【海外子会社管理】成功の秘訣は粗利益の管理。その1.粗利益を知ろう。

事業の基本は、何かを仕入れて価値を高め、仕入より高い価格で販売することです。

この価値を高めた部分こそ「利益」であり、事業を行う理由です。

あらゆる企業は、事業を通じて社会に貢献した上で「利益を得ること」が存在意義となります。

海外事業の場合は、わざわざコストと手間暇をかけて海外にまで進出するため、特に「利益」には慎重にならなくてはなりません。

「利益」には色々な概念がありますが、今回はその中でも特に重要な「粗利益」について検討してみたいと思います。

粗利益は付加価値をあらわす

粗利益とは「売上高」から「売上原価」を差し引いた金額です。

英語ではGross Profitと訳されます。

販売業であれば、売上高から商品の仕入額を控除した金額、製造業であれば売上高から製品の製造原価を控除した金額であり、本業から直接得られる利益です。

この利益は、販売費や管理費、たとえばマーケティング費用や、営業マン・管理部門の給料などを控除する前の、事業そのものから得られる利益です。

そのため、粗利益がそもそも少ない場合は、人件費もマーケティング費用もかける意味はあまりなく、利益を得る目的という点からはあまり事業を行う意味はありません。

(ただし、世の中の事業には、社会福祉など営利だけを目的としないものもたくさんあります。)

「率」で考えなければならない

粗利益を把握する指標として「粗利益率」があります。

英語ではGross Profit Marginと訳されます。

粗利益率は、粗利益 ÷ 売上高 で算定され、「」で表示されます。

ちなみに、会計実務において、割り算を使って「〜率(%)」のような数値で表すことが有用です。

「粗利益:100万円」 のような絶対値での表示だと、「事業の収益性」がわからないためです。

例えば、以下のケースで考えてみましょう。

A:200万円の売上から100万円の利益を稼得

B:2億円の売上から100万円の利益を稼得

粗利益率を計算すれば、収益性が一目瞭然です。

A:100万円 ÷ 200万円 = 50%

B: 100万円 ÷ 2億円 = 0.5%

粗利率の高いAの事業はものすごく儲かる商売ですが、Bの事業はかなり薄利多売となります。

高い粗利率を目指すべき?

粗利益率は、どちらが良い、悪いという問題ではなく、事業の性質で判断します。

ブランドイメージのおかげで単価を高く設定できるラグジュアリーブランドなどの高級品は粗利率が高くなります。

また、一度システムをローンチすれば、ほとんど手間を掛けずにお金を稼いでくれるITビジネスについても、粗利率が非常に高くなる傾向にあります。

一方で、単価の低い日用品や食品などの商品を取り扱う卸売業や小売業では、粗利率が低くなりがちです。

これはあくまでも「粗利益」が、事業が創出した付加価値であることから説明できます。

卸売業は商品を集積、整理のうえお店へ流すという付加価値を提供しています。

また、小売業では、消費者がモノを効率的に快適に買う場を供給するという付加価値を提供しています。

ただし、モノを右から左に流すような仕事の卸売業や小売業では付加価値が高まりにくいため粗利益が低く抑えられます。

そのため、小売業や卸売業のような伝統的な事業は、ITプラットフォームを提供して利用者のクリエイティブ活動をサポートしたり、購入するだけで胸躍るようなラグジュアリーブランドの商品には付加価値という点ではかないません。

一方で、食料や日用品など毎日の生活に欠かせないものは、取引量が莫大となるため、一点あたりのアイテムの利益率が低くても、巨大な事業になり、大きな利益額を上げることができます。

このように、粗利益率は業種によって異なります。

逆を言うと、同じ業界内では同一水準の利益率になりがちです。

自社の粗利が業界水準より低い場合は、自社製品の付加価値に問題があるでしょうし、粗利率が高い場合は、何かしらの差別化ができており、競争優位の源泉が付加価値となっています。

業界の粗利率については、インターネットで情報を拾うこともできますし、より詳細で専門的な情報が必要であれば、SPEEDAのような金融情報サービスから取得する事ができます。

海外事業の運営については、まず自社の粗利益及び粗利率を正確に算出し、その上で業界における平均的な粗利率との違いを把握する必要があります。

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