスキルを戦略的に伸ばして、この厳しい時代でも生き残ることができる人財をめざしたいところです。
最新情報をチェックしよう!