シンガポールGSTの税務調査。

GSTとは、Goods and Service Taxの略で、日本における消費税に該当します。シンガポールでのGST料率は7%であり、そのコンプライアンスを担保するため、税務当局であるIRASのGST部門監査官(Comptroller of Goods and Services Tax)が税務調査を実施します。

(シンガポールにおけるGSTの詳細については、シンガポールの消費税・GSTの制度概要。で解説しています。)

税務調査の結果発生する追徴課税とペナルティは、キャッシュ流出の原因となり、海外での事業運営に当たって思わぬコストとなってしまうため、細心の注意が必要です。

なお、税務調査の対象として、会社法人税(Corporate Income Tax)、個人所得税(Individual Income Tax)及びGSTに大別されますが、IRASの公表データによると、ここ数年GST調査からのペナルティが最も大きくなっています。

今回はGST税務調査の概要について解説したいと思います。

税務調査の対象会社

IRASは税務調査の対象となる企業や産業、調査の頻度について特に明示していません。

一般的な税務調査の場合、

・赤字または継続的に利益率の低い企業

・税務優遇制度を適用している企業

などは税務調査の対象となりやすいですが、GSTでは特に、

・GSTの還付請求を行う場合

・GST申告書(GST Return)に誤りがある場合

など特定事由についても税務調査を引き寄せることになりがちと言われています。

(GST申告書に誤りがある場合とは、例えばGST申告書上の売上高(課税供給額)と提出した財務諸表の売上高が一致していないなど。)

また、対象会社をランダム抽出する場合もあるようです。

税務調査の方法

税務調査の方法はデスクトップ監査(遠隔で実施)オンサイト監査(会社の現地で実施)に分かれます。

通常は、電話、レターまたはEメールにて行われるデスクトップ監査が実施されますが、重要な論点がある場合や根拠資料等を確認する必要がある際は、税務調査担当官が会社を訪問してオンサイト監査を実施することもあります。

提出を求められる情報

GST監査において求められる情報は以下のとおりとなります。


・事業に関する情報

・取引の根拠資料(インボイス、輸出時資料等)

・GST申告書の計算基礎となっている売上リスト(Sales listing)

・GST申告書の計算基礎となっている購買リスト(Purchase listing)


売上データ(Sales listing)における必須情報

インボイス日付

インボイス番号

顧客名

摘要

取引額(GST税抜)

GST金額

物品の目的地
購買データ(Purchase listing)における必須情報

インボイス日付

インボイス番号

取引先名

取引先のGST登録番号

摘要

取引額(GST税抜)

GST金額

電子ファイルの形態

IRASより提出を求められる資料が電子ファイルの場合は、以下の形式である必要があります。


・Microsoft Excelスプレッドシート

・Microsoft Access

・IRAS Audit File


IRAS Audit Fileは、IRASより認可された会計ソフトウェアから出力されるGST監査用のデータファイルです。IRAS認可の会計ソフトウェアは、IRAS のHPに指定されており、当記事執筆現在で57種類に及びます。

税務調査後の流れ

税務調査の期間は通常1年以内に終了し、IRASより調査の結果を受けた課税通知書(Notice of Assessment)が送付されます。課税通知書には以下の内容が記載されます。


・追徴税額及びペナルティ額

・上記の根拠

・GSTルールを遵守するために今後留意すべき事項


調査結果に不服がある場合は、30日以内に反論の意思表示をする抗弁通知(Notice of Objection)を行う必要があります。抗弁通知の送付において以下の点に留意する必要があります。


・GST監査官に対して書面にて通知する

・抗弁理由の詳細を記載する

・署名し、日付を明記する


ペナルティ

税務調査の結果、修正が必要な場合は、GST Act 59条及び62条に基づき、修正税額に加えて以下のペナルティが課せられます。

  罰金 懲役

怠慢(Neglect)

不注意(Carelessness)

200% 3年以下
脱税(Tax Evasion) 300% 7年以下

GST税務調査における留意事項

GSTの申告は年に4回のタイミングでやってきますが、法人税や個人所得税のように年1回年度末の確定申告時に集中して行うというよりは、日々発生する取引におけるGST処理の積み重ねという性質があります。

そのため、税務調査で突っ込まれないためには、

日々のGST処理を適時・正確に行う体制

を整えることが重要となります。

また、GST申告書とその他の財務情報の間に不整合がないようにすることや、特殊な取引が発生した際は、その都度自社のタックス・エージェントに相談し、適切なGST処理を行うよう心がけることが重要です。

IRAS Overview of Audits by IRAS


当該情報は執筆時現在に公表されている法令・ガイドライン等を参照しています。本記事に記載された制度は、法令・条例・通達・税制の変更・改正等により、改廃が行われている可能性があります。従いまして、特定の目的利用及び専門的な判断にあたっては、会計・監査・法務・税務・労務等の専門家にご相談頂くようお願いいたします。本資料に基づいた行為(不行為)につき、一切の責任を負いません。

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