シンガポール法人税申告の流れ
日本において法人税の申告は、原則として決算日後2ヶ月以内に提出する必要があります。(ただし、株主総会が決算日後3ヶ月目に行われるなどの理由で、実務上は3ヶ月末まで延長されることが通常です。)
一方、シンガポール法人税申告の手順は日本と少し異なっており注意が必要です。
決算期末日を迎えたシンガポール法人は、まず3ヶ月以内に見積申告書(Estimated Chargeable Income:ECI)を提出しなければなりません。
当該ECI申告書に基づき、IRASより課税通知書(Notice of Assessment: NOA)が送付され、シンガポール法人は発行日から1ヶ月以内に納付する必要があります。
その後、決算日が属する暦年の翌年11月末までに確定申告書(Form C、Form C-S)を提出します。確定申告により、見積申告(ECI)の納付額が不足している場合は追加で支払い、超過している場合は還付となります。
見積申告(ECI)の申告方法と支払
従来は1百万SGD以上の売上がある会社のみ、電子申告が強制されていましたが、2020年賦課年度より、見積申告、確定申告ともに全ての会社が電子申告の方法で提出することが強制されます。
ECIの支払は通知後1ヶ月以内ですが、分割払い(Instrument)も認められます。ただし、その場合は銀行口座自動日落とし(GIRO)の方法でなければなりません。
GIROによりECIを分割払いする場合は、ECI電子申告の少なくとも3週間前までにはGIROの開設を申請することが推奨されます。
(GIROについては シンガポールにおける個人所得税の申告と納付 を参照)
確定申告書の種類
シンガポールの法人税確定申告書はForm C及びForm C-Sの2種類があります。
Form Cは通常の会社向け、Form C-Sは小会社向けの簡易申告書となります。Form C-Sを利用する場合は、以下の要件を満たす必要があります。
・シンガポール法人である
・年間売上が5百万SGD以下
・タックスインセンティブ(税務優遇)を受けているような一般的な法人税率(2020年現在17%)以外の税率適用がない
・欠損金・キャピタルアロワンスの繰戻(Carry-back)還付、連結納税(Group Relief)、外国税額控除(Foreign Tax Credit)の適用がない
確定申告の期限
確定申告書の期限は、決算日が属する暦年の翌年11月末です。図示すると以下のとおりとなります。
シンガポールでは比較的多い12月末決算会社であれば、翌年の11月ですが、暦年の半ば、例えば3月決算会社ですと、翌年の11月で期末日後20ヶ月となり忘れたころに期限がやってきますので注意が必要です。確定申告の期限がゆったりとしているのは、おそらくECIの時点で税額のほとんどを確保できてしまうからでしょう。細かい申告計算は時間をかけてやっていいという、さすが効率性を重視するシンガポールの申告制度です。
確定申告書の提出を怠った場合
確定申告書の提出を怠った場合、IRASが独自にシンガポール法人の見積計算をし、課税通知書(NOA)を発行します。この見積計算に不服の場合は、2ヶ月以内に抗弁通知(Notice of Objection)をIRASに提出しなければなりません。
ただし、抗弁をする場合でもNOAの発行日より1ヶ月以内に税額を納付する必要があります。
確定申告が免除される場合
冬眠会社(Dormant Company)または、清算会社(Liquidation/Strike off etc.)であり、事業を停止している会社については、確定申告書を提出する必要がありません。
申告ルールに従わないことで余分な税金を払わないように、現地子会社の税務担当者または税務エージェントと申告・納税スケジュールを確認する必要があります。
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