【経済見通し・為替・インフレ】シンガポールのマクロ経済の状況について(21年10月)。

シンガポール金融庁(MAS)が半期ごとに公表している「MacroEconomy Review」が2021年10月28日に公表されました。本レポートのハイライトについて、当記事で紹介します。詳細な内容についてはリンク先の原文をご参照下さい。

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シンガポールの為替政策について

・名目為替レートは政策バンド内の上方で推移
・シンガポール銀行間貸出金利(SIBOR)は0.4%で変動なし

2021年4月の金融政策声明では、シンガポール金融庁(MAS)は名目実効為替レート(S $ NEER)の上昇率をゼロ%で維持し、許容変動幅(政策バンド)や中心値を変更しなかった。

コアインフレ率(主要な物価上昇率)が僅な上昇と、歴史的にみて低い水準にとどまると予測されていたため、この政策スタンスは適切であった。

過去6か月間、名目実効為替レート (S $ NEER)は許容変動幅(政策バンド)内の上部で大きく変動した。

これは、パンデミックの流行に対するマクロ経済見通しの市場心理を部分的に反映したものである。

個々に見ていくと、貿易加重指数(trade-weighted index)は一部地域通貨及びUSドルに対して、シンガポール安となった。

シンガポール銀行間貸出金利(SIBOR)は0.4%と変動がなかったものの、シンガポール翌日物平均金利(SORA)は10月に0.1%とわずかに低下した。

シンガポール経済の見通し

・2022年度シンガポール経済は回復への道をたどる
・コアインフレ率は1〜2%まで上昇
・通信、コニュニケーション産業の堅調な成長
・電機、精密機器産業の生産量拡大
・2021年度のシンガポールGDP成長率は6-7%、2022年度も平均を上回る予想

短期的な不確実性はあるものの、世界経済は次の四半期においてトレンドを上回るペースで拡大することが見込まれる。

国内が徐々に再開するとともに、シンガポール経済は回復への道をたどり、総生産は2022年の潜在的な量に戻っていくはずである。

労働市場の低迷が吸収され、輸入インフレが堅調に推移すると予測されているため、MASコアインフレ率は、2021年の平均1%未満から2022年には1〜2%まで着実に上昇すると予想される。

シンガポール通称産業省が10月14日に発表した事前見積りでは、シンガポール経済は、季節調整済みの四半期ベースで、2021年第2四半期に1.4%縮小した後、第3四半期 には0.8%拡大した。

第2四半期における後退のあと、総生産量はパンデミック前のレベルに戻っている。特に通信・コミュニケーション産業の堅調な成長に裏付けされた現代的サービス産業によるところが大きい。

一方、国内向けセクターは依然として弱く、COVID-19感染の増加に対応して課された厳格な措置の影響を受けている。


製造セクターでは、7月〜8月の電機および精密機器産業の生産量が第2四半期から拡大した一方、その他の産業では縮小している。前年比では、第3四半期は6.5%拡大しており、3四半期連続の増加となっている。

世界経済の拡大ペースは、デルタ株の蔓延により消費者向けサービスの需要を圧迫し、製品の提供に制約が生じたこともあり、過去6か月間で減速した。

しかし、世界経済の見通しほぼ無傷のままである。 既存のワクチンは優勢なCOVID-19株について重症化を予防するのに効果的であるため、接種率が世界的に上昇するにつれて、消費活動は供給制約が緩和され上昇している。

パンデミックの今後の経緯を含め不確実性は残るものの、世界経済の成長は2022年の上期について予想を上回ると予測される。

今後の数四半期において、シンガポール経済の成長は外需の増加と国内支出の回復が持続することで堅調なペースで推移すると予測される。

貿易関連及び現代的サービス業は、回復力のある電子機器サイクルと事業活動の改善に下支えされる。

Cobid-19がエンデミックへの移行として対処できるかによるものの、国内向け産業及び旅行産業についても前進が期待できる。

シンガポールのGDP成長率2021年度6〜7%に達し、2022年も若干弱まるものの平均を上回る傾向になると予測される。

ワクチン耐性ウイルス株の出現や深刻な世界経済の悪化のリスクが顕在化することがなければ、シンガポール経済は広く拡大する方向となるはずである。

労働市場の不調は2022年度には引き続き吸収され、需給ギャップは縮小すると見込まれる。

シンガポールのインフレ傾向と見通し

・コアインフレ率は1.1%に上昇
・賃金コストの上昇がインフレを助長
・次の数四半期においても、輸入コスト及び人件費の上昇によりインフレは続く
・2022年度は更に1〜2%の上昇が予想される

宿泊と民間輸送を除いたMASコアインフレ率が本年度第2四半期の0.7%から、7月〜8月における前年同期比1.1%に上昇している。

これは主に、ここ数ヶ月における電気やガスの関税と非調理済食品のインフレ価格の上昇を反映しているものである。

同時に、食品および飲料など国内の消費者向け商品では、賃金コストの上昇がインフレを助長している。

全品目の消費者物価指数インフレ率は2.3%から2.5%とわずかに上昇しているが、コアインフレ率の上昇は民間輸送のインフレにより一部相殺されている。

次の数四半期では、国内の回復の一方で、輸入コストと人件費の上昇によりインフレが見込まれる。 世界的な需要拡大と供給の制約が長引く中、しばらくの間は輸入インフレ圧力は持続する。

国内では、労働市場の低迷解消とともに、賃金の伸びは翌年度を通して堅調に推移する可能性が高い。事業費の上昇は、国内経済の再開と、個人消費の回復につれて、消費者物価上昇に転嫁される。

パンデミックにより保留されてい輸送やヘルスケア、教育など各種サービスが再開されると考えられる。

民間輸送のインフレは、シンガポールにおける自動車権利書(COEプレミアム)及び燃料費の増加ペースが遅いのに対して、来年は抑制される可能性が高い。

一方で、宿泊施設のインフレ率は、建設の遅れもあり、引き続き堅調に推移すると見込まれる。

2021年度全体として、MASコアインフレ率は0〜1%との予測レンジの上方に達し、2022年度は更に1〜2%上昇、CPI-コア品目インフレは2021年度に2%、来年度は平均1.5〜2.5%と予想される。

シンガポールの金融政策

・インフレに対応し、為替レートの政策バンド傾斜をゼロ%から小幅引き上げ
・中期間ににおける価格の安定を確保する

シンガポール経済の成長は、今後数四半期でトレンドを上回る可能性がある。

経済再開のペースが後退することや、ウィルスの再流行がなければ、総生産量は2022年の潜在的な量に戻っていくはずである。

同時に、需要の正常化と厳しい供給制約を反映して、外部及び国内のコスト圧力が蓄積されている。

そのため、MASコアインフレ率は来年度1-2%に上昇、中期的にも2%近く上昇すると予測される。

したがって、シンガポール金融庁(MAS)は、名目実効為替レート (S $ NEER)の許容変動幅(政策バンド)の傾斜をゼロ%からわずかに引き上げる。

政策バンドの幅や中心値は変更しない。名目実効為替レート の切り上げは、景気回復に対するリスクを認識する一方で、中期間ににおける価格の安定を確保する。

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