シンガポール通貨庁(MAS)は、2024年6月30日の定例会合を開催。3会合ぶりに金融政策を据え置きを決定しました。
以下にレポートの概要をまとめます。
シンガポール通貨庁会合の概要
• 今年1月・4月には2回連続で「緩和方向(為替レートの上昇率を緩やかに)」へ舵を切っていた。
• 現在のSGドルは米ドル安の影響を受け、実効為替レート(NEER)で堅調に推移。
• インフレ率は低下中(6月時点で総合+0.8%、コア+0.6%)、MASにとっては緩和余地もある状況。
• 1〜3月の実質GDPはマイナス成長だったが、4〜6月は+5.55%の高成長に回復。
• 米国の関税政策(特にトランプ政権の動向)に影響される不確実性が引き続き存在。
• MASは、世界経済の急減速リスクが後退しているとの認識を示しており、当面は現状維持の可能性が高い。
• 一方で、トランプ関税の再発動などによる影響には今後も警戒が必要。
さいごに-記事の感想
前2回会合の25年1月、4月で久々に緩和方向に持っていきましたが、7月は据え置きという結果。
今回は、低インフレと堅調な通貨を背景に緩和余地があるにもかかわらず、あえて現状維持を選択。
これは、通商環境の改善や短期的な景気の回復に対するポジティブな評価がありつつも、トランプ氏の関税政策の行方という不確定要素が依然として重しになっていることを意味しています。
シンガポールは経済の貿易依存度が高いため、米中関係や世界の通商環境の影響を受けやすいという構造的な課題があります。こうした環境変化にも柔軟に対応する姿勢と政策のタイミングの巧妙さがさすがですね。
https://www.mas.gov.sg/publications/macroeconomic-review/2025/volume-xxiv-issue-2-jul-2025