シンガポールの会計・財務アドバイザリー

シンガポールの税務調査における重点調査項目。

シンガポール税務当局(IRAS)が、シンガポールの税務調査において注意すべきポイントについて公表しました。

当記事において、シンガポールの税務調査において留意すべきポイントについて紹介したいと思います。

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従来より税務調査の重点項目としている事項

IRASは従来からの税務調査の重点項目として、以下の7点を挙げています。

税務申告書の期限内の申告

2021年11月現在、84%の納税義務者が、期限どおりに税務申告書を提出しているとのことです。

シンガポールの確定申告期限は、決算日翌年の11月末と比較的長く、12月決算では決算期末日から11ヶ月、1月決算では22ヶ月の猶予があります。

税務調査での指摘及びペナルティを受けないためには、期限どおりに申告書を提出することが重要となります。

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損金算入できない費用の計上

法人税(Corporate income tax)で損金算入できる費用は、収益の稼得に貢献した、事業に係る支出のみであり、プライベートな費用は認められません。

たとえば、取締役が家族旅行やブランドカバンのようなプライベートな支出を会社経費として申告したことで税務調査で指摘を受けている2019年の税務調査の例などがあります。

その他のよくある指摘は、S-プレートのプライベート利用の自動車に係る交通費の計上や、家族旅行やプライベートな食費を交際費として申告してしまうことなどです。

シンガポール法人税の損金について詳しく解説。

 

益金及び損金の正しい分類

収益の種類によって税率が異なる場合があります。

そのため、以下の留意が必要です。

・事業の売上を適切な収益区分で管理すること
・その収益区分にしたがって費用やキャピタルアロワンス(原価償却)を適切に配賦すること
・直接費及び共通費を適切に認識すること

IRASの税務調査にあたっては、会社の税務手続、内部統制が適切な納税を行うよう構築されているかを確認するとのことです。

シンガポール法人税の課税対象所得は?免税スキームも解説。

 

グループリリーフ

2013年賦課年度より、グループリリーフが適切に利用されているかについて、税務調査の重点項目としているとのことです。

グループリリーフとは、いわゆる連結納税のことで、シンガポールに複数の関連会社を保有している場合に、会社間の所得と欠損金をまとめて通算できる制度をいいます。

この制度を適用するにあたっての要件、たとえば

・75%以上の普通株式の取得要件を満たしているか
・損失の通算は正しい手順で行われているか
・異なる課税期間において調整は適切に行われているか

というような点が注目されます。IRASはグループリリーフの調査の結果、以下のような誤った制度適用があったことを報告しています。

・同一グループとして同制度を適用していた会社が75%株式保有要件を満たしていなかった
・異なる事業年度同士のグループ会社で損益通算していた

外国株式の配当金に関する税額控除

外国企業の配当金については、一定の条件を満たすことで税額控除を適用することができます。

通常シンガポール税制では、シンガポールに送金され、シンガポールで受領された所得に対して課税されます。

また、シンガポールで運営された事業または取引から生じる海外の所得は、シンガポールで受領されていなくても売上計上された時点でシンガポールで課税されます。

このような海外所得は、当該外国において所得に課税され、さらにシンガポールでも課税されてしまうことで2重課税の状況となってしまうことがあります。

そこで、このような二重課税を排除する趣旨で、海外企業の配当金の税額控除制度が認められます。

税務調査においては、とくに以下の誤りが指摘されます。

・配当が、適格税率に該当しない。(課税を受ける外国の最高税率が15%を下回る税率)
・配当が、外国において課税対象(subject to tax condition)ではない。

 

工事契約の収益認識

工事契約(Construction contract)は、いわゆる会計用語における「工事進行基準」に従い、工事の進捗度に応じて収益認識する必要があります。

工事進行基準とは、プロジェクト全体の総費用における、各年度の実際発生費用から工事の進捗率を推定し、プロジェクト全体の売上に当該進捗率を乗じることで、各年度の売上高を算定する方法です。

税務上でも、この工事進捗基準による収益認識が認められますが、進捗度の算定において見積の費用(欠陥修理や補償、将来損失など)は含めてはならず、あくまでも実際に発生した法人税法に認められた適格費用のみを基礎としなければなりません。

冬眠会社による税務申告の免除

冬眠会社(Dormant Company)の申請をし、受理された企業は税務申告を免除されます。具体的には、以下の様な会社が該当します。

・二連続賦課年度にわたり、冬眠会社として税務申告した会社
・冬眠会社としての根拠があり、すぐにビジネスを再開する意図がないために、税務申告書の免除申請をした会社

冬眠会社でも、事業を再開した場合は税務申告書を提出する必要があります。

IRASは定期的に冬眠会社の状況についてレビューを実施しています。

今後、調査の重点項目とする事項

2021年11月のIRASからの公表で、今後、税務調査の重点項目とする事項として以下の2つを挙げています。

重点セクター

IRASは、あらゆるセクターにおいて、幅広く均等に税務調査を実施するとしていますが、年度によって重点的に調査対象とするセクターを選定します。

2021年度ではリノベーション関連(renovation-related)及び葬儀社(funeral service)業界を対象とすることを公表しています。

IRASはこのような業界に属する企業に対してはとくに、過去4年間の納税資料について準備の上、税務上の論点についてレビューし、税務上の問題がある場合は税務調査の前に自発的に相談することを勧めています。

資産の売却益に対する課税判断

シンガポールでは資産の売却益について、その取引が収益取引(Revenue in nature)か、資産取引(Capital in nature)かによって、税務上の取り扱いが異なります。

資産の売却が収益取引(Revenue in nature)と認められる場合は、売却益について課税対象となり、資産取引(Capital in nature)と認められる場合は、非課税となります。

収益取引と資産取引の判断基準は、資産の保有目的や期間、取引の頻度や売却理由などを総合的に勘案して判断されます。

最近話題の暗号資産取引などもこの判断基準に従いますので、暗号資産の売却で多額の利益を得た方も同様に留意する必要があります。

資産の売却益に対する課税判断が、今後の重点調査項目と公表されていますので、資産取引については慎重に検討する必要があります。

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さいごに

いかなる国においても事業を行うにあたり、税務コンプライアンスを遵守することが、事業経営の基礎となります。

税務調査で指摘されることで追徴課税を受ければ、企業の財務基盤を損ない、また会社の信用に傷がつく恐れがあります。

税務コンプライアンスについて十分留意する必要があります。



 当該情報は執筆時時点に公表されている法令・ガイドライン等を参照しています。本記事に記載された制度は、弊法人作成後、法令・条例・通達・税制の変更・改正等により、改廃が行われている可能性があります。従いまして、特定の目的利用及び専門的な判断にあたっては、会計・監査・法務・税務・労務等の専門家にご相談頂くようお願いいたします。本資料に基づいた行為(不行為)につき、一切の責任を負いません。


 

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