【海外子会社管理・売掛金】これだけはおさえておきたい不正防止のポイント。

海外子会社を管理する上で、重要な項目の一つに「売掛金」があります。

売掛金とは、お客さんにモノ・サービスを提供した対価のうち、未収のものをいいます。

販売代金を取引の事後に支払ってもらう場合、代金の支払いを受けるまでに計上される会計上の資産のことです。

今回は、海外子会社における売掛金管理のポイントについて解説したいと思います。

売掛金の不正

売掛金は、事業活動で最も重要な「売上取引」に直接紐づく勘定科目であり、また現金のように目に見えて数えることができないため、不正の対象となりやすい項目です。

たとえば、架空の売上を計上する場合、増やした売上に対応した会社資産の増加が必要です。

ここで、現金・預金を架空計上するとどうなるでしょう。

会計帳簿上現金残高を増加したとしても、現金は目視できるので、存在しないことが明白ですぐバレます。

預金を増加しても、預金の残高明細と不一致となるため、あとでバレますね。

一方、売掛金であれば取引先と結託することで取引残高を偽ることができるので、架空売上を隠すことができます

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海外子会社での売掛金不正

海外の子会社では、本社からのモニタリングが届きにくく、適切な内部統制を構築するリソースも足りないというケースが多いです。

そのため、売掛金に関連する不正が起こりやすくなるという特徴があります。特に以下のような状況の場合、そのリスクは高くなります。

拠点長の業績評価指標が売上高である

海外子会社の業績評価指標として最も一般的なものは、売上高、または売上成長率ですが、金銭的報酬が業績評価指標に連動する場合は注意が必要です。

特にローカルの人材が子会社の拠点長を担っている場合、拠点長のインセンティブは売上の拡大へと向きます。

拠点長がローカル人材である場合、日本本社からのモニタリングの目が届きにくくなることから、架空売上のような悪質な粉飾決算までとは行かないまでも、売上の早期取込のような会計基準を逸脱するリスクが生じます。

営業担当がローカル社員である

海外子会社では、現地ローカル社員に営業を任せることが多いです。

これは、現地ローカル社員の方がネットワークを持っていることや、日本人には言語や文化の壁がある点などから当然といえます。

ところが、そのことにより海外子会社特有のリスクが生じるため留意が必要です。

たとえば、ローカル社員と取引先が結託して不正することや、現地ローカル社員が自分に有利な取引先を使う利益相反をおこなうリスクが生じます。

海外子会社における売掛金の管理手法

上記のような売掛金に関するリスクを踏まえて、海外子会社では最低限以下のような実務を行なうことが有効です。

年齢表(Aging List)の作成

売掛金に関する不正を防止するには、債権の回収可能性を定期的に確認することが有用です。

このため、社内で年齢表(Aging List)を作成し、月次で定期的に確認します。

年齢表(Aging List)とは、売掛金が発生してから何ヶ月経過したか(または、回収予定日から何ヶ月経過したか)を表示した表です。

年齢表において、長期間滞留している債権はなんらかの問題を抱えているはずですから、詳細な調査が必要となります。

残高確認書の発送

主要な取引先については、残高確認を取引先に実施します。

なお、担当者が結託している場合は、先方の取引残高と当社の残高は一致してしまいますから、不正は発見できません。

一方、当社のみで架空の売上を計上している場合は、架空計上を発見することができます。

返品、値引き、リベート

担当者レベルで不正が起きやすいのが、返品、値引き、リベートです。

たとえば、リベートを先方の仕入れ担当者に多めにリベート支払い、当社の担当者がその後キックバックを受ける不正などが考えられます。

そのため、取引量の多い取引先については、リベートはじめ返品や値引きについても条件を確認し、条件どおりの取引となっているかを定期的に確認する必要があります。

与信の管理

ローカルの人材を営業担当社員に採用している場合、取引先の選定には特に注意が必要です。

取引相手に有利となるような利益相反となるものははないか、あとで売上代金が回収できないような、財務基盤の弱い取引先ではないかなど取引を開始する前に確認する必要があります。

新規顧客と取引する際には、適切なデューデリジェンスと承認手続きを実施し、デューデリジェンスの結果決定された信用レベルに応じて取引限度額を設定することが有用です。

その後、定期的に定められた信用枠の金額範囲内で取引しているか、貸倒れた取引先はないかを確認する必要があります。

 

さいごに

売掛金は、棚卸資産と並んで会社の主要な資産項目です。

リソースを割いてモニタリングの管理体制を構築することをおすすめします。

 

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