シンガポール証券取引所上場企業の時価総額ランキング、興味深い特徴4点。

シンガポール証券取引所(SGX)は1973年にマレーシア・シンガポール証券取引所を分割し、1999年にシンガポールの国際金融取引所と統合することで設立された、シンガポールの証券取引所です。

証券取引所の大きさとしては、世界で22位あたりに位置し、東南アジアでは最大、アジアでは上海、日本、香港、インド、韓国、台湾に次ぐ規模です。(2020〜2021年のデータ)

(source: wikipedia)

シンガポール証券取引所には、2023年4月末現在で645社の証券が上場しています。

SGXから毎月統計データが公表されており、時価総額トップ15社が掲載されます。

(Source: SGX)

当記事では、2023年4月末時点におけるシンガポール証券取引所の時価総額上位15社について見ていきたいと思います。

DBS銀行 -SGD84 billion

シンガポール証券取引所で最大の時価総額を誇るのがメガバンクDBS銀行(DBS Group Holdings Ltd.)。

DBS銀行は22年度の売上高165億SGD純利益81億SGDの好業績で株価も上昇、2位のOCBCを大きく引き離すSGX上場企業最大の時価総額企業となっています。

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OCBC銀行 -SGD56 billion

シンガポール証券取引所で2番目の時価総額を誇るのがメガバンクOCBC銀行(Oversea-Chinese Banking Corp)。

いわゆる「華僑銀行」といわれ、1932年の世界恐慌時に華僑系3銀行が合併して設立された銀行です。

華僑の銀行らしく、台湾やマレーシアなど海峡アジアに古くからの拠点を有し、海外支店24店、13カ国に代表事務所とアジアに展開します。

シンガポールの金融街ど真ん中にある本社ビルは、通称「電卓ビル」として、シンガポールのランドマークタワーの一つとなっています。

UOB銀行 -SGD47 bilion

メガバンクの最後のひとつ、UOB銀行(United Overseas Bank Limited)は時価総額3位。

UOB銀行は1935年に設立、1970年よりシンガポール証券取引所に上場しています。

海外直接投資のための部署が2011年に開設、2015年にはジャパデスクが外資銀行として初めて設立されたとのこと。日系企業との関わりも深いシンガポールの大銀行です。

シングテル(Singtel)-SGD42 billion

シングテルは、シンガポール最大の通信キャリア。1879年の設立で、100年を超える長い歴史を有します。

2000年にオーストラリアの第2位の電話会社オプタスを買収、2015年に米国のソフトウェア会社トラストウェーブを買収と、海外展開をすすめ、顧客数は世界で5億人、アジアの最大級の通信会社となっています。

プルデンシャル -SGD36 billion

プルデンシャル(Prudential Plc)はイギリスの生命保険・金融サービス企業です。

シンガポール他、ロンドン、ニューヨーク、香港の証券取引所にも上場しています。

設立は1848年、英国の植民地であったシンガポールで古くから浸透していると考えられそうです。

ウィルマー・インターナショナル -SGD24 billion

ウィルマー・インターナショナル(Wilmar International Limited)は、シンガポールで1991年に設立された食品加工会社で、中国やインドネシア、インドなどアジアを中心にビジネスを展開しています。

シンガポール人とインドネシア人の起業家によって創業され、両者ともアジア有数の富豪となっています。

ウィルマー・インターナショナルは東南アジアの食品会社らしく、アブラヤシ栽培、パーム油の精製などを主要製品とします。

キャピタランド -SGD19 bilion

キャピタランド(Capitaland Investment Limited )は、シンガポールに本社を置く、不動産投資、開発、管理会社で、アジア最大級の不動産コングロマリットです。

ショッピングモールやホテル、オフィス、ビジネスパークや物流施設など、様々な種類の不動産に投資し、キャピタランドの名前を冠したシンガポール・リート(不動産投資信託)も数多く上場しています。

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ジャーディン・マセソン商会 -SGD18 billion

ジャーディン・マセソン商会(Jardine Matheson Holdings Ltd)は、1782年英国の冒険商人ジョン・コックスの設立した事業を基礎とする歴史的企業で、現在は香港に拠点を置きます。

アジアを主戦場とする英国金融機関の典型的な企業で、香港やシンガポール、中国で収益の多くを稼ぎます。

高級ホテル「マンダリン・オリエンタル」や、インドネシアの自動車系財閥「アストラ インターナショナル」を所有、経営します。

ニオ -SGD17 billion

ニオ(NIO INC. OV)は、中国上海を本拠とする電気自動車(EV)の新興企業です。

米国、香港に次いで、2022年にシンガポールで上場しました。

2014年の設立とまだ若い企業ですが、「中国のテスラモーター」として資金が流入、シンガポール証券取引所でも有数の時価総額となっています。

シンガポール航空 -SGD17 billion

シンガポールのナショナルフラッグ「シンガポール航空」。

コロナの影響で業績・株価が下落していましたが、2023年3月期の連結決算で最終利益2.1 millionSGD(約2200億円)の市場最高益を記録

東南アジアのハブ空港チャンギの主翼として、今後さらに時価総額が増大することが見込まれます。

タイ・ビバレッジ -SGD16 billion

タイ・ビバレッジ(Thai Beverage Public Co. Ltd)は、東南アジア最大の飲料会社のひとつ。

貧しい露天商だったタイ系華僑のチャロンが、1985年に開始したアルコール事業を祖として現在は不動産や小売業など複合企業となっています。

チャンビールやF&N、Oishiiブランドなど、東南アジアで目にする飲料ブランドの多くがタイ・ビバレッジの傘下にあります。

IHHヘルスケア -SGD15 billion

IHHヘルスケアはマレーシアに本拠を億、アジア最大の民間医療企業。シンガポール証券取引所の他、マレーシア証券取引所にも上場します。

民間医療企業としての時価総額としては世界第2位であり、マレーシア政府系投資期間、シティバンクが出資しますが、2018年からは三井物産が筆頭株主となっているようです。

ゲンティン・シンガポール -SGD13 billion

ゲンティン・シンガポール (Genting Singpaore)は、1965年にマレーシア華僑が設立したゲンティングループのシンガポール子会社。

ゲンティングループは、カジノ、テーマパーク、ホテル、エンターテインメント、ホスピタリティ企業。

シンガポールではカジノやユニバーサル・スタジオを有するセントーサ島のリゾート・ワールド・セントーサを運営することで有名です。

キャピタランドICT -SGD13 billion

キャピタランドICT (Capitaland Integrated Commercial Trust)はシンガポールを拠点とする、シンガポール最大規模の不動産投資信託(REIT)

シンガポールの他、ドイツ、オーストラリアの小売施設、オフィスビルなど26の物件に投資します。

シンガポールでは、ブギス+、ブギスジャンクション、クラークキー、ウェストゲート、フーナンモール、プラザシンガプラ、ラッフルズシティなどの小売施設、アジアスクエア、キャピタグリーン、キャピタスプリングなどのオフィスビルが有名です。

ジャーディン サイクル&キャリッジ -SGD 13 billion

ジャーディン サイクル&キャリッジ(Jardine Cycle&Carriage)は、前述のジャーディン・マセソン商会傘下の自動販売会社で、自動車関連企業の企業複合体。

シンガポールの他、マレーシア、インドネシア、オーストラリアなどで事業を展開します。

もともとは、マレーシア華僑のチュア兄弟が1899年に設立したCycle&Carriage社が源流。2002年にジャーディングループが50%の株式を取得し傘下におさめたことで、ジャーディンの社名を冠する事となりました。現在ではグループ売上高が2兆7千億円を超えるシンガポール証券取引所を代表する大企業となっています。

SGXの時価総額大企業の特徴

以上が2023年4月末時点における時価総額トップ15企業でしたが、この順位を見るとシンガポールの大企業には以下の特徴があるように思います。

1.金融立国というシンガポール国家の性質から、メガバンクの時価総額が大きい(DBS、OCBC、UOB)。

2.こちらも金融立国という性質から、不動産投資会社に資金が集まっている(キャピタランド)

3.時価総額が大きいのは国の基礎となる産業ー通信(シングテル)、航空(シンガポール航空)、食品(ウィルマー)、飲料(タイ・ビバレッジ)、医療(IHHヘルスケア)

4.イギリス植民地時代の名残から、英国発祥の金融・保険会社が依然時価総額の大きい企業として存在感を示している(プルデンシャル、ジャーディン・マセソン)

以上のように分類すると、シンガポール証券取引所で時価総額の大きい企業の中で特殊な企業は、中国EVメーカーのNIOとマレーシアのカジノ・不動産開発会社ゲンティングループ

この点、証券取引所の世界ランキングを22位からさらに上昇させ、世界中の資金を流入させるためには、NIOやゲンティンのような外資企業がSGXに上場することが望ましく、金融立国を目指すシンガポールも国として目指していくのではないでしょうか。

シンガポール在住者としては、シンガポール証券取引所上場の企業においては配当金及び値上がり益(キャピタルゲイン)への税金は非課税である一方、米国や日本など外国の証券取引所に上場している企業への投資では、配当金に源泉課税されてしまい、そのためシンガポール証券取引所により多くの魅力的な銘柄が上場することを期待してしまいます。

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