<シンガポール・フィンテック>アセアンのフィンテック概況に関する報告書。その将来性は?

Dealroom、Fintech Capital及びMDI Venturesにより、アセアンにおけるフィンテックの将来性を予測するレポート「the Future of Fintech in Southeast Asia」が公表されました。

本報告書によると、安定した政治的基盤、巨大なマーケットや人財、資本を有していることから、従来フィンテックベンチャーの中心地は米国であったものの、近年ではフィンテックの中心は米国からアジアへシフトしていると指摘しています。

これは、東南アジアでも人材や技術が育ってきており、アセアン地域に資本が集まってきていることから、米国と同様のリソースを調達できるようになってきていることが要因に挙げられています。

アセアンでの成功のカギは、米国とは少し異なるとのこと。それは、金融機関や保険会社など、伝統的プレーヤーとのコラボレーションが重要であると説明します。

昨今のコロナウィルスの流行により、アセアンにおけるフィンテックの進展が加速、また、毎年22百万人のモバイル世代が誕生していることも東南アジアを世界で最も急速にフィンテックが成長する地域とする理由となっています。

コロナウィルスが加速させるアセアンのデジタル革命

アセアン地域の70%の人が未だに銀行口座を有していないか、または十分な銀行サービスを享受できていません。現状では、いまだにキャッシュが主要な取引手段であり、2019年度においても、アセアンの商業の70%がいまだに現金取引となっています。

ところが、目下進行中のコロナ大流行により、デジタルのバンキング・サービスを利用する人が増加しており、急速に現預金の取引からインターネット決済へと移行している状況です。

The Future of Fintech in Southeast Asia report” by Dealroom, Finch Capital and MDI Ventures

アセアン・テックベンチャーのユニコーン

2019年度におけるアセアンの代表的なテックベンチャー上位10社になります。シンガポールについて少し紹介します。

“The Future of Fintech in Southeast Asia report” by Dealroom, Finch Capital and MDI Ventures

1位:Grab

設立年:2012年
評価額:140億USドル

スーパーアプリのGrabが堂々の一位。配車アプリからサービスをスタートさせたGrabは、東南アジア地区においてUberを撤退に追いこみ、フードデリバリー、決済アプリとそのサービスを広げています。創業者はマレーシアのアンソニー・タンですが、本社はクアラルンプールからシンガポールへと移転しています。

4位:SEA Group

設立年:2009年
評価額:4.9億USドル

SEA Groupはニューヨーク証券取引所に上場するテック企業。こちらはゲーム事業から始まり、Eコマース、フィンテックへと進化しています。

Sea Group ゲーム・Eコマース・金融の東南アジア最大テック企業

7位:Lazada

設立年:2012年
評価額:2.2億USドル

7位は、アジアのAmazon.comとの呼び声高い、EC企業の雄Lazada Group。もともとは、米国で成功したビジネスモデルを新興国で展開するドイツのインキュベーター「ロケット・インターネット」によりシンガポールにおいて設立されましたが、2016年に中国アリババグループに買収されています。

9位:TRAX

設立年:2010年
評価額:1.1億USドル

Traxはシンガポールの小売業向け画像解析技術企業。完璧な「商品陳列棚」を作って売上を向上させるという目的のもと、店舗と流通、マーチャンダイジング、価格決定の最適化を達成する技術を販売しています。こちら参考。

上記のトップ10の他、アセアンにはおおくのテックベンチャーが登場してきており、巨額な企業価値を維持する企業も目立ってきています。

国別では、アセアン内で突出した経済力、技術力を有するシンガポールを筆頭に、最大の経済規模を誇るインドネシアが続きます。

“The Future of Fintech in Southeast Asia report” by Dealroom, Finch Capital and MDI Ventures

投資額ではシンガポール、市場規模はインドネシア

インドネシアのインターネット経済圏は2025年までの5年間で、現在の400億米ドルから3倍以上の成長を遂げ、特に、Eコマース、ライドシェエアリング領域が大きく伸びると予想されています。

資金調達及びフィンテックについてはシンガポールが最も魅力的であり、実際2015年以来260億米ドルを調達、これは主に決済及びインシュアテック(保険テック)スタートアップが貢献しているとのことです。

“The Future of Fintech in Southeast Asia report” by Dealroom, Finch Capital and MDI Ventures

アセアンにおける近年のフィンテック投資

“The Future of Fintech in Southeast Asia report” by Dealroom, Finch Capital and MDI Ventures

上記は、近年資金調達した主なフィンテックベンチャーです。

シンガポール企業は以下のとおりです。

Singlife

調達額:90百万USドル

Singlife(シンガポールライフ)は、デジタル技術の活用で、複雑な保険をわかりやすく提供するインシュア(保険)テック企業。インシュア(保険)テックの最先端をシンガポールからアセアンの最新動向やビジネスへの適用を調査することを目的に2019年より住友生命と提携しています。

Gobear

調達額:80百万USドル

Gobearは、オンライン上の金融スーパーマーケット、デジタル保険仲介、デジタルレンディングなどを手掛けるフィンテック企業。シンガポールの他、香港、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムでも事業を展開しています。

2C2P

調達額:52百万USドル

2C2Pは、2003年に設立され、Eコマース事業者、リージョナル航空会社、小売事業者や銀行などに決済プラットフォームを提供しています。

NIUMU

調達額:45百万USドル

ニウム(NIUM)は2015年にシンガポールにて設立された企業であり、旅行サービス業者やEコマース事業の中小企業や金融機関などが世界の市場に資金を送金できる国際決済サービスを提供します。

さいごに

アセアンのフィンテック環境は依然アーリーステージの段階ではありますが、伝統的な金融業とのコラボレーションにより急速に発展しています。特に巨大な人口と経済を抱えるインドネシアと、最先端技術立国であるシンガポールは今後アセアンのフィンテックを牽引していくと予想されます。

様々な規制やレガシーシステムを抱える日本ではなかなかフィンテックの活用が進みません。将来はアセアンで成長したフィンテック企業を日本がお手本とする時代が来る可能性もあるのではないでしょうか。

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