シンガポール金融庁(Monetary Authority of Singapore)のマネージング・ディレクターであるRavi Menon氏がウェブセミナー「Growing Timber」において金融セクターにおける雇用の状況について講演しました。
「Growing Timber」は、シンガポールの金融セクタ―における仕事とスキルについて解説するもので、2020年11月に1回目が、2021年5月4日に2回目が開催されました。
2回目の講演では、シンガポールの金融セクターにおける「雇用の機会」と「金融セクターにおける業務スキル」がテーマとなっています。
当記事において、簡単に紹介したいと思います。
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シンガポールの金融セクターにおける「雇用の機会」
まず、金融セクターの雇用機会は近年増加しており、特にシンガポール国民の就業の増加が顕著となっています。
2020年度においてシンガポール金融セクターでは、2,200の雇用機会が新しく創出されています。そのうち、シンガポール国民の就業数は2,800人の増加、外国人は600人の減少となってるとのこと。
シンガポール国民へ付加価値の高い仕事が移動する流れは近年顕著ですが、金融セクターでもはっきりと数字にあらわれています。
また、多くの金融機関がシンガポールに地域統括・グローバルハブを設置しており、金融セクターの仕事の40%が国際的な業務とのことです。
このような国際業務のうち、半分はシンガポール国民が占めており、海外マーケットのデジタルプロダクトを開発するアプリ開発者、プライベートバンカー、リスクマネージャーなどの「good job」に就いている、と説明されています。
2021年度は6,500の新たな雇用機会が創出されると見込まれており、引き続き金融セクターの就業機会は増大していくようです。
シンガポールの金融セクターにおける職種
今回の講演で特に強調されているのが、金融セクターにおけるテック人材の将来性です。
下図で紹介されているとおり、金融セクターにおける職種の筆頭は、テクノロジー関連となっています。
金融機関というと、まだまだ消費者向けのバンキングや企業向け金融、プライベート・バンキングなどが主流とのイメージがありますのでちょっと以外ですね。
なお、金融セクターにおけるテクノロジー職は、2014年の6,700人から現在は25,000人まで増加しているとのこと。
その中で一番需要が大きいのがソフトウェアエンジニア、そしてビジネスアナリスト、DX担当と続きます。
シンガポールの金融セクターで求められるスキル
スピーチの中で、金融セクターのテック職につくためのスキルとして、以下の4つを挙げています。
1.STEMの素養
STEMとはサイエンス(Science)、テクノロジー(Technology)、エンジニアリング(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を合わせた略語です。
素養として、STEM関連の学位を持っていると有利であり、中堅社員でもSTEMの素養があるシンガポール人社員をテック職向けにトレーニングしているとのことです。
2.プログラミングスキル
テック職の需要は従来のITプロジェクトマネージャーや、ITサポートから、ソフトウェア・エンジニアやプロダクト・オーナーへ移行しています。
フロントエンドのアプリ開発者やモバイルアプリ開発者、企業向けソフトウェア開発者の需要が高く、数年に及ぶプログラミング経験やバンキング・ソフトウェアの知見が求められます。
3.ビジネスの知識
一方で、テクノロジー関連のスキルのみではなく、一般的なビジネス知識も必要と説明します。
これはテクノロジーとビジネスの統合が進んでいるためであり、金融セクターのテック人材は、ビジネス領域をサポートするために、その事業に関する知識や理解が必要となります。
4.海外での経験
最後に、海外での経験が有用であると説明しています。
これは、シンガポールがグローバル、リージョナルのハブとなっているため、海外マーケットを理解することが、より良いプロダクトやソリューションを提供することになるからです。
特に上級レベルの職では、競争相手はグローバルのテック人材となるため、海外経験は必要不可欠であるといいます。
さいごに
今回紹介したシンガポール金融庁の講演は、金融セクタ―で働きたいシンガポール学生をメインに向けたものと推測します。
ただし、外国人でもテック系のスキルがある人材は、就職についてかなり有利となるのではと感じました。
上記に紹介された、金融セクターで必要なスキルは、シンガポール金融セクターに限らずどのセクターでも、また日本でも今後有望となるスキルであるのは間違いないと思います。
今後のスキルアップの参考にしたいと思います。