2022年9月15 日に、シンガポール金融庁(MAS)が「Financial Services Industry Transformation Map 2025」を公表しました。
「Financial Services Industry Transformation Map 2025」は、シンガポールのコア産業である金融サービス業の今後すすむべき方向性を示すロードマップとなるものであり、補助金やインセンティブ、外国企業の誘致などもこのロードマップに基づいて行われると考えられるため、シンガポールでビジネスをするすべての人にとって留意すべきアナウンスであると考えます。
このロードマップでは、2025年に向け、グローバル市場とつながり、アジアの国際金融センターとしてさらに発展させ、アジア及び自国経済への貢献への戦略を提示します。
2025年に向けた当変革マップは、5 つの主要な成長戦略で構成されています。
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各資産クラスの強みを強化
最初の戦略は、「資産クラスの強みを強化する(Enhance Asset Class Strengths)」。
具体的には、外国為替(FX)や保険産業のエコシステムを深め、また、ウェルス・マネジメントのアジアセンター、フィンテック・スタートアップの事業拠点となることを目指します。
金融インフラのデジタル化
2つめ戦略は、「金融インフラのデジタル化(Digitalize Financial Infrastructure)」。
シンガポールの金融インフラをデジタル化し、デジタルプラットフォームの開発を促進、債券の発行、上場、決済の効率を向上させることに焦点をあてます。
中小企業 (SME) を成長セクター全体で結び付け、取引を促進し、参加する中小企業 がファイナンスに簡単にアクセスできるようにデジタル プラットフォームも立ち上げられます。
アジアにおけるネットゼロへの移行
3 番目の戦略は、「アジアにおけるネットゼロへの移行(Catalise Asia’s NET-ZERO Transition)」。
ネットゼロとは、カーボンニュートラルと同義で、音質効果ガスの排出が正味ゼロという意味です。
アジアのネットゼロへの移行を促進することに焦点をあて、シンガポール金融庁(MAS)が産業界と協力し、持続可能な社会のための金融ソリューションを開発することです。
例えば、脱炭素化の促進のための資金調達ソリューション、持続可能性の開示の強化などが挙げられます。
これらの持続可能性イニシアチブをサポートするために、MAS が管理する金融セクター開発基金 (FSDF) により能力開発、グリーン フィンテック、気候リスクと再保険などの新しい資金調達ソリューションのために、今後 5 年間で 1 億シンガポールドルの助成金を確保することが公表されました。
金融ネットワークの未来を形作る
4つ目の戦略は、「金融ネットワークの未来を形作る(Shape the Future of FInancial Networks)」。
国際決済の強化と革新的なデジタル資産エコシステムの構築を目指します。
これは、シンガポール経済と国際決済のつながりを拡大し、国際決済銀行(BIS)が主導する即時支払いシステムを接続する取り組みであるProject Nexusなどのイニシアチブに参加することによって行われます。
MASはまた、国際決済、貿易金融、資本市場などの分散型台帳技術(DLT)、デジタル通貨、資産のトークン化に関連する機会を引き続き模索します。
Project GuardianやProject Orchidなどのいくつかのイニシアチブが、これらのテクノロジを調査するために昨年開始されたと報告されています。
熟練の適応力ある労働力の育成
5番目の戦略は、「熟練の適応力ある労働力の育成(Foster a Skilled and Adaptable Workforce)」。
銀行金融協会 (IBF)、金融業界、三者パートナー (労働省、全国労働組合会議、シンガポール全国雇用者連盟) と緊密に連携し、持続可能性や技術、キャリアのさまざまな段階でシンガポールの金融専門家が職業訓練を利用できるようにします。
2021 年から 2025 年にかけて、推定 4 億シンガポールドルを拠出し、金融の専門家とリーダーを育成するための人材と金融のリーダープログラムを支援するために利用されると公表されています。
さいごに
ロードマップによると、シンガポールの金融セクターは、2021年から2025年まで平均年率 4~5%で成長し、毎年平均 3,000を超える雇用を創出する計画のようです。
足元では、東南アジアの主要なフィンテックハブであるシンガポールは、フィンテックセクターで深刻な人材不足に直面、とくに金融業界のテクノロジー系人材は非常に需要が高まってと報告されています。
今後2025年に向けて、シンガポールで就業をするには、「金融✗テクノロジー」の人材は引く手あまたとなりそうです。