【シンガポール・リート銘柄】Parkway Life REITについて考察。

シンガポールREIT(不動産投資信託)は、高い配当利回り比較的堅調な値動きが特徴でおすすめです。

特にシンガポール在住者は、売却益や配当金が非課税のため、高い投資リターンを期待でき、投資を検討する方も多いのではないでしょうか。

シンガポールリートの種類、メリットやリスク、リートの選び方については以下の記事にて解説しています。

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当記事では、ヘルスケア施設に特化したリートのひとつParkway Life REIT (SGX:C2PU)について紹介したいと思います。

Parkway Life Reit (SGX:C2PU)は、ヘルスケア関連不動産に特化したREITの中でアジア圏最大のREITのひとつです。

シンガポール、日本、マレーシアのヘルスケア不動産へ投資しています。

Parkway Life Reitの株価推移は以下のとおりとなります。

それでは、以前の記事で紹介した「シンガポール・リートを選ぶ際のポイント」8項目に沿ってそれぞれ分析していきたいと思います。

1. 物件のポートフォリオ

リートがどのような不動産を保有するか、Parkway Life Reitの物件ポートフォリオについて確認してみましょう。

Parkway Life Reitは、2022年1Q時点でシンガポール、日本、マレーシアの3カ国に、計56物件を保有します。

その内訳は、シンガポールが 64.3%、日本が35.4%、マレーシアが0.3%となっています。アジアの先進国であるシンガポール及び日本が中心のREITですね。

施設種類別の内訳は、ホテル・医療施設が64.6%、養護施設が35.4%となっています。

(Source:1Q 2022 Bsuiness update)

2. スポンサー

スポンサーとは、リートの資産を運用する会社(資産運用会社)の大株主です。

Parkway Life REITのスポンサーは、その名の冠するとおりParkway Holdings Limitedです。

Parkway Holdings Limitedは、シンガポールを本拠とする、アジアで最大の私立病院・医療施設グループのひとつであり、シンガポール、ブルネイ、インド等に医療施設を保有します。

3.  一口当たり分配金(DPU)と配当利回り

執筆時現在のParkway Life Reitの年間一口あたり分配金(DPU)は0.014(2021年度)、株価は4.79となっていますので、直近の年間配当利回りは2.9%程度となっています。

過去5年の推移では2.6% 〜2.9%程度となっており、高配当が魅力のシンガポールREITとしては控えめな配当利回りといえます。

Parkway Life ReitのDPUは2007年のIPOから増配を続けており、この成長性が評価されて高い株価(低い利回り)となっているのかもしれません。

(Source:1Q 2022 Bsuiness update)

4. テナントの状況

Parkway Life Reitの主なテナントは、同グループのParkway Hospitals Singapore Pte. Ltd.が最大で60.5%であり、以下、日本の養護施設の運営会社が続きます。

同一グループ企業がテナントとなっている場合、解約により入居率が低下する可能性が低いため、このこともParkway Life Reitの株価が高く評価されている理由のひとつかもしれません。

(Source:1Q 2022 Bsuiness update)

入居率 (Occupancy rate)

1物件のみ保有するマレーシアの入居率は31%と低調となっていますが、全体の99%を占めるシンガポール及び日本の入居率は100%となっています。

(Source:1Q 2022 Bsuiness update)

ほぼ全ての物件で入居率が100%となっている優良REITといえそうです。

加重平均リース満了期間 (Weighted Average Lease Expiry)

Parkway Life REIT の2022年度1Qにおける加重平均リース満了期間は17.2年です。通常、事業の賃貸契約は3年〜で、3年を下回ると現状のテナント契約を更新できていないと考えられ、リートの将来の収益性の低下につながります。

17年を超える加重平均リース期間は、他のREITが5年前後であることを驚異的でありえ、これが配当利回り2%台まで株価を押し上げる最大の理由といえそうです。

5. ギアリング比率

リートのギアリング比率とは、「リートの負債/ リート資産」の比率であり、リート資産の取得に対する外部負債の割合を表すものです。Average leverage (平均レバレッジ)とも呼ばれます。

2022年1Q におけるParkway Life Reitのギアリング比率は34.5%です。シンガポール金融庁(MAS)によるギアリグ比率規制の50%を大きく下回り、健全な水準と言えます。

6. 財務コスト

リートの財務コストは主に物件取得の借入金に対する支払利息です。財務コストについてはインテレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)で確認することができます。ICRとは、「収益/支払利息」で算定することができ、数値が高いほど財務コストが低く安全性が高いことを示します。

Parkway Life REIT の2022年度1QにおけるICRは20.2倍です。

シンガポールのメガバンクDBS銀行の2022年3月の記事によると、シンガポール・リートの平均ICRは4.9倍程度と報告されており、平均よりかなり健全な財務コスト水準といえます。

負債の利率も0.56%と低金利で借り入れており、優良な財務体質といえます。

7. 株価純資産倍率 (PBR)

株価純資産倍率(Price Book-value Ratio: PBR)は、REIT株価(一口当たり投資額)を一口当たりの純資産価値(Net Asset Value: NAV)で割った値です。

PBRが1より大きい場合は、REITが純資産額に比べて大きく評価されている一方、1を下回る場合は評価が低いことを示します。

執筆時現在のParkway Life REITのPBRは2.02で、Industry平均1.03より高い数値です。

Parkway Life REITの高い利回り、健全な財務状況が評価されている証左といえそうです。

(Investing.com SGX:C2PU as of 30th July 2022)

8.成長戦略

最後に、Parkway Life REITのDPUが今後も増加していく可能性があるか、Parkway Life REITの成長戦略について確認したいと思います。

2022年1Qの公表資料では、Parkway Life REITは3つの成長戦略を提示しています。

・既存市場の強化
・第3の主要市場の構築
・戦略的パートナーシップの発展

既存市場の強化として、特に日本市場の拡大に向けた強固なネットワーク、先行者利益(ファーストムーバー・アドバンテージ)の活用を挙げています。

また、中長期的な成長のためにシンガポール、日本に次ぐ第3の主要市場を構築することを目指しています。

また、ヘルスケアParkway Life REITの特徴は、保有不動産の目的が医療施設など明確であること、そのため、リース期間も10年超と長期に渡ることが挙げられます。

そのため、テナントや不動産管理会社も医療施設の専門業者となり、戦略的なパートナーシップが重要となります。

Parkway Life REITは、複数の戦略的パートナーシップを育み、拡大と成長を目指すとしています。

さいごに

Parkway Life REITは、配当利回りが2%台であり、通常5%程度見込める他のシンガポールREITに比べて低い水準になっています。

その一方で、加重平均リース期間が17年超と長期コミットできていること、また同じグループ企業が最大のテナントとなっていることから、安定的な手堅い配当が期待できます。

さらに、株価も2018年の2.7ドルから直近4.79ドルと著しく成長しています。

REIT価格の上昇と安定的な利回りが期待できる銘柄として一部資金を投資する価値はあるかもしれません。


 

なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、何卒よろしくお願い致します。

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