【異文化コミュニケーション】日本とシンガポールにおけるビジネス文化の違い-ホフステードの6指標から考察。

前回の記事で、異文化理解に有用なツールとして「ホフステード6次元モデル」を紹介しました。

このモデルは「人間社会における普遍的な6つの課題」を設定し、この6指標を基礎に文化の異なる国同士を比較するフレームワークです。

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本記事では「ホフステード6次元モデル」について、実際に日本とシンガポールに当てはめ、シンガポールにおけるビジネス文化の理解を試みたいと思います。

日本、シンガポールの文化を比較するにあたり、ベンチマークとして第3国を入れると理解が深まるかと思います。

そこで、2大超大国の中国、米国も同時に比較してみました。結果は以下のとおりとなります。

(Source: Hofstede Insights)

このグラフはHofstede Insightsのウェブサイトから無料で利用することができますので、気になる国があれば実際に比較してみましょう。

それでは、それぞれの指標について考察してみたいと思います。

権力格差(Power Distance)

(左から中国、日本、SG、米国)

「権力格差」は、組織内の権力格差が分散しているか、集中しているかの指標です。シンガポールは権力格差が高いスコアにあります。

中国も同様に高いスコアになっており、中華文化の特徴といえそうです。

社会制度も一党独裁制ですので、上意下達の組織構造になるのかと思います。

シンガポールでマネジメントの立場にある人は、ぶれないリーダーシップを発揮してスタッフをグイグイ引っ張っていくタイプが良いということになります。

個人主義(Individualism)

(左から中国、日本、SG、米国)

「個人主義」は社会のありかたが個人主義的か、集団主義的かの指標です。

こちらも、シンガポールは中国と同様低い数値となっており、「集団主義」的な傾向がかなり強いことがわかります。

日本はこの指標も中間となります。

日本は、一般的には「空気を読む」など集団主義的な傾向が注目されがちですが、昭和の終身雇用制度がそうさせただけではないでしょうか。

というのも、日本の長い歴史をみると、実力に頼って職場や主君を変える個人主義が強い国家であることが見て取れます。

さて、集団主義の強いシンガポールでは、全体の意見や場の雰囲気に留意することが必要です。

また、ビジネスを進めるには、飲み会などでの人間関係構築に努めることが有効です。

男性性(Masculinity)

(左から中国、日本、SG、米国)

「男性性社会」では、成功や地位が重視される一方、「女性性社会」では、調和や弱者保護、生活の質が重視されます。

日本のスコアが突出して高いのが特徴で、世界的にみても最も高い数値となります。

仕事が人生の中心であり、出世競争にいそしむ日本人サラリーマンが代表例ですね。

一方、シンガポールは中間的スコアですので、仕事だけではなく、プライベートや他者との強調などにも配慮が必要です。

不確実性回避(Uncertainty Avoidance)

(左から中国、日本、SG、米国)

「不確実性回避」は、不確実・曖昧な状況を回避する度合いを示す指標です。

この指標が、日本とシンガポールで最も乖離している項目であり、日本人がシンガポール会社をマネジメントするにあたってミス・コミュニケーションが生まれやすいところと言えそうです。

「不確実性回避」の高い日本では、リスク回避するために様々な規則や制度を導入していきます。慎重さが求められるため、意思決定は遅くなります。

一方のシンガポールは、世界的にみても「不確実性回避」が最も低い国です。不確実・不安定な状況を受け入れ、積極的に冒険をする傾向にあります。

そもそも国家が建設されてから65年程度しか経っていないため、国全体がベンチャー企業のような姿勢でなければやっていけないのかもしれません。

シンガポール会社のマネジメントにおいては、ガチガチに制度を固めることなく、スタッフに仕事を任せて、状況の変化に柔軟に対応することが必要です。

長期志向(Long Term Orientation)

(左から中国、日本、SG、米国)

「長期志向」は、短期的な成果を重視するか、長期的な利益を重視するかの度合いを示す指標です。

日本、シンガポール、中国のアジア諸国では、「長期志向」が高いという同じ傾向を示しています。

シンガポール会社のマネジメントにおいては、日本と同様に長期計画に基づいて事業を進めて行くことに違和感はないでしょう。目の前の結果よりも将来の成功に向けて、会社一丸となって進んでいくことができます。

充足的人生(Indulgence)

(左から中国、日本、SG、米国)

「充足的社会」では、楽観的に物事を捉える傾向があり、フレンドリーな人間関係を志向する一方、反対概念の「抑制的社会」では、悲観的に物事を捉える傾向があり、厳格謹直な人間関係を志向します。

こちらも、日本とシンガポールはほぼ中間あたりで似たようなスコアとなっています。

シンガポール会社では、ポジティブすぎず、でもネガティブ過ぎず、または真面目すぎず、でもお気楽すぎず、の程よい感覚でマネジメントすることが成功の秘訣です。

さいごに

ホフステード6次元モデル」をもとに、シンガポールと日本の文化を比較してみました。

これはあくまで、「国全体としてそういう傾向がある」という指標で、個々人のパーソナリティはまた別モノです。

シンガポール会社のマネジメントにおける異文化理解の取っ掛かりとして参考にするのが良いのではないでしょうか。

文化をスコアリングして比較するという同じようなツールとして、ビジネススクールINSEAD教授が開発した「Culture Map」というものもあります。

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こちらも合わせて比較することで、より「異文化理解」が進むのではないでしょうか。

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