シンガポールに上場している不動産投資信託(REIT)であるCapitaland Ascendas REIT(SGX:A17U)が、2022年度の決算(1月〜12月の12ヶ月)を公表しました。
Capitaland Ascendas REITは、シンガポール、米国、オーストラリア、欧州(主に英国)の4カ国に220を超える物件を保有し、S-REITで最も長い歴史をほこる、S-REITの代表格といえる投資信託です。
2022年度は好調な決算内容であり、Capitaland Ascendas REITの株価は公表後に上昇に転じています。
Capitaland Ascendas REITの概要については、以前記事で紹介しているので、今回は業績のアップデートを中心に見ていきたいと思います。
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一口あたり分配金(DPU)の状況
株価及び配当金というかたちで投資のパフォーマンスに重要な影響を与える一口当たり分配金(DPU: Distribution per unit)は、前年同期比で15.258セントから15.798セントへ3.5%増加という結果でした。
投資資産の状況
2022年度末における物件占有率は94.6%で、前年度末の93.2%から上昇しています。
シンガポールが90.2%と若干低いですが、オーストラリアは99%、UKは96%と好調です。
更新物件の賃料も8%増と好調、2023年度も一桁代ではあるものの、更新賃料の増加を見込んでいます。
財務の状況
シンガポールも金利上昇局面であり、負債の利息負担の影響が気になるところです。
負債の総額については、前期末(2021年12月31日)から150百万シンガポールドル程度増加し、「リートの負債÷リート資産」の比率で表すギアリング比率は35.9%から36.3%に上昇していますが、シンガポールが定めるギアリング比率50%を大きく下回っており安全水域といえます。
負債の金利は2.2%から2.5%に若干増加、「収益÷支払利息」で算定されるインテレスト・カバレッジ・レシオは5.7倍から5.2倍へと低下しており、支払利息の観点からは安全性が若干低下しています。シンガポールのインフレ対策のために金利を引き上げている影響といえそうです。
ただし、79%の借入金金利がヘッジされていると報告されており、さらなる金利上昇の影響も限定的ではないでしょうか。
さいごに
CapitaLand Ascendas REITは、シンガポールを中心に、英国、ヨーロッパ、オーストラリア、米国と分散されたポートフォリオを有し、産業、データセンター、ビジネススペース、ライフサイエンスとセグメントも多彩です。
財務も適切に管理され、投資も積極に行っているところから、マクロ環境が不透明な状況下でも安定感のあるシンガポールリートといえそうです。
なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、何卒よろしくお願い致します。