【シンガポール・フィンテック】シンガポールがフィンテックに強い理由。2020年を概括する報告書。

経営コンサルティング会社のオリバー・ワイマン(Oliver Wyman)及びシンガポールフィンテック協会によりシンガポールのフィンテック業界に関する報告書が公開されました。

この報告書はフィンテック企業を60社、さらに30人の専門家に対して調査・インタビューしたものです。

フィンテック領域におけるシンガポールの現状及びシンガポールがリードする国となっている成功要因についてまとめられています。

今回は概要を紹介したいと思います。

シンガポールが東南アジアのフィンテック・ハブ

2020年度末に時点において、シンガポールは東南アジアのフィンテックハブとなっています。

・アジアでNo1.のフィンテック都市

・東南アジア地域のフィンテック企業の40%がシンガポールを拠点とする

・100社以上のインキュベーター

・40箇所以上のイノベーション・ラボ

・150社以上のベンチャー・キャピタル

シンガポール国内においてフィンテック業界は以下のトレンドとなっていることが報告されています。

・2015年時点では100社以下だったフィンテック企業数、1,000人以下のフィンテック関係従業者は、2020年に1000社以上、10,000人以上と10倍の規模となっている。

・デジタル決済関係が23%、ウェルス・マネジメント(資産管理)関係が22%、デジタル・レンディング(貸出)、クレジット関係が17%、Regテック(規制対応の効率化)、データ分析関係が17%となっている。

フィンテック・ハブとしての成功に欠かせない4要因

レポートでは、フィンテックハブの成功に欠かせない4つの要因として以下を上げています。

1.スタートアップにフォーカスしたエコシステム
2. 政府の積極的なサポート
3. 地域の優位性
4.豊富なビジネス、テック人財

本レポートでは、シンガポールがこの4要因を全て満たしており、そのため東南アジア地域においてフィンテック領域をリードする国となっていると説明します。

1.スタートアップにフォーカスしたエコシステム

シンガポールは、東南アジアにおけるフィンテック投資をリードしている。特に政府系ファンドによるスタートアップへの投資は重要な役割を果たしている。フィンテック業界が成熟する今数年後は、アーリーステージ(起業間もない段階)からレイトステージ(起業から数年たち事業規模が大きくなった段階)への投資が盛り上がってくるだろう。この成長をサポートするため、シンガポールは世界の投資家を魅了し続けなければならない。

以下のグラフが示すとおり、東南アジアにおけるフィンテック投資は、シンガポールが群を抜いています。

また、他の米国や中国に比べてアーリーステージへの投資比率が大きいことが特徴として挙げられています。

2,政府の積極的なサポート

政府の積極的なサポートはシンガポールを魅力的なフィンテック投資先としている。フィンテック事業に対するインセンティブ制度がフィンテックエコシステムを強固なものとしている。明確なガイドラインの提供、フィンテックに対する前向きな姿勢とともに、規制当局はイノベーションを推進している。

シンガポールでは、以下のような種々のフィンテックに対するインセンティブ制度が提供されています。支援金額もかなりの金額に上っており、シンガポールが国をあげてフィンテック業界の成長を後押ししていることが見て取れます。

3,地域の優位性

東南アジア地域のフィンテック・ハブとして、シンガポールは良いポジショニングをしている。シンガポールのフィンテック企業は、シンガポールに地域統括拠点を置く企業、さらには東南アジア地域における膨大な顧客にアクセスすることができる。

東南アジアにおける人口は、EU圏や米国を凌いでおり、さらには人口を膨大に抱える中国、インドを近隣に置きます。そのためシンガポール企業の潜在的顧客の数は膨大なものとなりチャンスが大きいです。

4.豊富なビジネス、テック人財

シンガポールは、専門的知識教育機関や教育訓練コースにおいて専門的な知識に基づくスキルセットを教授するカリキュラムを提供しており、人財が豊富です。今後も継続的に人財を供給するため、イノベーション文化を育むこと、たとえば海外への積極的な派遣などの行動が利益をもたらすだろう。

シンガポール金融庁は専門学校や大学と提携し、学生に新しいテック技術の教育を行うことを支援します。また、スタートアップやベンチャーキャピタル、銀行のデジタル部門などでインターンシップを行う機会を提供しているとのこと。

シンガポールでは優秀な政府の指導のもと、教育システムのアップグレードも迅速に行えることが強みではないでしょうか。

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さいごに

今回はシンガポールにおけるフィンテック業界を概括したレポートの紹介でした。

東南アジアのフィンテック業界をリードするシンガポールですが、アメリカや中国といったテクノロジー先進国と肩を並べて成長していけるかが今後のポイントではないでしょうか。

The four key success factors for a strong FinTech hub…

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