シンガポールリートは高い配当利回りにたいして、値動きが比較的穏やかな、高配当投資として有名です。
ところが、最近のインフレ率上昇に対応した高金利政策の環境もあって、シンガポールリートの株価が下落を続けています。
このようなインフレ・高金利の状況の中で、シンガポールリートを選ぶ際に留意すべきポイントはどこにあるか、考えてみたいと思います。
今後、リート選びの参考になれば幸いです。
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負債の水準
インフレ環境の際は、物価上昇を抑えるために金融政策として金利水準が引き上げられるケースが多いです。
多くのリートは不動産取得のために外部から資金を借り入れるため、負債に対する利息を支払う必要があります。この支払利息の金額は、負債の金利利率により決定されます。
そのため、負債の金利水準がリートのパフォーマンスに大きな影響を与えることになります。リートに投資する際には、当該リートがどれだけの負債を調達しているか、また負債の利率はどの程度の水準かに留意する必要があります。
負債利息
まず、負債の利息水準を確認する指標に「インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)」があります。
「インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)」は、「リート収益÷支払利息」で算定され、数値が高いほど収益に対する利息の割合が低く、安全性が高いことを示します。
「インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)」は、各リートの発表する決算資料や、Investing.com、Yahoo financeなどの銘柄情報サイトで確認することができます。
ギアリング比率
次に、負債調達額の水準については「ギアリング比率」で確認することができます。
ギアリング比率とは「リートの負債÷リート資産」の比率であり、リート資産に対する外部負債の割合を示す比率です。
なお、シンガポールの規制では、適格なリートのギアリング比率を最大50%までと規定しており、大半のリートがギアリング比率を30%〜40%に維持しています。
この意味で、シンガポールリートはインフレに対してリスクが抑えられていると考えられます。
「ギアリング比率」は、各リートの発表する決算資料や、Investing.com、Yahoo financeなどの銘柄情報サイトで確認することができます。また、たとえば以下のようなシンガポールリートの一覧比較などのHPもあります。
金利ヘッジの状況
金利変動の影響を回避するために、固定金利でヘッジしているリートも少なくありません。
たとえば、下はOUT Commercial REITの決算資料からの抜粋ですが、すべての負債のうち76.3%が固定されており、金利上昇の影響を抑制しています。
このように、上記のギアリング比率でリート資産に対する負債の割合に加えて、固定金利の負債の割合を確認することが有用です。
金利ヘッジの状況については、多くのリートにおいて、決算資料の発表の中で開示されます。
金利水準の分配金への感応度
インフレ時のリートを検討するにあたり、金利水準の「一株あたり分配金」に対する感応度を確認することが有用です。
たとえば、シンガポールの代表的リートの一つであるCapitaland Ascendas REITは、以下の決算資料の中で、「20ベーシスポイント(0.2%)の金利上昇ごとにリート収益である「一株あたり分配金」がどれくらい減少するか」を公表しています。
「金利水準の「一株あたり分配金」に対する感応度」は、多くのリートにおいて、決算資料の発表の中で開示されます。
インフレによるコストへの影響
最後は、インフレによる直接的な影響である「コストの増加」です。
インフレ時は光熱費や不動産管理費、人件費などが上昇するため、リートの事業運営コストが増加します。
コストの増加は、リートの利益率の低下として表れますので、「営業利益率(Operating margin)」を確認することが有用です。
この際、同一銘柄の各四半期ごとの推移、及び同業界平均の営業利益率との比較でリートのコスト水準を確認することが有用です。
「営業利益率(Operating margin)」は、各リートの発表する決算資料や、Investing.com、Yahoo financeなどの銘柄情報サイトで確認することができます
さいごに
シンガポール・リートに投資する際は、様々な財務指標を検証し、できるだけ合理的な価格水準の銘柄に投資すべきです。
また、株価がインフレ抑制のための金利水準引き上げが理由で下落している場合、インフレが収まった際には再度の金融緩和・金利低下により株価上昇が期待できます。
株価下落局面にこそ、慎重かつ大胆に投資を進めていきたいものです。