【異文化コミュニケーション】文化の違いを理解して、ビジネスに活かす。ホフステードの6次元モデル。

海外で事業を行うにあたり、異文化を理解することが欠かせません。

当ブログではこれまで、異文化理解のためのツール・フレームワークをいくつか紹介してきました。

今回は異文化コミュニケーションの父ともいえるホフステード博士の開発した「6次元モデル」を紹介したいと思います。

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異文化コミュニケーションに必要な知能「CQ」とは?

どんなに頭がいい人でも、異文化コミュニケーションにおいて成功できるとはかぎりません。

海外ビジネスにおいては、頭のキレを示す知能指数(IQ)より、文化理解のキレを示す指数である文化知能指数(CQ:Cultural Inteligence)が重要です。

ホフステード6次元モデルの公式ウェブサイトであるHofstede Insightsによれば、CQは「多様な文化的背景に効果的に対応できる能力」であると定義され、次の4つの要素で構成されているといいます。

CQを構成する4要素
1.異なる文化で効果を出したいと言う動機
2.異なる文化に対する知識
3.異文化の中で効果を発揮するための準備、行動及び反省
4.異なる文化での言語・非言語コミニケーションをする行動

つまり、いかなる文化の人とも問題を解決し、目的を達成することができる能力をいいます。

海外ビジネスにおいては、このCQが重要です。

ホフステードの6次元モデルは、CQを高めるための実績的なツールとなります。

ホフステード博士とは?

ヘールト・ホフステード博士は「文化の差異を数値化」した最初の人物です。

ホフステードは1960年代にIBMヨーロッパの人事マネージャーをしており、たまたま設計した「IBM従業員意識調査」がきっかけで6次元モデルが誕生しました。

この「IBM従業員意識調査」はIBMの組織開発のため、1967年〜1970年にかけて、11万6千人のIBM社員を対象に、72ヶ国、20言語で実施された調査です。

ホフステードは、この調査の結果、従業員の意識や行動が職種や性別、年齢などの属性ではなく文化の違いによって起こされていることを偶然発見しました。

ホフステードの6次元モデル

ホフステード博士はこの発見を受けて、「人間社会にある普遍的な6つの課題」を抽出、その各要素毎に国別に数値化していきました。以下の6つの要素です。

1.権力格差
2.集団主義・個人主義
3.女性性・男性性
4.不確実性の回避
5.短期志向・長期志向
6.人生の楽しみ方 抑制的・充足的

現代となっては文化によって思考様式が違うということは共通認識になっていますが、1960年代当時としてはこの発想は画期的です。

さらには、文化の差異を数値で表現したことが、今日いまだに有効なツールとして多くの人に利用、研究されている理由ではないでしょうか。

なお、このモデルがあくまで「」という社会における文化的価値化の相違であり、個別の人間の違いではない点に留意が必要です。

国全体で見たときに、総体としてそのような傾向になる、という解釈で良いのではないでしょうか。

それでは、6次元モデルの各要素の内容について、マネジメント及びあるべきリーダー像の点から説明したいと思います。

権力格差

ホフステード6次元モデルの公式ウェブサイトであるHofstede Insightsによると、「権力格差」は以下のとおり定義づけされます。

権力格差
それぞれの国の制度や組織において、権力の弱い成員が、権力が不平等に分布している状態を予測し、受け入れている程度

つまり組織内の権力格差が分布しているか、集中しているかを表す指標です。

権力格差が小さい国におけるマネジメント手法は、メンバー参加型の水平組織が適しています。

そのため、リーダーはグループのメンバーからパフォーマンスを引き出す良きコーチであるべきです。

一方、権力格差が大きい国におけるマネジメント手法は、ヒエラルキー型の垂直組織が適しています。

リーダーは組織のボスであり、的確な指示を出し、メンバーからの畏敬の念を集める必要があります。

集団主義・個人主義

ホフステードの6次元モデル、2つめの構成要素は「集団主義・個人主義」です。

Hofstede Insightsでは、それぞれ以下のとおり定義されています。

集団主義
内集団の利害が個人の利害よりも優先される社会。内集団に中世を誓う限り、人はその集団から生涯に渡り保護される。

個人主義
個人の利害が内集団の利害よりも優先される社会。個人と個人の結びつきは緩やかであり、自分自身と肉親の面倒をみればよい。

欧米は個人主義的であり、職場においても期待されるスキルセットを満たしており成果を出していれば問題有りません。

一方、中国などアジア文化では、職場でのスキルよりも人間関係が重要で、飲み会などを通じて人間性をみられるといいます。

集団主義下のマネジメントは、集団の合意を尊重することが重要になります。

そのため、全体の調和を重んじる調整型リーダーが向いています。

一方、個人主義下のマネジメントは個人の意見を尊重することが重要です。

そのため、リーダーは、明確な意志表示を行い、個人として意見の対立も辞さない姿勢が必要です。

女性性・男性性

ホフステードの6次元モデル、3つめの構成要素は「女性性・男性性」です。それぞれ、以下のような社会となります。

女性性社会
成功に執着するよりも、大切なひとと一緒にいる時間を重視し、社会の弱者へ思いやる。

男性性社会
社会的に成功することが重視される。絶え間ない努力と成功への称賛がある。男女の社会的役割を区別しようとする傾向がある。

つまり女性性・男性性の違いは弱者保護や生活の質重視か、成功や地位重視かで区別されます。

女性性社会のマネジメントにおいては、生活の質や協力を尊重し、リーダーは、調和を重んなければなりません。

一方、男性性社会においては、マネジメントにおいて規則を設定し、曖昧な状況やリスクを回避するようなリーダーが求められます。

不確実性の回避

ホフステードの6次元モデル、4つめの構成要素は「不確実性の回避」です。Hofstede Insightsでは、以下のとおり定義されています。

不確実性の回避
ある文化の成員が不確実な、未知の状況に対して不安を感じ、それを避けるために信仰や制度を形成している程度

つまり、不確実・曖昧な状況を回避する度合いといえます。

不確実性の回避が低い文化におけるマネジメントは、規則をできるだけ減らすことができます。そして、リーダーは曖昧な状況を受け入れ、リスクを取っていくことが重要になります。

一方、不確実性の回避が高い文化におけるマネジメントは、規則を設定して曖昧な状況を回避する必要があります。リーダーはできるだけ事前に曖昧な状況、リスク要因を排除することが求められます。

短期志向・長期志向

ホフステードの6次元モデル、5つめの構成要素は「短期志向・長期志向」です。Hofstede Insightsでは、以下のとおり定義されています。

短期志向
規範や短期的志向で現在を大切にする。努力はすぐに成果に結びつかなければならない。

長期志向:現実性や実用的な視点から将来を志向する。仕事はハードに勤勉、たとえ結果が出るのに時間がかかっても、辛抱強く努力する。

短期志向の文化におけるマネジメントは、短期的に財務的結果を出すことが重要になります。また、リーダーは原理・原則を重視し逸脱を是正します。

一方、長期志向の文化におけるマネジメントは、長期の利益を重視します。そのためリーダーは現実を見て状況に柔軟に対応します。

人生の楽しみ方 抑制的・充足的

ホフステードの6次元モデル、6つめの構成要素は「人生の楽しみ方 抑制的・充足的」です。Hofstede Insightsでは、以下のとおり定義されています。

抑制的
厳しい社会規範によって欲求の充足を抑え、制限すべきとする社会。

充足的
人生を味わい楽しむことに関わる人間の基本的かつ自然な欲求を比較的自由に満たそうとする社会。

抑制的な社会でのマネジメントは、悲観主義的に物事を捉える傾向にあり、リーダーは、厳格・真面目な振る舞いがプロフェッショナルであるとして信用を得られます。

一方、充足的な社会でのマネジメントは、楽観主義的に物事を捉える傾向にあり、リーダーは、ポジティブでフレンドリーであることが好ましいとされます。

以上、概略のみですがホフステードの6次元モデルについて紹介しました。

より詳細なものはHofstede insightsのウェブサイトをご参照ください。具体例も豊富に記載されており非常に有益な内容となっています。

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さいごに

ホフステードの6次元モデルは、異文化を理解する最初の手がかりになるのではないでしょうか。

以前紹介した、エリン・メイヤー教授のカルチャーマップは8指標から文化を比較するものでしたが、6次元モデルはそれよりも数十年前から利用されているもので蓄積が多く、また切り口も異なります。

両者を利用することで、より深い理解を得られるのではないでしょうか。

ぜひ、対象国について、ツールを使い分析されることをおすすめします。

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