【シンガポール・リート銘柄】Manulife US REITについて考察。

シンガポールREIT(不動産投資信託)は、高い配当利回り比較的堅調な値動きが特徴でおすすめです。

特にシンガポール在住者は、売却益や配当金が非課税のため、高い投資リターンを期待でき、投資を検討する方も多いのではないでしょうか。

シンガポールリートの種類、メリットやリスク、リートの選び方については以下の記事にて解説しています。

当記事では、米国のオフィスに特化したリートのひとつManulife US REIT (SGX:MANU)について紹介したいと思います。

Manulife US REIT (SGX:MANU)は、2022年9月時点で、米国内のオフィス12物件に投資する不動産投資信託です。

2016年5月よりシンガポール証券取引所に上場しており、米国のオフィス用不動産に投資することを目的として設立されたシンガポールリートです。

Manulife US REIT (SGX:MANU)の株価推移は以下のとおりとなります。

それでは、以前の記事で紹介した「シンガポール・リートを選ぶ際のポイント」8項目に沿ってそれぞれ分析していきたいと思います。

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最新の決算報告については以下記事をご参照ください。

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1. 物件のポートフォリオ

リートがどのような不動産を保有するか、Manulife US REIT (SGX:MANU)の物件ポートフォリオについて確認してみましょう。

Manulife US REIT (SGX:MANU)は、2022年1Q時点でアメリカ国内の西海岸に6、東海岸に6の計12のオフィス物件を保有します。

2016年の上場以来、資産運用残高は3倍と順調に増加しています。

2. スポンサー

スポンサーとは、リートの資産を運用する会社(資産運用会社)の大株主です。

Manulife US REIT (SGX:MANU)のスポンサーは、世界大手の保険会社Manulifeグループ。Manulifeはカナダを発祥とする多国籍企業で、1887年創業の歴史ある保険会社です。

Manulife US REIT は、米国に設立された特定目的会社(SPV)を通して米国不動産に投資することで、米国REITに認められた税務措置である配当金の損金算入や、投資不動産売却益への税務上の課税優遇のメリットを享受することができます。

Source: https://www.manulifeusreit.sg/about

Manulife US REITの投資家は、米国での源泉税が適用されず、またシンガポールリートのメリットである、シンガポール法人税も免除されるため、高いパフォーマンスを期待することができます。

3.  一口当たり分配金(DPU)と配当利回り

執筆時現在のManulife US REITの年間一口あたり分配金(DPU)は0.0721、株価は0.375となっていますので、直近の年間配当利回りは14%程度となっています。

最近1年の推移では6.88% 〜10.74%程度となっており、かなり有利な配当利回りと言えそうです。

(Source: Investing.com)

通常5%でも高利回りとうたわれるリートにおいて、14%という異様に高い利回りとなっている理由は、コロナショック後のリモート普及によるオフィス需要への懸念からはじまり、直近では米国リセッション懸念や、借入金利の上昇による収益低下への懸念から、株価が急下降したことが原因と考えられます。

4. テナントの状況

Manulife US REIT (SGX:MANU)の直近のテナント状況は以下のとおりです。

最大のテナントであるWilliam Carterが収益全体にしめる割合は5.7%で、上位10社でも33.3%と、テナントは分散されています。

業種も金融系、リーガルを筆頭に種々のセクターから構成されており、特定の産業の浮きしずみの影響は受けづらい顧客ベースとなっています。

入居率 (Occupancy rate)

2022年第3四半期時点における入居率は88.1%となっています。プレゼン資料では、米国のクラスA不動産の平均入居率は80.5%と報告されており、米国の平均よりは高い入居率となっているようです。

加重平均リース満了期間 (Weighted Average Lease Expiry)

Manulife US REITの2022年度1Qにおける加重平均リース満了期間は4.9年です。通常、事業の賃貸契約は3年〜で、3年を下回ると現状のテナント契約を更新できていないと考えられ、リートの将来の収益性の低下につながります。

2022年第3四半期中に実施された、リース更新では加重平均リース期間は6.2年と期間が伸びており、コロナ終了のオフィス回帰によりオフィス施設の需要が戻ってきているのかもしれません。

5. ギアリング比率

リートのギアリング比率とは、「リートの負債/ リート資産」の比率であり、リート資産の取得に対する外部負債の割合を表すものです。Average leverage (平均レバレッジ)とも呼ばれます。

2022年1Q におけるManulife US REITのギアリング比率は42.5%です。シンガポール金融庁(MAS)によるギアリグ比率規制の50%を下回り、健全な水準と言えます。

また、Manulife US Reitは、負債総額に対する固定金利負債の割合を81%と報告しており、利上げの影響は大きく受けない底堅い財務体質を有しているといえそうです。加重平均の負債満期期間は3.1年となっており、しばらくは金利上昇の影響を受けずに収益を出すことができそうです。

6. 財務コスト

リートの財務コストは主に物件取得の借入金に対する支払利息です。財務コストについてはインテレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)で確認することができます。ICRとは、「収益/支払利息」で算定することができ、数値が高いほど財務コストが低く安全性が高いことを示します。

Manulife US REIT の2022年度1QにおけるICRは3.4倍です。

シンガポールのメガバンクDBS銀行の2022年3月の記事によると、シンガポール・リートの平均ICRは4.9倍程度と報告されており、シンガポールリートの平均値よりかは低い数値となっています。

https://www.dbs.com.sg/corporate/aics/templatedata/article/generic/data/en/GR032022/220304insightssingaporereits.xml#::text=3.5%25%20(1%25%20hike%20in,MAS)%20and%20possibly%20loan%20covenants.

7. 株価純資産倍率 (PBR)

株価純資産倍率(Price Book-value Ratio: PBR)は、REIT株価(一口当たり投資額)を一口当たりの純資産価値(Net Asset Value: NAV)で割った値です。

PBRが1より大きい場合は、REITが純資産額に比べて大きく評価されている一方、1を下回る場合は評価が低いことを示します。

(Source: Investing.com)

執筆時現在のManulife US REIT のPBRは0.51で、Industry平均0.87より低い数値となっています。

0.51とは時価総額が純資産の半分程度で評価されているということであり、また配当利回りが14%と高くなっていることからも、株価がManulife US REIT の収益性や資産状況からみて割りやすいになっていると考えられそうです。

8.成長戦略

最後に、Manulife US REITのDPUが今後も増加していく可能性があるか、Manulife US REITの成長戦略について確認したいと思います。

2022年第3四半期公表の資料では、「Hoteliation」及び「Flexible space」という2つの戦略が示されていました。

Hotelisation」というのはルーフトップバーやガーデン、イベントスペースやラウンジさらには事務やコンシェルジェなどを設けるこホテルのような快適な空間を提供し、オフィス物件価値の向上を目指す戦略のようです。

Hotelisation」を実施したPeachtree当物件は、賃料が30%向上していると報告されています。

一方、「Flexible Space」は、コロナ後の様々なオフィス需要に対応するため、コワークオフィスのような柔軟な職場空間を有するオフィス施設を提供する戦略です。

既存の物件の価値向上にしっかり投資をしているようです。

さいごに

Manulife US REITは、コロナ以降の急速な株価の下落により、執筆時現在で14%という高利回りを実現している魅力的なリートと言えそうです。

ただし、14%の利回りで放置されているということは、まだまだ米国のオフィス不動産需要への懸念や、借入金利の高止まりによる将来の収益力低下の疑念が残っていると考えられ、将来の利回り低下の可能性を否定できません

Manulife US REITへの投資は、米国のインフレ動向オフィス需要に留意して慎重に検討することが求められそうです。


 なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、何卒よろしくお願い致します。

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