シンガポールの会計・財務アドバイザリー

会計・ファイナンス業務の過半数は5年以内にテクノロジーに置き換わる。シンガポール会計士協会の報告書。

公認会計士協会(ISCA)、シンガポール工科大学のリークアンユー・イノベーションセンター(LKYCIC)及びEYアドバイザリーにより、「会計・ファイナンス業務へのテクノロジーの影響」に関する調査報告書が公表されました。

会計・ファイナンス業務へのテクノロジーの影響

業務の再設計によるファイナンス機能の再定義(Redefining the Finance Function with Job Redesign)」と題されたこの調査では、Covid-19のパンデミックがデジタル革命の進行を加速させたと分析しています。

今後3〜5年以内に、ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)、人工知能(AI)、高度な分析/ビッグデータ、ブロックチェーンなどの技術的手段の幅広い活用が見込まれます。

そのため、調査対象となる11のファイナンス領域のうち、半数以上が、今後3〜5年のうちにテクノロジーによって置き換わることが報告されました。

初歩的な業務の代替可能性が高い一方、高度な領域については影響が少ないことも示唆されています。

会計・ファイナンス業務へのテクノロジーの影響を要約すると以下の感じです。

初歩的業務 → 会計記帳・管理会計担当 → テクノロジーに代替される

中級業務 → 経理マネジャー、財務企画マネジャー → テクノロジーを活用する

上級業務 → CFO、税務パートナー等 → テクノロジーの影響は僅少 

会計・ファイナンス業務へのテクノロジーの活用

報告書では、「デジタル化の進展により、人間が従来行ってきたタスクは機械によりすぐに引き継がれるようになる。これにより、人間は高次のタスクや新しいスキルセットを必要とする新しいタスクに集中できることになる。 会計及び財務の専門家は、それぞれの専門領域における新しい知識を習得することが求められるだろう。」と予測します。

次世代の会計および財務の専門家は、会計や業界知識だけでなく、AI、ブロックチェーン、高度な分析/ビッグデータ、さらにこれらのテクノロジーの連携について理解する必要があります。

また、自動化やインテグレーションは、関連するサービスプロバイダーを通じて利用することができるようになり、財務データは自社用ポータルを通じてオンデマンド(適時)にAIから出力して利用できるようになるとのことです。

さらに、伝統的な監査、法定の財務報告やグローバルビジネスに係るサービスばどの業務についても自動化または外注されるようになるとのことです。これらの業務は、ブロックチェーンによるセキュリティ―や、RPAによるモニタリングも相俟って、タスクの付加価値が高まることが予想されます。

シンガポールの大企業、中小企業に対する当該調査では、ファイナンス領域の一般的なスキルを11分野に分けてマッピングしています。

最も初期的な分野である、財務会計担当、管理会計担当は、労働集約的で多くの時間がかかる一方で、反復的な業務であるためおおよそ機械に代替されると見込まれます。

初期的なファイナンス機能については、データアナリティクスから導き出された洞察の分析や、機械学習のためのインプットの提供などの業務にシフトしていくと予想されます。

中級の5分野のタスクについては、テクノロジーの採用により置き換わるか、再設計される一方で、最上級の4分野のタスクは、テクノロジーを利用して効率的にはなるものの、変化は漸次的なものになると考えられます。

中級の業務である財務マネジャー、財務企画分析マネジャー及びトレジャリー・マネジャーなどは、予測しやすく、報告書では以下の見解が述べられています。

デジタルソリューションは有用なアウトプットを提供するものの、問題解決、ビジネス洞察力の発揮、戦略的なインサイトの発見そしてそれらを組織全体へ伝達する能力など、人間の介入が不可欠である。

「別の側面は、デジタルシステムを管理し、トラブルシューティングを行い、アウトプットを検証し、会社内のポリシーと内部統制へのコンプライアンスを確保することだ」

最も上級の役割は、新しい技術による影響が最も少なく、変化はより漸次的に起こるものの、業務シフトは起こりえます。

たとえば、最高財務責任者(CFO)は、財務報告の管理者という役割から離れ、ビジネス成長のためのリソース最適化に焦点を当てることになるでしょう。

つまり、新しいテクノロジーによる予測的かつ定型的な分析は、CFOのステークホルダーマネジメントスキルや経験さらには個人的な影響などと組み合わせることで、ファイナンス機能の付加価値を高めることができます。

テクノロジーの活用は通常、高価であり、中小企業(SME)にとっては手を出しづらいことが想定されます。関連する投資リターンに関して不明確であったり、モデル構築のためのデータ不足などの課題に直面する可能性があり、投資に対するモチベーションを妨げます。

そこで、高付加価値業務については自社で行う一方で、ルーティン的な業務をアウトソースすることが、新しいテクノロジーへの投資リターンを正当化する中小企業にとって代替策となる可能性があります。

また、機械の代替可能性が非常に高い、最も初級の役割については、次のレベルの役割へおとステップアップすべきであり、例えば内部監査業務の役割を担うことなどが考えられます。

中級レベルの業務担当者は、デジタルツールとその利用可能性について知ることが非常に重要になるため、自分自身のスキルアップに焦点を当てる必要があります。

会計・ファイナンス人財はコロナ下で進化が求められる

シンガポール公認会計士協会の企業会計士(PAIB)会議での基調講演において、官房長官であるインドラ・ニーラジャは次のように助言しています。

コロナの影響もあり現在の経済状況は不透明ですが、この時間を使って準備をし、革新と成長を続けなければならない。将来の計画を十分にして、すぐそこまできており、またさらに続く機会を掴む準備をしなければならない。

会計業務の未来については、定期的に考察し記事にしていますが、コロナの影響によりその進行は格段にスピードアップすると考えられます。

AIとは予測マシンにすぎない。それでも、会計人材が覚悟しなければならない3つのシナリオ。

<書評> 『プロフェッショナルの未来』専門家が生き残るための現状把握と未来戦略のための処方箋。

時代遅れの経理・財務職員、会計士などにならないためにもテクノロジーの進化をキャッチアップし、業務に適用していくことが求められます。

<参考>

Share of accounting tasks done by machines to surge by 80%: study

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