シンガポールREIT(不動産投資信託)は、高い配当利回りや比較的堅調な値動きが特徴でおすすめです。
特にシンガポール在住者は、売却益や配当金が非課税のため、高い投資リターンを期待でき、投資を検討する方も多いのではないでしょうか。
シンガポールリートの種類、メリットやリスク、リートの選び方については以下の記事にて解説しています。
シンガポールで投資を始める際に、有力な候補となるのがシンガポールの不動産投資信託、シンガポール・リート(Singapre REIT)ではないでしょうか。 現在の世界的な株式や債券の下落相場の中、私も投資をするにあたって色々検討したい[…]
当記事では、ロジスティック施設に特化したリートのひとつMapletree Logistics Trust(SGX:M44U)について紹介したいと思います。
Mapletree Logistics Trust (SGX:M44U)は、シンガポールを拠点とする物流不動産への投資信託です。
シンガポールにとどまらずアジア諸国の物流施設へ投資している点が特徴です。
物流施設は、世界的なオンラインショッピング(EC取引)の普及により、ここ数年で需要が急激に増大しています。
Mapletree Logistics Trust の株価推移は以下のとおりとなります。
それでは、以前の記事で紹介した「シンガポール・リートを選ぶ際のポイント」8項目に沿ってそれぞれ分析していきたいと思います。
1. 物件のポートフォリオ
リートがどのような不動産を保有するか、Mapletree Logistics Trust の物件ポートフォリオについて確認してみましょう。
Mapletree Logistics Trust は、2022年1Q時点でシンガポール、香港、中国、日本、オーストラリア、韓国、マレーシア、ベトナム、インドの9カ国に、131億シンガポールに相当する資産を保有します。
2. スポンサー
スポンサーとは、リートの資産を運用する会社(資産運用会社)の大株主です。
Mapletree Logistics Trust のスポンサーは、その名の冠するとおり、Mapletree Investments Pte. Ltd.です。
Mapletree Investments Pte. Ltd.は、2000年にシンガポールで設立された投資・資産管理会社です。
Mapletree Logistics Trust 以外にもデータセンター、インダストリー、オフィス、レジデンスなど様々な分野の不動産投資ファンドをアジアのみならず、北米、ヨーロッパを含む世界中でポートフォリオを保有しています。
3. 一口当たり分配金(DPU)と配当利回り
執筆時現在のMapletree Logistics Trust の直近四半期(3ヶ月)の一口あたり分配金(DPU)は0.0226、株価は1.72となっており、Investing.comによる直近の年間配当利回りは4.75%となっています。
直近5年の平均利回りは5.89%であり、直近では株価の上昇とともに利回りが低下していますが、シンガポールリートとしては及第点の配当利回りではないでしょうか。
4. テナントの状況
Mapletree Logistics Trust の直近のテナントは840社であり、以下のとおり、消費財から、IT、飲食業など様々な業種に分散されています。
入居率 (Occupancy rate)
Mapletree Logistics Trust の入居率は全体で96.7%となっています。
いずれの国も90% を超えていますが、唯一95%をきっている国は中国で、これは2022年3月に取得した新規物件が91%の入居率となっていることによります。
加重平均リース満了期間 (Weighted Average Lease Expiry)
Mapletree Logistics Trust の2022年度1Qにおける加重平均リース満了期間は3.5年です。通常、事業の賃貸契約は3年〜で、3年を下回ると現状のテナント契約を更新できていないと考えられ、リートの将来の収益性の低下につながります。
加重平均リース期間は5年超が望ましいですが、3.5年は及第点といえそうです。
https://mypassiveinvesting.com/weighted-average-lease-expirywale-and-lease-occupational-profile/
5. ギアリング比率
リートのギアリング比率とは、「リートの負債/ リート資産」の比率であり、リート資産の取得に対する外部負債の割合を表すものです。Average leverage (平均レバレッジ)とも呼ばれます。
2022年1Q におけるMapletree Logistics Trust のギアリング比率は36.8%です。シンガポール金融庁(MAS)によるギアリグ比率規制の50%を大きく下回り、健全な水準と言えます。
また、Mapletree Logistics Trust は、負債総額に対する固定金利負債の割合を79%と報告しており、利上げの影響は大きく受けない底堅い財務体質を有しているといえそうです。
6. 財務コスト
リートの財務コストは主に物件取得の借入金に対する支払利息です。財務コストについてはインテレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)で確認することができます。ICRとは、「収益/支払利息」で算定することができ、数値が高いほど財務コストが低く安全性が高いことを示します。
Mapletree Logistics Trustの2022年度1QにおけるICRは4.2倍です。
シンガポールのメガバンクDBS銀行の2022年3月の記事によると、シンガポール・リートの平均ICRは4.9倍程度と報告されており、概ね健全な財務コスト水準といえます。
7. 株価純資産倍率 (PBR)
株価純資産倍率(Price Book-value Ratio: PBR)は、REIT株価(一口当たり投資額)を一口当たりの純資産価値(Net Asset Value: NAV)で割った値です。
PBRが1より大きい場合は、REITが純資産額に比べて大きく評価されている一方、1を下回る場合は評価が低いことを示します。
執筆時現在のMapletree Logistics Trust のPBRは1.1で、Industry平均1.03より若干高い数値ですが、適正水準です。
8.成長戦略
最後に、Mapletree Logistics Trust のDPUが今後も増加していく可能性があるか、Mapletree Logistics Trust の成長戦略について確認したいと思います。
ロジスティック施設の見通し
Mapletree Logistics Trust の2022年1Q資料に、各国の見通しが以下のとおり記載されています。
・全体として、ウクライナ危機やインフレ、金利上昇やサプライチェーンの混乱等の影響で世界経済は弱含んでいるものの、シンガポールのリース市場は、E-コマース市場や在庫積み増しの需要により安定している。
・一方、中国はコロナロックダウンの影響でテナントは事業の拡大に慎重であり、経済成長は滞っている。
・日本、韓国、オーストラリアの物件は、E-コマース市場の好調その他構造的ドライバーの恩恵を受け、安定した収益をもたらしている。
開発中のプロジェクト
2022年1Q時点で以下の11物件が開発中プロジェクトとなっています。中国、ベトナム、インドなど経済的な成長が見込める国が中心となっています。
さいごに
Mapletree Logistics Trust は、アジアの先進国から新興国まで幅広くカバーした不動産投資信託です。これからますますE-コマースが浸透することも予想されるため、物流施設への需要は今後も引き続き堅調と見込めそうです。
そのようなアジアの物流施設に特化したリートたるMapletree Logistics Trust へ投資資金の一部を振り分けることは、検討に値するのではないでしょうか。
なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、何卒よろしくお願い致します。