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【海外子会社管理】成功の秘訣は粗利の管理。その4.販売価格決定のコツについて考えてみる。

海外子会社の成功の秘訣は粗利益の管理」という点について前3回で解説しました。

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事業を継続的に行い、世の中に価値を提供するためには必要な「粗利益」を確保する必要があるという話でした。

今回は、粗利益を確保するための「販売価格決定のコツ」について検討してみたいと思います。

販売価格を上げるか、数量を増やすか

粗利益は「売上―原価」で計算されます。

そのため、粗利益を確保するには、「原価を低減する」か、「売上を増やす」しか方法はありません。

このうち、後者の「売上を増やす」についてさらに要素を分解すると次の式になります。

つまり、売上を上げるには、「単価を上げる」か、「数量を増やす」必要があります。

このうち、「数量」は会社の製造能力や市場の需要で決定されるので、なかなかハードルが高いです。

会社の製造能力を引き上げるのは多大なコストと時間がかかりますし、市場の需要総量をイチ会社の力で増やすのは不可能です。

そのため、売上を上げるには、「単価」のほうを調整するほうが現実的です。

単価を引き下げる事により価格競争力を強めて、自社の販売数量を増やす事もできます。

販売価格を適切に設定する重要性

販売価格の決定は会社の経営陣が行うべき最も重要な経営戦略の一つです。

事業の目的は、顧客に価値を提供すること、顧客の満足度を上げることですが、顧客が価値を感じるのは次の3つに集約されます。

このうち、「品質・機能」の向上は時間やコストがかかるのは説明するまでもないです。最新鋭の製造設備や、研究開発、最新のテクノロジーに加えて多くの従業員が必要になる場合がほとんどです。

また、「納期の短縮」は製造能力の向上や従業員のトレーニングに時間、コストがかかります。

一報で、「販売価格」は少し性格が異なります。

なぜなら、「販売価格」は時間やコストはまったく必要ありません。

見積書を出すときに、お店に並べるときに、ただ数字を下げるだけ。

これだけで顧客の満足度を上げることができるます。

ただし注意しなければならないのは、「販売価格の引き下げ」は直接粗利益を削ることになります。会社の利益の低下に直結し、その影響は甚大です。

そのため、販売価格の決定は非常に重要な経営判断といえます。

販売価格の設定に影響を与える要因

経営判断として、販売価格はできるだけ高く設定したほうがいいのは当然です。

ところが現実はそんなに簡単に販売価格を高く設定できません。

以下のような要因があるからです。

競合他社との競争

競合他社が同じような製品やサービスを提供している場合は、その価格水準に合わせざるを得ません。

クライアントとの関係

クライアントとの関係も価格に大きな影響を及ぼします。例えば、メーカ―の部品を製造する下請企業は、クライアントの意向に影響を受けます。

品質や納期からくるトラブル

以前にクライアントに対して品質や納期でトラブルをかけたことがある場合など、負い目がある場合は強気な価格設定がしづらい場合などあります。

戦略

戦略的に販売価格を低くすることも有りえます。長期的に強固な関係をクライアントと築きたい場合に、販売価格を低めに設定することや、最初の取引では利益トントンとしつつ、別のプロジェクトやサービスで粗利を大きく回収する戦略などは一般的です。

販売価格を適切に設定する方法

以上のように、販売価格の決定には色々な要素が影響してしまいますが、それでは適切な販売価格を設定するにはどのような方法が考えられるでしょうか。

ここでは、次の3つを紹介したいと思います。

・精緻な直接原価計算

・BATNA

・アンカリング

精緻な直接原価計算

適切な販売価格とは、原価を回収できる利益です。

そのため、正確な原価計算により原価を把握することが欠かせません。

原価計算には「全部原価計算」及び「直接原価計算」の2種類があります。

一般に、外部に公表される財務諸表に表示される数値を算定する原価計算は「全部原価計算」となります。

ただし、販売価格を決定するための原価計算という観点からは、「直接原価計算」が適しています。

本稿では両者の違いについて詳細は割愛しますが、直接原価計算は、「利益が出る水準の原価を把握しやすい」という利点があるためです。

直接原価計算は、以下の記事にある、損益分岐点分析における原価計算と同じです。興味ある方は一読下さい。

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直接原価計算」により、最低限固定費を回収できるレベル、つまり「損益分岐点」における販売単価設定が可能となります。

実際の価格戦略では、この損益分岐点における販売価格を念頭に、市場での他社水準その他の経営戦略を勘案して価格を設定することが有効です。

市場水準に比べて高く設定する場合は、「品質・機能」、「納期」の観点で付加価値の提供が必要でしょう。

一方、市場水準に比べて低く設定する場合は、「量」をとる戦略が有効となります。供給能力を増やすことが経営戦略上の課題となるでしょう。

BATNAとは

もう一つ、別の観点から販売価格決定を考えてみたいと思います。

交渉理論において有名なコンセプトとして、BATNAという言葉があります。

BATNAとは、”Best Alternative to a negotiated agreement”の略で、「交渉において、最も望ましい代替案」というような訳になります。

つまり、ある交渉ごとがある場合に、別の選択肢を持っておくことで、損をするような安易な妥協を避けることができるということです。

たとえば、ある取引先との価格交渉において、10万円の商品について、相手が8万円でのディスカウント価格を要求してきたケースを考えてみましょう。

もし、この取引先以外に潜在的な販売先があり、そこに9万円で販売できることがわかっていれば、あえて8万円というと相手の要求を飲む必要はなくなります。

この「別の販売価格9万円」がBATNAとなります。

BATNAをもつことで、不利な価格での交渉妥結を避けることができます。

アンカリングとは

アンカリングとは、提示した数字や情報が、判断や交渉の基準に影響を及ぼすことをいいます。

錨を意味するアンカーから来ています。

こちらもBATNAと同様に、交渉理論におけるコンセプトとなります。

たとえば、M&Aのによる買収交渉において、売却企業が自社の価値を高め提示することで、その価格が基準になったりします。

ただし、ある程度合理的な範囲内でのアンカリングではないと、相手からの信頼を損ない、そもそも交渉すらはじまらないというリスクがあります。

この合理的な範囲の金額を考える上では、やはり直接原価計算による原価把握やBATNAを有することが有効ではないでしょうか。

さいごに

今回は、粗利益の確保には、適切な販売価格の設定が重要であるという話でした。

原価と価値に見合った価格を提示し、クライアントとwin-winの取引を行うことが継続的な事業の運営に不可欠となります。

また、そもそも価格競争に陥らないために、コストや時間のかかる「品質・機能」や「納期」の点で不断の向上、改善活動が重要となるのではないでしょうか。

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