シンガポールで取引時に発行する請求書は?タックス・インボイスなど説明。

シンガポールにおいて商取引をする際にどのよう請求書を発行する必要があるのでしょうか。取引時に課税さえるGSTとの関係で理解する必要が重要です。

タックス・インボイス(Tax invoice)

タックス・インボイスの概要

 販売先がGST登録事業者である場合、この顧客に対してタックス・インボイス(Tax Invoice)を発行しなければなりません。

タックス・インボイスとは、GST課税額が記載された請求書であり、GST登録事業者である取引先は、このタックス・インボイスに基づいて仕入税額を把握し、GST申告を行うため、正しいタイミングで発行する必要があります。

シンガポールの消費税であるGSTは、日本とは異なりインボイス方式を採用しており、消費税申告においては、タックス・インボイス(Tax Invoice)に記載されたGST金額に基づいて税額が算出されます。日本では帳簿保存方式でしたが、2023年からインボイス方式への移行が予定されています。

シンガポールGST制度の概要については、シンガポールの消費税・GSTの制度概要。参照。

通常タックス・インボイスは、課税供給(time of supply)の時点から30日以内に発行しなければなりません。

課税供給(time of supply)のタイミングは以下のうち、早い日付となります。 


・インボイスの発行日

・支払を受け取った日


以下の取引先に対しては、タックス・インボイスを発行する必要はありません。(GST記載のない通常の請求書で大丈夫です。)


・ゼロ料率取引(zero-rated supplies)

・免税取引(exempt supplies)

・GST登録事業者ではない顧客


 

タックス・インボイスの必要記載事項

IRASによりタックス・インボイスに記載すべき項目が公表されています。GSTの税務調査で指摘される可能性もありますので、適切なタックス・インボイスを発行しましょう。

タックス・インボイスの必要記載事項

 

・GST税額は各アイテム毎に表示しても、総額に対して表示しても良い。

・端数は小数点第2位で四捨五入することができる

小額取引の簡便的なタックス・インボイス

課税供給額の合計が1,000シンガポールドルを超えない場合は、簡略されたタックス・インボイス(simplified tax invoice)の発行が認められます。

簡略化されたタックス・インボイスには、以下の情報を記載することが求められます。

簡略化されたタックス・インボイスの必要記載事項

・会社名、住所、GST登録番号

・インボイス発行日

・インボイス番号(identifying number、連番など)

・商品、サービスの内容

・GST税込の請求金額

・「GSTを含む請求金額」(price payable includes GST)である旨の一文

また、取引先がGST登録事業者ではない場合、タックス・インボイスの代わりに、領収書(Receipt)を発行することができます。会計・税務処理の根拠資料となるため、発行した領収書ついてはコピーを保管しなければなりません。

クレジット・ノート(Credit Note) 

クレジット・ノートの概要

クレジットノートとは、返品等により一度発行した請求書を取り消すために発行される書類です。以下のような状況において発行されます。

クレジット・ノートが発行される状況

・請求書の内容を修正(GSST税率や金額等)

・サービス、商品が提供されない

・値引き

・取引条件が違う

・返品・値引き

クレジット・ノートの必要記載事項

クレジット・ノートには以下の項目を記載しなければなりません。

クレジットノートの必要記載事項

・クレジット・ノート番号(identifying number、連番など)

・発行日

・発行者名称、住所、GST登録番号

・顧客名及び住所

・発行の理由(”returned goods”など)

・対象となる商品及びサービスの詳細

・対象となる数量及び金額

・対象となる総合計金額(税別)

・対象となる税率及び税額

・対象となる総合計金額(税込)

・当初発行したタックス・インボイス番号及び日付

クレジット・ノートについてGST調整が免除となる場合

クレジットノートが発行されると、取引に付随するGSTの計算が煩雑になります(売り手及び買い手の双方で当初発行したタックス・インボイスに加えて、クレジット・ノートにかかるGSTも調整する必要があるため)そこで、以下の条件を満たす場合は、クレジット・ノートに係るGSTは調整しないとすることができます。

クレジット・ノートにおいてGST調整が免除となる場合

・供給者及び顧客の双方が当初のGST金額を変更しないことについて書面による合意がある(レターまたはe-mailで良い)。タックス・インボイスなどGST関係の根拠資料とともに、当該書面を保管する必要がある。

・顧客は完全な課税対象事業者(fully taxable person)である

・クレジット・ノートには「this is not a credit note for GST purposes」を記載する

デビット・ノート(Debit Note)

デビット・ノートとはGST課税が生じない場合に、取引相手に再建の内容と金額を通知する支払請求書です。グループ内での請求関係などで利用されます。

デビット・ノートでは、顧客がGST申告する際に仕入税額(input-tax)を控除することができず、販売先がGST課税登録事業者である場合は、通常のタックス・インボイスを使用しなければなりません。

https://www.iras.gov.sg/irashome/invoicing/


当該情報は執筆時現在に公表されている法令・ガイドライン等を参照しています。本記事に記載された制度は、法令・条例・通達・税制の変更・改正等により、改廃が行われている可能性があります。従いまして、特定の目的利用及び専門的な判断にあたっては、会計・監査・法務・税務・労務等の専門家にご相談頂くようお願いいたします。本資料に基づいた行為(不行為)につき、一切の責任を負いません。

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